舞台は荒廃した近未来ですが、この物語がまず印象に残すのは、とても小さなきっかけです。
主人公が感じ取る、これまで知らなかった匂いや味。その違和感が、閉じていた世界にひびを入れていきます。
登場人物たちは特別な存在ではありません。与えられた環境の中で生きてきた少年が、偶然の出会いを通して、「知ってしまったもの」をどう受け止めるのかが描かれます。その迷い方が現実的で、読んでいて無理がありません。
大きな理想や派手な言葉は出てきませんが、「生きているものに触れてしまった後には、もう元には戻れない」という感覚が静かに伝わってきます。
終末的な世界観の中で、希望がどういう形で芽を出すのかを描いた作品だと思います。