夢日記
四十住沓(あいずみ くつ)
第1話 救急病棟
こんな夢を見た
こんな夢を見た。
私は服毒自殺をしようとし、救急病棟で目が覚めた。車椅子に乗せられ、足の検査や腕の検査を受ける。腕は鉛のように重かった。六キロの重りが看護師によってつけられていると信じ込んでいた。
「別の階に行きます」
車椅子のまま看護師にエレベーターに乗せられる。
「父の面会ですか」
と聞くと、
「お父さんじゃないよ」
と看護師は鼻で嗤う。
それから病室に行き、ベッドに移されると、二人の女性が来た。二人は一様に底意地の悪い笑みを湛えていた。
「貴方のお父さんは貴方に会いたくないと言っている。でもビデオで通話することはできる」
とテレビを運んでくる。もたもたとセッティングをした。
テレビの中の父は憑き物の落ちたような顔をしていて、にこにこ微笑んでいる。何か言っていたが言葉は聞き取れなかった。
その後女性たちは帰って、看護師がやって来ると、
「貴方のお父さん、もう貴方の面倒はみないって。何度か会ったことがあるけど、あんなに晴れやかな顔をしたお父さん初めて見た」
と言いながら壺に入った蛇を見せてきた。…………
父が面倒をみてくれないということは入院代は自分で払わなくちゃいけない。それが怖くなって、私は病院を抜け出そうとした。やはり身体は不自由で、特に重りのついた腕は満足に動かせなかった。それでも何とか病室を出ると、何故か小学校に繋がっていた。廊下を這っていると、落ちていたマットにスカートが引っかかって身動きが取れなくなった。
そのまま数時間が経過した。身を捩ってもスカートは抜けない。このままではどうしようもない。逃げ出したと気づかれてもいいと思い、
「誰か!」
と大声を上げた。すると用務員のような中年の女性が現れ、
「何やってんの」
と声をかけてきた。事情を話すと、
「またそんな嘘をついて。何のために忍び込んできたんだ。変質者だろう」
と責め立てられた。だが、話していくうちに親身になってくれ、千葉には貴方を受け入れる施設がある、親に連絡する、などと話してくれた。
親はやって来ない。私には会ってくれないのだから。そう思っていると、
「全く何をやっているんだ」
と不意に優しい父の声がし、私を助け起こしてくれた。
「見捨てたんじゃなかったの」
と言うと、
「お前がいなくなったら俺はどうすればいいんだ」
と父は笑った。
退院したらまた一緒に暮らすと約束し、父は病院の人を呼んでくれ、病室に戻ることになった。
「お母さんは来ないの?」
「お母さんは来れないよ」
歯切れ悪く、ばつの悪そうな顔で父が言う。目が覚めてから思い出したのだが、母はもうこの世には――
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