第一章03:神性

 彼方:「やばい!話してるとき、こっちを見てるみたいだ!しかも周りにまだ正気の冒険者がいない……!」


  彼方が恐怖で動揺し、勝手に推測している間、頭を下げた視線の中に裸足の足の甲が現れた。


  しかし彼方はそれに気付かず、怪物少女の方向に視線を向け続けると、少女はもういなかった……?


  違う、違う!彼方はようやく思い出した、自分がさっき何かを見落としたのではないかということを。


  考える暇もなく、彼方の目は虚ろになり、汗が背中を伝い、冷や汗が流れ、口はかろうじて微笑を保つだけで、頭も視線も下げられず、足元の裸足の主を見ることもできなかった。


  彼方:(終わった!これで異世界生活は完全に終わりだ!どうやって逃げればいいんだ!動けば即死しそうだ……!)


  彼方:(もうだめだ、周りに助けてくれる冒険者はいるのか?あのS級冒険者たちは?国がたくさんあるのに、なぜS級冒険者は誰もまだ来てないんだ?これは完全にストーリー殺しじゃないか!)


  彼方:(どうしよう、どうしよう、どうしよう!俺じゃ勝てそうもない、基礎スキルも武器も持ってない!無理だ、無理だ、無理だ……)


  彼方:(彼女は俺の後ろにいるんじゃないのか?こんなに時間が経ったのに、なぜまだ手を出さない?試してるのか?それとも別人か!いや、絶対に------!)


  そう考えた彼方は、興奮気味に目をぱちぱちさせた。


  『……』


  しかし目を開けた瞬間、わずか0.1秒ほどしか経っていないのに、彼を中心とした半径がすべて土の窪地に変わっていた。その切り口は整然としており、魔法による攻撃痕には見えなかった。


  周囲は土の窪地になったが、彼の下の草地だけは無傷のままだった。


  彼方:(……考えすぎだ!彼女は明らかにからかってるだけだ!さっさと始末しないのはそのせいだ!)


  そう考え、彼方は賭けるように後ろの少女を見た。しかしその少女の眼には……彼方は慌てて振り向いた。


  彼方:(目が完全に殺意で満ちてる!早く------------)


  彼方:「!!!!!!」


  彼方は頭を蹴られた。


  彼方:「ぶはっ!」


  『ドン!!!!』


  彼方:「あ!」


  『ドン!!』


  彼方:「ひっ……」


  『ドンドン!!!!』


  そして遠くまで蹴り飛ばされ、三本の木に激突した。


  蹴った後の少女はただ黙って彼方を見つめていた。彼方は確かに立ち上がったが、服が破れただけで、血ひとつ流れていなかった。


  彼方:「頭が痛い……」


  彼方は既に遠くに蹴り飛ばされ、遺跡のそばではなく、空き地にいた。


  !!!!!!!!!


  彼方が正気を取り戻すと、少女は空中に舞い上がり、右手の指を高く掲げ、ゆっくりと下ろした。


  『……』


  『!!!!!!』


  灼白の光が天を裂き、隕石が天界を脱した獣のように落下し、抗えない威圧を伴った。重なった雲はその衝撃で砕け、稲妻のごとき光が空を鋭く切り裂き、天地すべてがその力に震えた。


  彼方:「違う、違う違う!待って、待って!これは何だ!!なぜ隕石が!?やめて、待っ……!」


  落下する隕石は狂風を巻き起こし、土煙、岩石、火の粉を巻き上げ、天地がひれ伏すかのようだった。空気は裂け、山河は重鎚で叩かれたかのように揺れた。


  彼方:「逃げられない!」


  『崩!!!!!!』


  衝撃の瞬間、地面は深く凹み、火光と破片が天に舞い上がった。轟音は耳をつんざき、世界の心臓が裂かれるかのようだった。その重みと速度が大地を粉砕し、壮麗で残酷な光景に生きとし生けるものは息を呑んだ。


  『ゴゴゴゴゴ!!!!』


  余波は広がり続け、煙と火光が巨大な終末の画を作り出す。翻る破片、震える山々、舞う炎が隕石の神々しい威圧感を際立たせ、天地はその降臨に従った。すべての瞬間が告げている――これは天からの絶対的な力だ、と。


  『……』


  煙が消えた後、巨大な隕石の窪地だけが残り、隕石は少女の圧倒的な力の下で粉々に砕け散っていた。


  少女は黙って観察を続けていた。


  少女:「……」


  信じられないことに、彼方はまだ生きていた。服は破れていたが、血ひとつ流れておらず、ほとんど無傷だった。


  彼方は痛みに耐えながら立ち上がった。「ああ、痛い痛い…足も立てない。隕石召喚とか、魔法にしてもやりすぎだろ……!」


  少女:「……」


  ……


  少女は再び空高く舞い上がり、そばに現れた白い球は白い長剣へと変化した。


  超巨大な長剣を握り、戦闘姿勢を取った少女は裸足で空に立ち、神性の光を纏った非人の姿だった。


  彼方:「まさか……」


  次の瞬間、少女が瞬きをすると、金色の液体が頭から滴り、全身を覆った。血なのか魔力なのかはわからなかった。


  少女の第二形態が完成した。全身は白と金の神性光に包まれ、長剣も金色に染まっていた。


  天地の気配が彼女に集まり、彼女が力を蓄えると、大地は震え、空は雷鳴を轟かせ、まるで世界の終わりを宣告するかのようだった。


  彼方:(土地全体が地震してる!?本気で俺を殺すつもりか!?)


  純白の少女は神性の光を放ち、金色の液体が肌を伝い煌めく。周囲の空気は震え、ほこりや破片が浮き、天地は息を潜めたかのようだった。


  少女は長剣を高く掲げ、光は烈日のごとく集まり、風は鋭く唸り、飛散する破片は洪水のように旋回した。空気は凝固し、砂粒一つも揺れ動く。


  長剣が振り下ろされ、金色の光が怒涛の如く迸り、空気の裂ける音と大地の微震が響く。地面は砕け、岩石が飛び散り、塵や炎が衝撃と共に四方に舞った。


  刃が突き入る瞬間、天地は固定されたかのように停止し、金光が四方に衝撃を与え、空気の爆裂が近くの岩と土地を裂いた。空間全体が彼女の力に圧され、破壊の光景は壮麗で威圧的、世界はその圧倒的な気迫に従った。


  『崩!!!!!!!!』


  刃が落ちた後、衝撃波が地面に広がり、岩は粉々に砕け、土は巨大な塵柱となり、建物や山石は紙のように裂けた。空気には焦土の匂いが漂い、余波ごとに地面が震え、世界はこの一撃に圧倒された。


  最終的に、大地には巨大で深い峡谷が刻まれた。


  しかし……


  彼方:「痛痛痛!本当に痛い!」


  無傷の彼方は尖った岩の上に重く落ちたが、尖った岩と高さにもかかわらず、体は刺さらず、ただ凍りつく恐怖と痛みを感じただけだった。


  彼方:「うわああ!危うく刺されるところだった!」


  少女は神性の第二形態を解除し、ただ死んだ魚の目で彼方を観察していた。


  少女:「……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る