E.O.S.リアルライズ 〜世界終焉サバイバル

こやたまご

第一章

第1話

 空が赤く燃えていた。

 雷鳴のような轟音とともに、無数のカプセルが空から降ってくる。


 


「うわっ――!」


 


 衝撃で体が浮き、次の瞬間――砂混じりの地面に叩きつけられた。

 息が詰まる。

 なんだ?……痛い。リアルすぎる。


 


 ここが“現実”じゃないなんて、とても思えなかった。


 


「はぁ……っ、ここ……E.O.S.の《デザートステージ》?」


 


 見覚えがある。

 何百時間もやり込んだ人気マップ。

 百人のプレイヤーが一つの島に降り立ち、最後の一人になるまで戦う――

 VRバトルロイヤル《End of Survival》。


 


 E.O.S.。

 俺の――いや、世界中のゲーマーの戦場だ。


 


 けど、今のこれはおかしい。

 手の感触、風の熱、心臓の鼓動。

 全部が“現実”そのものだ。


 アバターはE.O.S.のものなのに、変な感覚だ。


 


「……まさか、本当に」


 


 呆然とする俺の前に、ホログラムが浮かんだ。


 


【E.O.S.:サバイバルモード開始】

【参加者:100名(25チーム)】

【各プレイヤーは自動的にチームに配属されます】

【最後の1チームが勝者】

【死亡=ゲームオーバー】


 


「……は?」


 


 息を呑む。

 なんだ?死亡って。

 これ、冗談じゃない。

 “死亡”って、そういう意味なのか。


 


(アイ……大丈夫か?)


 


 脳裏に妹の顔が浮かぶ。

 さっきまでE.O.S.を一緒に遊んでいた、大切な家族。

 もし、彼女もここにいるなら――。


 


【チームメンバーが決定しました】


 


 一瞬で目の前の景色が変わる。

 光が弾け、三つの影が現れた。


 この演出はE.O.S.…ゲームそのものだ。

 


 一人は、銀髪の少女。

 冷たい青の瞳、片目にバイザー。

 その姿に、息を呑む。


 


「……セラ、なのか?」


 


 E.O.S.ランク上位。

 元プロチーム《HELIOS》所属――セラ=フロスト。

 俺がランクリーグで何度も戦った相手だ。


 HELIOSはE.O.S.公式の元プロチームである。

最近解散したチームだ。


 


「ええ。これは、たぶん強制マッチね。でも……ログアウトボタンがないわ」


 


 セラがホログラムを操作する。

 本当に、“ログアウト”の項目が消えていた。


 


 次に現れたのは、無骨な男。

 短髪で軍人のような体つき。頭上の名札の名前は――ロウガ。


 


「まさかゲームが現実になるとはな」


 


 最後に、小柄な少女が現れる。

 怯えたように銃を握りしめていた。


 


「わ、私……な、なんでこんな……そ、そんなことって!」


 


 パニックになる彼女の肩を、セラがそっと掴んだ。


 


「落ち着いて。まずは生き残る方法を考えましょう」


「い、生き残るって……これ、死ぬんですか!? 本当に死ぬんですか!?」


 


 その声に、全員の表情が強張った。

 沈黙が流れる。

 



『第1ラウンド開始。戦闘区域を確認。10分後に縮小します』


 


「来るぞ」


 ロウガの声が低く響いた。

 遠くで銃声が鳴り、砂煙が舞う。


 


「なぁ……これ、本当にやるのか?

 相手を撃ったら――死ぬかもしれないんだぞ」


 


「……それでも、やるしかないわ」


 


 セラが静かに銃を構える。

 その青い瞳には、一片の迷いもなかった。


 


 その手が震えているのを、俺だけが見た。


 


 そして、俺たちの“死のゲーム”が始まった。

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