ハンバーガーのデリバリー

浅川 六区(ロク)

2分で読めるショート物語

980文字のショート物語です。(二分で読めます)



 ハンバーガーのデリバリーメニューに「スマイル0円」という項目があるので、それも注文すると、紙袋に「thank you!」とか笑顔のイラストが描かれて届きます。


 ちょっとしたイラストが可愛いので、私はこのサービスが気に入っています。



 親友の菜々美ちゃんは、

「たまに、”猫”のイラストが描かれていることもあるんだよ」と教えてくれました。

「それ知ってるー!前に頼んだ時、猫ちゃんだったのー。すっごく可愛かったー」

 私は笑顔でそう答えました。


 また、菜々美ちゃんは「フィッシュ系のハンバーガーを頼んだ時には、魚のイラストが描かれていることもあるらしいの」とも教えてくれました。

 私はそれも知っていた。

 先週、母がフィッシュバーガーをデリバリーした時に、魚ちゃんのイラストが描かれていて、母と二人でとても盛り上がった事を思い出していた。



 私は菜々美ちゃんに言った。

「でもー、イラストを描く人は大変だねぇー」


「あー、あれはね、ハンバーガーショップの店員が描くのではなくて、届けている途中で勝手に紙袋に描かれるものなんだよー」と、

 菜々美ちゃんは、そんなお伽噺とぎばなし的な話を語った。


 まるでそれは、サンタクロースが実際に居るか居ないか?

 とか、

 テーマパークのぬいぐるみの中には、人間が入って居るか居ないか?

 と同じで、私はそんな夢のあるお話が大好きなのです。



 菜々美ちゃんは、そんな私の好きなコトを知っていて、そう語ってくれたのかな。そう思ったら…ふっと、目頭が熱くなってしまった。

 


 いつも私を思い遣る言葉を選んで、私に向けて発してくれる優しい菜々美ちゃん。私が何かに傷付いている時には、包み込むような暖かい言葉をー 

 寂しい時には、一人ぼっちなんかじゃないよ、って励ます言葉をかけてくれる。

 これからもずっと友達でいようね。菜々美ちゃん、ダイスキだよ…。

 …恥ずかしくて声に出しては言えないけど。



 私は涙腺が完全に緩んでしまったので、菜々美ちゃんに、その…涙が見つからないように、そっと背を向けて言った。

「今度は、そうだなー、キリンとかゾウとか、シマウマとかも描いてあったら、

楽しそうだよねぇー」

 


 菜々美ちゃんは抑揚のない声で答えた。

「あー、キリンとかゾウか…無理。そういう身勝手なリクエストはやめてよ。

練習すんの、メンドいんだから」


「……。」


                       Fin


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハンバーガーのデリバリー 浅川 六区(ロク) @tettow

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ