8.2人で1つ(★)※レイ視点

「止めてください!!」

「チッ……うっぜーな」

「あっ! やっ……!!!」


律動を再開させる。

ヤツはなおも抵抗を続けた。


だが、体は――俺を求めてる。

きゅーきゅー吸い付いてきやがるのは勿論のこと。


「腰、揺れてるぜ」

「っ! あっ……やっ……どう、して……」

だからだろ」

「あぁ゛!!」


野郎は首を左右に振る。何度も何度も。

萌黄色の瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。


「違う。……違う。僕は あのひと とは――」

「ゴチャゴチャ言ってねえで集中しろよ」

「あ!? なっ、何……?」


ヤツの体を横向きに。

太股の裏に腕を差し込んで――小綺麗なペニスを握り込む。


「さっ、触らないで!」

「なら、自分でやれよ」

「イヤです! そんな……っ、自慰なんて……人前ですることじゃない」

「はっ、こんな半勃ちの状態で、ガキがいる家に帰るってのか?」

「っ! それは――」

「とんだ変態だな」

「~~っ、あっ! んぅ……!!」


ヤツの色白なペニスを擦り上げる。

亀頭をグリグリと刺激してやれば、堪らないとばかりに首を左右に振った。


ほんと……体だけは素直だな。


「うう゛……ふー……っ、ふーっ……」

「あ? 何やってんだ?」


ヤツの顎を掴んで、こっちを向かせる。

野郎は――唇を噛んでいた。

口端からは、真っ赤な血が滴り落ちていて。


「バカ! 何やってんだ!」

「う゛、ふーーっ、ふーーっ……」

「ったく……」

「んぅ!?」


ヤツの口に、キャラメル色の指を突っ込んだ。

人差し指と、中指の2本だ。

野郎は訳が分からないと言わんばかりに、目を白黒させている。


「噛むなら、こっちにしろ」

「んん……!」

「遠慮するこたねえよ。恨んでるんだろ? 俺のこと」

「……っ、あう゛! ううっ!!」


執拗にヤツのイイところを擦り上げていく。

だが、コイツは――噛まない。

緩く俺の腕を掴む。ただ、それだけ。


チッ。……何なんだよ、テメェはよ。


「ふぅ……ふっ♡……んんっ、ンッ♡♡」

「はぁっ……はぁ……っ……あ゛~、くそっ……」


最高だ。

気味が悪いぐらいよく馴染む。

コイツの体温も、感触も、香りも。


だが、心はからっきし。

まるで噛み合わねえ。

……ほんと、皮肉な話だよな。


「ふっ! ふぅ、ら、めっ……らめっ……」

「イけよ。ほらっ」

「~~っ!!!」


先っぽに思い切り爪を立ててやる。

――瞬間、ヤツはイった。


俺の手の中は、ドロドロなザーメンでいっぱいになる。

多い。それに超濃い。


「はっ、すげーな。若さ炸裂だ」

「~~っ、みっ……見な、いで……」


消え入りそうな声で懇願してくる。

……不覚にも、悪くねえと思っちまった。

チッ、クソビッチが。


「仕返しだ。外に出す」

「っ!」


一足遅れて俺もイった。

宣言通り引き抜いて――ヤツのケツから太股のあたりにぶっかける。


「あっ……う゛っ……」

「不満か? ははっ! ざまーみろ」

「~~っ」


野郎は両肩に力を込めて、身を縮こませる。

そうすることで、野郎のケツが少し上向いた。

ドロっとした白いザーメンが、ヤツのケツを撫でていく。


何か……白桃みてえだな。

浅ましくパクつくアナルは、ザーメン塗れの血で淡く染まっている。


「ご苦労さん。楽しかったぜ」


ヤツの口から指を引き抜きつつ、気まぐれにアナルの傷を治す。

……割と深かった。ケッ、ざまーみやがれ。


「ほら、もういっちょサービスだ」

「っ、冷た……」

「贅沢言うんじゃねえよ」


水魔法でザーメンを軽く洗い流して、ヤツの腰のあたりに灰色のハンカチを置いた。


「雑巾にすっから、チンコもアナルも拭いてくれて構わないぜ」

「…………」


無視かよ。まあいい。

立ち上がってベルトを締める。


周囲に意識を向けるが……すこぶる安全だ。

魔物の気配を一切感じねえ。


まぁ、当然か。

あれだけの惨劇を起こしたんだからな。


「ぐ……っ……」


泣いてやがる。それもケツ丸出しで。

何なんだ? ヤリ捨てされたオンナみてえなムーブかましやがって。


「あ~……、はいはい。そういうことかい」


合点がいった。

なるほどね。


事後はこうやって、徹底して『不同意性交』を主張するわけだ。

『僕は悪くない。本気にした貴方が悪い』

……とか、何とか言ってな。


それで言いなりになる男と……ようは、このムーブが効く男とだけ遊んでやがるんだ。だから、バレねえ。


「ケッ……クソビッチが」

「本当に……僕の方から……貴方を?」


……あ?


「……はっ、おいおい。いくら何でも『記憶喪失』はねえだろ? リアリティが無さ過ぎる」

「…………」


野郎は――何も返さなかった。

呼吸が荒い。それに震えてる。まさか。


「お前、マジで覚えてないのか?」

「……はい」

「魔物を狩りまくったことは? 黒獅子も1人で仕留めただろ?」

「……すみません。記憶にないです」


喉の奥がざらついた。

どうなってやがる。


「お前、何か……記憶に障碍でもあんのか?」

「指摘されたことはありません。今回が初めて……

「心あたりでもあるのか?」

「……自信がなくて。だって……本当に何も覚えていないから」


酷く不安げだ。

嘘を言っているようには見えねえ。


「僕は……これまでも? 貴方以外の人とも、その……っ」


わなわなと大きく震え出す。

野郎は両手で自分の肩を抱いた。

手の甲が一層白くなっていく。


「無意識のうちに性行為に及ぶ、だなんて……。僕はやっぱり…… あのひと の子供なんですね。……何をしても僕は……ははっ……全部無駄だったんだ……」


つまりは……こういうことか?


コイツは父親を憎悪するあまりに、聖職者ばりの禁欲生活を送ってきた。

結果、無理が祟って無意識のうちに男を求めるように――。


……いや。

無意識にしちゃ、自我がハッキリし過ぎていたように思う。


下劣で、猟奇的で……品性の欠片もねえ。

俺が知ってるコイツとは、だった。


っ! まさか――。


「テメェ……2人か」

「……2人?」

「人格だよ。お前には2つあるんだ」

「??? すみません。仰っている意味が……よく分からないのですが……」


異なる言動。

一次的な記憶喪失。


間違いねぇ。

コイツの中にはもう1人いる。

過度な抑圧から生み出された――性欲の権化みてえな野郎が。



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