4-6

 次の日の朝、駿は果奈と共に登校していた。


 果奈が再び登校した日以降、自然と2人で毎朝登校するのが当たり前となっていた。


「ふぁ〜」

「凄く眠そうにしているけど、昨日、電話の後に何かあった?」


 その質問に果奈が身体に電撃が走ったかのようにビクッと反応する。


「うんうん、何でもない。強いて言うなら、弟の事を寝かしつけていたくらい。私こそごめんね、急に電話切っちゃって」

「そ、そうなんだ…」


 果奈が焦りながら応える様子を見てると、自分も電話した後の事を思い出してしまい、さっきの果奈と同じような反応をしてしまう。


 実は電話が切られた後、何で急に果奈が電話切ったのか考え、最終的に果奈の言っていた事実通り、急いでお風呂に入らなければならなかったのだと、収拾をつけたが、その時に果奈がお風呂に入ってる様子を想像していたのだった。


「どうしたの駿、何か凄い反応してたけど?」

「本当に、本当に!何でもない」


 果奈がお風呂に入ってる姿を想像してたなんて、言える訳がない。


「逆にそこまで返されると、何か怪しいんだけど…」

「本当に何も無いから。それよりも弟の寝かしつけるのって大変?」


 これ以上深掘りされたくなかったので、話題を果奈の弟の話題へと変える。


「そんなに難しくないよ」

「子守唄を聴かせたり、お話を読み聞かせたりする感じ?」

「そんな感じ、昨日はお話を読み聞かせた」

「そうなんだ〜因みに昨日のお話ってどんな内容?」

「それはちょっと秘密…」


 果奈が突然照れ始めたので、不思議に感じる。表情を見る限り、内容を話してはくれなさそうだった。


「 わ、分かった」


 秘密と言われたものの、果奈の反応を見て、どんな内容だったのか更に気になってしまったが、そこは気持ちを堪えて、聞かない事にする。


「ごめんね」

「謝る事ないよ、俺だって、自分が考えた物語の内容をもしも聞かれたら、ちょっと躊躇うし」


 そうは言ったが、微妙な空気になってしまい、果奈に喋りかけづらくなったのと同時に果奈も何か思うところがあるみたいで、喋れなくなってしまい、沈黙の時間が始まってしまう。気のせいか果奈が照れているように見えた。


 果奈と会話出来ないでいると、後ろから凄いスピードで誰かが走ってくる。


「よ〜、お2人さん。朝から2人っきりなんて、羨ましいぜ」


 正体は直己で、登校時間にまだ余裕があるのに、遅刻しそうになってる時みたいに、焦っているように見えた。


「いや、そんな事よりも何でそんなに急いでいるん?」

「実は先輩から借りてた漫画を汚しちゃって…それをずっと黙ってたら、今日の朝ばったり出会って…」

「見つけたぞ、鈴木」


 直己を見つけた先輩は全速力でこっちに向かって来る。


「ヤバい、逃げないと。それじゃあ、また後でお2人さん」


 そう言って、直己は一目散に去っていった。


「鈴木君、大丈夫なの?鈴木君を追いかけていた先輩、凄い形相をしていたけど? 」

「まぁ大丈夫でしょ。学校の時も似たような事あったし」

「駿が大丈夫って言うなら、まぁ良いけど」

「だけどあの先輩、怒らせると怖い事で有名だから、もしかすると、恐ろしい目に遭ってるかもな」

「本当に大丈夫なの?」


 直己が嵐のように去ると、さっきまでの沈黙が嘘かのように、果奈とたわいのない会話をしながら、学校へと向かった。


 その日の夜、風にカーテンが揺れる中、スマホが鳴り、直己から電話がかかってきた。


「なんだよ、直己」

「なんだよ、じゃねーよ。何で朝、助けてくれなかったんだよ〜」

「助けてくれなかったって言われても、あの時どうすれば良かったん?」

「直己の親友として自分が責任取るんで今は見逃してやってくださいとか?」

「なんで俺が責任取る事になってるんだよ!それに果奈も居るんだから、言える訳無いだろ」

「冗談だって、冗談。それにしても駿と早川さんってほんとラブラブだな」

「いきなりどうしたんだよ」

「いや、良いな〜って思ってさ」


 最初よりも直己の声に元気が無くなってるように感じた。


「大丈夫だって、直己は馬鹿なところはあるけど優しいから、きっと美生も受け入れてくれると思うよ。俺も出来る限りの協力するから」

「ありがとな、駿が親友でほんと心強いよ」

「だけど、この前みたいに俺と果奈が2人で過ごしている時に覗き見するような事したら協力しないし、美生に直己の秘密言うからな」

「絶対にやらないからそれだけは勘弁」


 その後も直己との電話は続き、電話が終わる頃には夜も遅い時間となっていた為、寝る事にした。

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