第一章24:日常への回帰

今回、黎輝王国と雛城の戦争を引き起こした二人の首謀者、そして二名の授福者──桃糕と黒面謀士──は、すでに共に倒れた。前者は自ら犠牲となり、後者は無念の死を遂げた。


  そのため、この時点の前線戦況也随之大きく変わった。


  ちょうど渟と東方が完全に戦闘不能となり、黎輝王国の五人のS級冒険者に処刑されようとしていた瞬間──


  『シュッ-----------!』


  一体の黒い翼を持つ存在が、彼らの頭上の雲間を鋭く駆け抜け、その後ゆっくりと彼らの前へ降り立った。


  巨剣の男:「誰だ!」


  竜に乗る少女:「待って、敵意はなさそう……」


  痩せた魔法師:「あれは…吸血鬼…か……?」


包帯少年:「ありえない、吸血鬼がこんな戦争に関わるはずがない。当時の種族戦争ですら、吸血鬼は最も中立だった。」


  警戒する彼らの前に、千層が歩み出る。


  そして千層が視界に入るより早く、一振りの長槍がすでにその首元へ突きつけられていた。


  長槍の少女:「名乗れ!」


  千層:「わ、私は…通りすがり!ちょっと伝えたいことがあって……」


  巨剣の男:「何を?」


  千層はしばらく口ごもり、ようやく覚悟を決めて長く温めていた言葉を絞り出した:「あなたたち王国の二人の首謀者、黒面謀士と桃糕は、すでに倒れました!」


  その言葉に、渟と東方の瞳孔が大きく震えた。まるで聞いてはいけない名を聞いてしまったかのように。


  彼らが五人のS級冒険者の方を見ると、そこには頭を抱える姿があった。


  包帯少年:「確かに…大人とあの狂った謀士…もう気配がありません……」


  巨剣の男:「……」


  痩せた魔法師:「ああ…哀れだ……惜しい……悲しい…嘆かわしい……」


  竜に乗る少女:「これからどうする?まだ進攻するの?」


  巨剣の男:「やめよう。命令した大人が陥落した以上、攻撃命令も無効だ……次の主に従うまでだ。」


  長槍の少女は槍を引いた:「知らせてくれてありがとう……」


  そうして、五人のS級冒険者は即座に撤軍を決定。その周囲の冒険者たちも一斉に撤退した。


  その場には安堵した千層と、まだ震えの残る渟と東方だけが残った。


  渟は足を引きずりながら千層の元へ行き、その手首を強く掴んだ:「もう一度……今言ったことを繰り返して……」


  千層は緊張しつつ答えた:「えっと……王国側の二人の首謀者、黒面謀士と桃糕は…もう……」


  渟は動揺が激しい:「見間違いじゃないの?なんで桃糕大人って言い切れるの!」


  東方が慌てて止めた:「すまない、渟は疲れすぎてる。説明できるか?出来事の流れを……」


  千層:「ごめんなさい、流れまでは分からない。でも桃糕大人が黒幕だったのは本当で、あれは仮死だったんです。」


  その言葉を聞き、渟の張り詰めた心はようやくほどけ、千層の手を放した。


  渟はその場に座り込む:「じゃあ桃糕は……今どうなってるの……」


  千層は気まずそうに頬をかいた:「えっと…私が見た時点では生きてました。でも…さっき、気配が消えました。」


  渟:「そうか……」


  東方は焦りと冷静の混じった声で問う:「その場に誰かいた?誰が彼女を……?」


  千層は詩钦の平穏のため、知っていても告げなかった:「分かりません……」


  その言葉に、渟は静かに呟いた:「あんなに優しい桃糕大人が…まさかこんなことを……」


  千層は気まずく、どう離れるべきか迷ったまま立ち尽くした。


  しばらくして千層が去ると、雛城の人々は自分たちが生き延びたことを知り、歓喜して外へ出てきた。そして雛城はすでに元の姿へ戻っていた。


  雛城が渟と東方の目の前で、元の姿へと再構築されていたのだ。


  渟:「どういうこと?なぜ雛城が戻ってるの!」


  東方:「やっぱり…雛城には噂どおり……誰かの助力がある……桃糕も…その者に止められたのかも……」


  渟:「そうか……」


  こうして雛城が奇跡的に元へ戻った以上、渟はもう考える余力もなく、そのまま草地へ崩れ落ちて深い眠りに落ちた。


  東方も微笑み、寄りかかれる場所を見つけて眠った。


  その後、住民たちが前線で戦っていた冒険者たちを急いで救護へ運んだ。


  ……


  視点を変える。千層は急いで自宅へ走り、大慌てで扉を開けた。


  最初に目に入ったのは、床に寝転んで休んでいる彼方だった。


  千層:「彼方、戻ってたんですね?」


  床の彼方:「ああ。」


  千層:「彼方、ソファで休んでくださいよ。床は汚いです。」


  彼方:「平気。床ひんやりして気持ちいい。」


  千層は首を傾げた:「じゃあ詩钦は?」


  彼方:「上の浴室でシャワー中。」


  その言葉に千層は嬉しそうに階段を駆け上がり、浴室から出てきた詩钦を見つけた。


  詩钦は髪を拭きながら:「ありがとね、あなたがいなかったら、今頃路上泊だったよ。」


千層:「助けてもらったのは私の方です……雛城を救ってくれて…元の姿に戻してくれて……」


  詩钦:「言ったでしょ?“大人”呼びはやめて。私たちは同じ冒険団の仲間。上下なんてないよ。」


  千層:「詩钦…詩钦……彼方…彼方……うん!慣れるよう頑張る!」


  こうして、奇妙で厄介な出来事が続いたものの、彼方と詩钦が望んだ平穏はようやく戻り、黎輝王国との衝突も完全に終息した。


  しかし--------


  詩钦:「というわけで、彼方。もう黎輝王国は私たちに興味を示さないと思うけど……まだ隠すの?」


  彼方:「当然だよ。隠さなきゃ、また厄介な戦いに巻き込まれる……」


  詩钦は震えた:「うぅ……想像だけで疲れる……」


  彼方:「だよね?だから家でのんびり寝よう。」


  千層:「じゃあ彼方…彼方、次の目標は?冒険団の資金が足りないんです。一週間後には食べ物も尽きます。」


  詩钦:(⁠。⁠ŏ⁠﹏⁠ŏ⁠)


  彼方:「そんな……仕方ない。何か依頼を受けよう……」


  千層:「実は、ちょっとした提案が……」


  詩钦:「聞こう。」


千層:「一人一つ、仮面と外套を買いませんか?身元を隠す用に。誰にも気づかれないし、自由に出歩けます!」


  詩钦と彼方はそれぞれ考え込む。


  詩钦:(仮面なら…確かにリスクが減るし、何よりカッコいい!)


  彼方:(仮面と外套!演出できるじゃん!めっちゃカッコよさそう!)


  千層は不安になり:「何も言わないってことは…反対…ですか?」


  詩钦/彼方:「賛成!!」

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