3-12

 昼休みになり、駿は購買でパンを買ってから、果奈が待っている倉庫裏へと向かう。


 倉庫裏には、すでに果奈の姿があった。


「ごめん、待った?」

「うんうん、大丈夫」


 そして、座れる場所に移動してお昼を食べながら話し始める。


「クラスに関係がバレたとはいえ流石にクラスで2人で過ごすってのは無理だよな」

「当たり前でしょ!関係を周りに見せつけてるみたいで嫌」

「そうだよね。でも、場所関係無く、こうして果奈と居れる事が今は幸せに感じるな〜」


 久しぶりに過ごす果奈との昼休みが特別に感じ、自然のように出た言葉を聞いた果奈が頬を赤く染めながら、顔を背ける。


「果奈どうしたの?」

「駿がいきなり変な事言うから、ちょっと驚いただけ」

「そんなに変な事言った?」

「言った!」


『ガサガサ…』


 果奈が喋った瞬間、近くで何かが動く音がした。


「倉庫の近くで誰かが俺たちを見ていたみたい。ちょっと見てくる」

「良いけど、気をつけてね」


 果奈が心配そうに話した後、忍足で物音が鳴った方向へ近づこうとすると、走り去っていく音が聞こえ、走って追いかける。

 角を曲がって見ていた生徒の姿が見えた途端、誰が見ていたのかすぐに分かり、その名前を叫ぶ。


「直己!」


 その瞬間、見ていた生徒は立ち止まり、申し訳なさそうに片手を上げて近づいてきた。


「すんませんでした」


 見ていた犯人は予想通り、直己だった。


「何で覗いていたんだ?」

「いや、その…ちゃんと仲直りできてるのか気になって…ちょっと様子を… 」


 おまえは俺と果奈の親なのか?とツッコミそうになった。


「要らない、心配だ」

「ほんとごめんって、後で、ジュース奢るから許してくれよ」

「何があったの?」


 果奈が心配そうにやって来る。


「果奈!?」

「何か話している声が聞こえたから、気になって来ちゃったよ。後、何で鈴木君が居るわけ?」


 仕方なく、果奈に直己がここに来た事情を話した。


「鈴木君、最低」

「・・・・」


 果奈の「最低」という言葉に直己は石になったように固まってしまい、何も言葉を返せなくなっていた。


「でも、ありがとね。私達の事を心配してくれて」


 ムッとしながらも、感謝の言葉を直己に告げた。


「いや〜」


 今さっきまで石のように固まっていた直己はその言葉を聞いて、上機嫌になりながら、左手で後頭部を撫でながら言った。


「だけど、また同じ事したら、許さないから」

「分かりました!それじゃ、自分はこれにて失礼します!」


 そう言って直己は颯爽その場から去って行った。


「直己の親友として、今回の事はごめん」

「確かに、鈴木君がやっていた事は許せないけど、そこまでして、私達の関係を見守ってくれる人が居るって事が知れて少し嬉しかった。多分だけど、鈴木君は私が居ない時に駿の背中押してくれたでしょ?」

「うん、直己が背中を押してくれなかったら、今のように、果奈と昼休みを過ごせなかったと思う」


 果奈の言葉を聞いて、直己が親友で良かったと改めて実感する。

 その後はたわいのない会話をして、あっという間に昼休みが終わった。


 久々の果奈との昼休みは、騒がしくも心が温まる時間となった。

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