第2話
ヴゥゥゥゥゥン!!
インパクトレンチの音がピットで鳴り響く。
「重い、、、」
吹谷は車のタイヤ交換をしていた。
「最近の車はタイヤデカ過ぎんだろ。タイヤのデカさは器のデカさとは言うけれど」
現在、スポーツセダンのタイヤ交換をしているのだが高インチのタイヤで重さもそれなりにある。
「吹谷」
「はーい、、、って店長どうしたんですか?」
「これから会議だから休憩とか回しといて」
「了解です。とは言っても店頭2人の2人ですけどね」
「吹谷もちゃんと休憩取って」
「了解です」
今日は平日で、現在のシフトは店長、吹谷、そしてアルバイトでフリーターの
「とりあえずタイヤの組み替えだけするか」
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「長門さん、休憩入って」
「はーい。『休憩入りまーす』吹谷君、ライター貸して」
「いいよ」
タイヤ交換を終えた吹谷は店頭に出る。
「そういや吹谷君のタバコ、また店長が吸ってたぞ」
「店長、自分のはどうしたんだよ、、、」
「充電がなかったらしい」
「紙タバコを止める為に電子に切り替えたのに意味ないだろ、、、」
「まあとりあえずライター借りるわ」
「へーい」
長門はフリーターであるが、吹谷と同い年だ。
「榊さんは長門さんが戻ったら休憩入れますね」
「あいよ」
榊も長門と同じくフリーターで、定年退職後は様々なガソリンスタンドでバイトとして働き、この業界は長い。
「そういや吹谷、俺バイク替えたんよ」
「まじすか?前のを下取りに出してとかですか?」
「そうそう、最近のバイクはキックが付いてないからちょっと不安やなぁ」
「新しいのは付いてないんですか?」
「そうなんよー」
「何かあった時大変っすね」
彼らが働くガソリンスタンドは来店台数も少ない為、暇な時間も多い。
しかし、高単価な作業が多く入る為、売上はそれなりにある。
こうして、暇な時間は雑談を交えながら、清掃やタオルの洗濯を行っている。
Prrrrr…
「電話か、誰からだろ」
ピッ
「お電話ありがとうございます。ガソリンスタンド
『お疲れ様、
「お疲れ様です課長。いかがされました?」
『吹谷か、ちょうど良かった。お願いしたいことがあって、他店舗の応援とか行けたりしない?』
「ちょっと厳しいと思います。何かあったのですか?」
『他店舗でタイヤセールやろうと思っててその応援スタッフに来て欲しいんよね』
「あー、ちなみにいつですか?」
『来月やろうかと思ってる』
「ちょっと急ですね。来月、コーティングに磨きの予約、あと整備も入ってますね」
『吹谷はやっぱ厳しいかぁ。いやさ、吹谷ってタイヤ販売できるから欲しかったんよね』
「私が得意なのはスポーツタイヤですから」
『今どきそういうタイヤ売れるのすごいからな。まあいいや、時間取らせてごめんね』
「いえいえ、こちらこそお力になれず申し訳ございません」
『うん、ありがと。お疲れ様ー』
「はい、お疲れ様です。失礼します」
電話を切り、元の場所に戻す。
「誰からだった?」
「課長です。タイヤセールの応援人員が欲しいとのことでした」
「どこも人手不足やなぁ」
「おっしゃる通りです」
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「お疲れ様でーす」
「お疲れ」
夕方となり、学生バイトが増えてくる時間だ。
城森も大学での講義を終え、バイトに来ていた。
「吹谷さんって明日休みでしたよね?」
「そうだけど」
「デート行きませんか?」
「いいよ、どこか行きたいとこあるの?」
「ちょっと買い物がしたくて、、、」
「それは俺の車に入る量か?」
「、、、多分」
「俺の車は2シーターのクーペなんだよ。そんな大荷物は無理だからな?」
「わかってますよ。子供とかできたらせめてセダンとか乗ってください」
「ミニバンは絶対に乗らないからな」
「そういうからセダンで我慢してるんです」
「あと、SUVにも絶対に乗らない」
「奥さんとか逃げていきますよ」
「それはもう仕方ない。そのくらいで逃げられるのならその程度なんだろ」
「そんなんだからこれまで付き合って来た人に振られるんですよ」
「、、、返す言葉もない」
「とにかく!明日デートしますからね!!」
「分かったよ」
吹谷と城森は半同棲をしているが、社会人と大学生であり更にはシフト制の仕事のため休みが合う時があまりない。
そのため少しでも2人の時間を増やすという意味でも半同棲をしている。
「全く、吹谷さんはモテるのに残念なんですから」
「不思議だよなぁ。これまで付き合って来た女の子は全員相手から告白されてOKして、全員相手から振るっていうね」
「付き合う前と付き合ってからギャップがあったんでしょう」
「城森さんも感じる?」
「私はそんなとこも好きで付き合ってますから」
「それなら良かった」
「というか吹谷さんは尽くしすぎなんですよ。その上、彼氏としては完璧だから、付き合う身からすると申し訳なさしかないんですよ」
「そうは言われてもなぁ」
「そう言うから私はまあ甘えます。弱さを見せてこないところがちょっと癪ですけど」
「めちゃくちゃな言われよう」
「でもたまに見せるポンコツ具合めちゃくちゃ好きです」
「そんなポンコツか?」
「自分で使ったボールペンをどこかに置いて行方不明になったり、自分の車を整備する時に鍵を無くすし、なぜかヘッドライトも2つで1組のものを2セット買うしポンコツです」
「いやぁ、お客さんの名前と車を覚えるのは得意なんだけどね。直近の記憶を失いがちだから」
「それは生活に支障が出るのでは?」
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