第7話 錯覚する未来 ── 桧山の影 片山の策 ──
“ 次の扉… ”──
それは、あやの遺書と裏金リストを結ぶ糸。
彼らが何年も探し続けてきた「真実への入り口」だった。
沈黙…
部屋の時計の針が、静かに秒を刻む。
「……梓って子、見たよ。」
不意に片山が口を開いた。
「JBSのアシスタントとして潜入してる。“加藤あずき”だろ?」
「どうして彼女の事を、、、?」
「俺の領域で名前を偽装するのは怪しすぎるだろ、、全て把握している。」
桧山は息をのむ。
片山の言葉は、まるで冷たい刃のようだった。
“俺の領域”
──それはつまり、政治家も、報道も、情報も、
全て彼の掌の上にあるということ。
「……なんでもないわ、彼女は、、、」
「そんな話を信じると思ってるのか?」
片山はわずかに笑った。
その笑みは優しくも、哀しくも見えた。
「俺は誰も信じない。ただ、流れを整えているだけだ。」
桧山はその冷たさを知っていた。
そして、その冷たさに自分が惹かれていることも、
同時に理解していた。
──怒りは、愛に似ている。
ただ、決して救われないだけだ。
彼の指が、ゆっくりとモニターのスイッチを押す。
画面には、あやの最後の映像が再生される。
白いワンピースの彼女が、カメラの前で微笑む。
[……お姉ちゃん、見てる?]そう言ってるようで・・・
桧山の目から、涙がこぼれた。
片山は静かに立ち上がり、窓の外を見た。
国会議事堂の白い塔が、夜霧に溶けて見えた。
「桧山、俺たちはまだ道半ばだ。」
「……どこまで行くつもり?」
「この国の根を掘り返すまでだよ、、余計な事をするな、」
その声には、神にも悪魔にも似た静けさがあった。
──翌日──JBSテレビ・報道制作室。
蛍光灯の白い光が、無機質に机を照らしている。
加藤あずき(梓)は、その中で自然に溶け込むように座っていた。
金髪のウィッグ。
カジュアルなジャケット。
高校生とは思えぬほど、落ち着いた眼差し。
「じゃあ次、データ編集の進捗、共有お願いします。」
スタッフが言いながら、SDカードをパソコンに差し込む。
その瞬間だった。
──視界の奥が、ゆらりと揺れた。
スタッフの背後に立つ梓の瞳に、
“1時間後”の未来が再生される。
映像には、同じスタッフが映っている。
だがその隣に
──見覚えのある男。「……片山洋介……?」
未来の中で低い声で囁いていた。
『このメモリーカードを入れ替えろ。これが“真実”になる。』
(メモリーカードの……すり替え……?)
胸がざわつく、、、
今の会話では一言もそんな話は出ていない。
つまり──この1時間後に
片山洋介がここに現れる。
梓は静かに息を整え、
スタッフを見渡す、誰かが片山から指示を受けるはずだ、、、
しかし誰も片山と接する未来は見えてこない、、、
「あずちゃん、そろそろ帰ろうか・・高校生バイトなんだから残業禁止だよ!」
香坂が声を掛ける、
「アズちゃん一緒に帰ろう!!」桧山が声を掛け一緒に退社した・・・
──1時間後。
編集室のドアが開き、黒いコート姿の男が入ってきた。
片山洋介だった。
「橘事務所から一部資料の差し替えをお願いしたい協力してくれ。」
片山は一切表情を変えず、
手に持った黒いケースからメモリーカードを取り出した。
「これが “証拠映像” だ。」
スタッフがモニターに映し出す。
──そこには、平泉たかしと橘くにまさが映っていた。
>>ホテルの一室にテーブルには封筒。
その向かいに座るのは、
元総理・橘くにまさ「分かってるな平泉。」
「……はい、橘先生。」札束が机を滑り、
カメラがわずかに揺れる。
映像の中の平泉の顔には、怯えと苦悩が入り混じっていた。
片山から渡された映像を見て
スタジオが一瞬、凍りついた。
「……な、なんだ、これは……?」
「橘が……平泉を脅してたの?」
誰も口を開けない。
ただ、その光景が“真実”として突きつけられた。
「香坂さん、そちらの持っている映像よりも平泉が死んだ今のタイミングなら
今、国民が見たいのはこの映像ではないですか??」
香坂が震える声で言う。
「こんな映像……いったい誰が……」
香坂が低く呟いた。
「片山さん……あなたは何が目的なんですか?」
片山は、静かに笑った、、、
「目的? 真実を流すことだ。ただ、誰の“真実”かは、まだ決めていない。」
彼の眼差しには、怒りも悲しみもない。
冷静すぎるほど冷たい。香坂が声を荒げた。
「ふざけるな……これを放送したら、局ごと終わるだろ!」
片山は淡々と答えた。
「終わるのは“嘘をついてる方”ですよ。」そう言い残して部屋を出ていった。
残された香坂は、
拳を握りしめた。「……あの野郎、分かって仕掛けてる、、
俺達が何を狙ってるかも、全部……。」
帰宅途中の梓と桧山
電車の中、梓が訪ねる・・・
「桧山さん……どういうこと?」
桧山は、梓の顔を見た
未来を見通すような目で呟いた。
「……片山は、橘を潰すために、私たちを利用しようとしている。」
桧山がうなずく。
「でも、利用されるのは好都合、平泉の死の裏で、橘は確実に何かをしている。」
「片山から何か聞いてもすか?」
桧山はうなずいた、
「梓ちゃんに嘘言ってもしょうがないから正直に言うと、、、」
「片山は橘を失脚させるのではなく、殺す計画よ・・・」
梓は言葉を失っていた、、
「結局、行動しなければ片山自身も危険なのはわかってる
あの人の行動は正直全ては理解できないの、」
梓は見えていた、、
結局放映されるのは、片山が持ち込んだ映像、、になる・・・
この、結末が良いの方向に向かうのか、
悪い方向に向かうのかは、、
1時間先の未来では、何も変わらないと思い知った。
第7話錯覚する未来 終了
次回・・第8話 休日の密談
週1回更新
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