今日も疼く~死の危険を察知する眼を持つ俺は毎日右目が痛くなる~

麝香連理

プロローグ

…………は?



待て………どういうことだ?




 俺は病室のベットで死んだ………気がしたんだが…

今感覚的にゆっくりと目を開けてみれば、天井には豪華なシャンデリアに赤と金を基調にした明らかに高そうなカーテン。

 こんな豪華な病院知らないぞ……………?

 というか、俺は死んでなかったのか……………でもなんでこんな…………あれか?死ぬ前くらい良い夢見させるってか?

 ならどんだけ良い夢か期待してやるかー。



 というか、視界の端に見えるのはなんだ?柵か?

 俺を何歳だと思ってるんだ?それとも突然暴れだす精神異常者だとでも勘違いしてるのか……………

 一回文句と説明の為にも、取りあえずナースコール……………あれ?腕が……手が………なんだ?うまく動かせない…………



 んむむ………おかしい………下半身不随の次は上半身麻痺か?ハァー………俺の人生、良いこと無しだなぁホントに。

 周りは豪華でも俺の身体が動かなければ、結局こんな部屋も只のハリボテに過ぎないか…………ハァ。

 まぁ嘆いても仕方ないし、頑張って動………動……う…………………………………………………………


 クソッ!俺は老人にでもなったのか!?手を目の前に持ってくるだけでも重労働……………………ハ?


 おかしい、これは明らかにおかしすぎるだろ………


 どう見ても手が小さすぎる……………それに爪が揃っていやがる…………俺の爪ガチャガチャでピンクの部分が壊滅的だった筈なのに………………



 本当にどうなって………………




「ケイシー様~、今御食事を~……………」

「あ?」

 誰だこの女?目が合っちゃったけど、とりま美人。このレベルは中々いない。というかなんでメイド服?

 ここコンカフェならぬコンホスピタル?


「ケ……」

「?」

「ケイシー様……目が見えるのですか!?」

「あ?」

 ケイシー?って誰?俺?ちゃうんすけど。

「まぁーまぁーまぁーまぁー!私が一番乗りー!イヤッタァー!」

 メイドが哺乳瓶を持って小躍りを始めた。

 俺は何を見せられてるんだ?


「…………ハッ!?急いで御報告………の前に!」

 

 お?なんだ?近付いてきたな。


「ケイシー様~、御食事にしましょうねぇ~?」


 メイドはそう言うと軽々と俺を持ち上げた。触れられてるという感触に、持ち上げられる浮遊感。

 ……………認めたくないが、俺はケイシーという名の赤子のようだ。

 これってあれか?転生ってやつか?

 なんで急に…………前兆とか神とか見てないんすけど?





 まぁ、なるようになるか。

「ケプ」

 なんか腹一杯になったら眠くなってきてどうでも良くなってきた。

「はい、偉いですよ~?ケイシー様はごゆっくりして下さいね~?」

 メイドは優しく俺をベットに戻して部屋を出ると、明らかに足音をたてて走っていった。

 アイツ大丈夫なのか?赤子と目が合ったくらいであんなに大騒ぎして。怒られても知らんぞ。


 なんて偉そうに心の中で呟きながら俺は寝息をたてた。










 その後はなんか周囲が一旦うるさくなってまた静かになった。今世の親でも来たんだろうかね。

 昔?というか前世?からの寝覚めが悪かったことが引き継がれてるようで、親の顔は見なかった。どっかの貴族だろ、赤子にこんな部屋用意するなんて。それも金持ちか、権力を持った家か。

 帝王学とか分からんぞ………………








 夕方、スキップしながら哺乳瓶を持って来たあのメイドが、自分の指を俺の前に出して目で追わせようとしてきた。

 特にやることもないから付き合ってやったら、めっちゃはしゃいでた。

 う~ん、この家は比較的仕事がしやすいのか、上司がいないから浮かれてるのか。まだ判断はできないが、メイドなんて大変そうな仕事してるんだし、俺が癒しになってやらんこともないぞ?











 

 スピー……………スピー……………

 うへ………食べきれな……………痛っ!?

 なぁ!?な、なんなんだこれ!?

 目が!右目が……!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

 

 一瞬見えた視界は暗闇。きっと真夜中だろう。

 こんな時間になんで!?ぐぁ…痛すぎる!

 でも俺はこれでも日本男児ッ!ぜってぇ泣くもんか!



 俺が意地で目をガン開くと、目の前に鈍い光を放つナイフを持った知らん奴がおった……………Why?

 そしてまだ痛ぁい…………………


 どういうことだよ!これはよぉ!流石にヤバ………



「ぎゃあぁぁあぁぁぁぁああぁぁぁッ!!!」

 こうなりゃ俺のシャウトでコイツの鼓膜破壊してやる!つーかこうしないと右目の痛みが紛れねぇ!

「くっ、小癪な!」

「ぎゃあァァァァァァァァァァァア!!!!!!」

 来んな!来んな!この……この………痛すぎて思考が纏まらねぇ!


 ひ!?ナイフが目の前に………………キン!



「あう?」

「あ?」


 ナイフが刺さる瞬間、俺とナイフの間に白い障壁のようなものが現れた。



 その瞬間、この建物全体で地鳴りのように足音が部屋のすぐ前の廊下で鳴り響き、部屋のドアが勢い良く開け放たれた。



「やはり狼藉者か!ケイシー様を御守りせよ!」


 すっげ…………想像通りの全身銀色鎧だ…………

 あれ?そういや右目の痛みが無くなってる………?

 一体どういう…………………



 いや、考えんのは止め。なんか疲れたし、寝よ……

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