episode 8


案の定、次の日の朝起きたら喉が痛くて風邪を引いた。


季節の変わり目は毎回と言っていいほど風邪を引く。


気を付けていたのに─…。


今日は大事をとって大学は休もう…。


熱はまだ出ていないから、ゆっくり休めばきっとすぐ治る。


そう思って私はベッドに戻った。






次に起きたのは、お昼過ぎた頃だった。


携帯を確認すると、画面にはメッセージが数件と着信が何件か。


どれも相手は吏生さん…。


「はぁ……」


私には連絡を取り合う相手が家族しかいないから、正直どうしたらいいか分からない。


そう思って、とりあえずLINEの画面を開いてみたけど、メッセージを確認してしまった事を後悔した。


既読が付いてしまったせいで、その数分後にLINE電話がかかってきたから。


出るか、出ないか…


戸惑っていたら電話は切れてしまった。


でもまたすぐに電話がかかってきて、これは1度出ないと鳴り止まないと思った。


「は、い……」


『やっと出た。今日大学来てないでしょ』


「あ、はい……」


『どうしたの?身体辛い?』


「そういう訳では…」


いや、風邪だから身体が辛い、は合っている…か。


『俺に会いたくなかった?』


「い、ぇ…」


そこは正直に“はい”と言ってしまったら失礼だと思ったけど、後々考えたらストレートに言ってしまえばよかった。


「あの、用件はなんでしょう…」


『1年の講義見に行ったんだけどいなかったからどこにいるかなーって思って』


「あ…、すみません…」


『じゃあ今日は無理か。また明日ね』


用がないのに連絡を取り合うのは…、私にとって正直面倒だ。


その後は軽くうどんを食べて、シャワーを浴びてゆっくりした。





風邪が悪化しないように、と気を付けていたのに、次の日になると起き上がれないほど頭痛と喉が痛かった。


悪寒もする…。


絶対熱が出た…。


今日も大学は行けない…か。




瞼を閉じようとした時、電話が鳴った。


案の定、相手は吏生さん。


後回しにすると面倒だから今のうちに出よう、とすぐに電話を取った。


「はい…」


『おはよう。迎え来たから大学、一緒に行こう?』


「すみません…、今日もお休みするので…」


『ん?どうしたの?』


「けほっ…」


『風邪?』


幸い、今日は金曜日だから土日でしっかり休めば月曜日からは大学に行ける。


「あ、はい…。来てくださったのにすみません…、では…」


『ちょっと待って』


あまり話していると頭に響いてくるから早く切りたいのに…。


既にクラクラして、頭は割れるように痛い。


「すみま、せん…、もう…寝ていたくて…」


『何号室?』


「201……で、す」


教えるつもりなんてなかったのに、頭が正常に働かないせいで聞かれたことにポンポン答えてしまっていた。


『インターホン鳴らすから施錠開けて』


その後は家のインターホンが再び鳴って、フラフラでドアを開けたら外側から勢いよくドアが開いてしまって倒れそうになった。


「おっ、と。大丈夫?」


「あ、すぃ、ませ…ん」


「ごめん、ちょっと上がるよ」


玄関で靴を脱いでるその人を見ても、なんとも思わなかったのは熱のせい…だと思いたい。


でも実際は身体が辛すぎて誰かに寄り添っていたい気持ちがこの時は大きかったのかもしれない。


吏生さんが頬に手を触れると、ひんやりして気持ちよかった。


「あっつ。熱あるね」


「…」


「薬は?熱冷ましとかあるの?」


「はぃ…。大丈夫です…」


「薬箱とかある?」


そう言えば朝起きてからまだ薬も飲んでない。


私に効く薬が色々と入った薬箱をリビングのテーブルに置いたけど、そもそも立っているのも辛い。


少しソファに座ると、ウトウトしてきてしまって、そこからはもう記憶が曖昧だった…。


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兎と狼 Y̤̮Ṳ̮I̤̮ @sakurina

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