追放された俺のスキル【不断の研鑽】~努力の成果が数十倍になるので、地道に剣を振っていたら世界最強になっていた~
人とAI [AI本文利用(99%)]
第1話 物語の始まり
活気と鉄の匂いが混じり合う、辺境の街アークライト。その中心に聳え立つ冒険者ギルドの扉が、控えめな音を立てて開いた。屈強な冒険者たちの喧騒が一瞬だけ途切れ、入り口に立つ一人の青年に視線が注がれる。
少し癖のある黒髪に、地味な作業着。一見して冒険者とは思えないその風体は、明らかにこの場所では浮いていた。青年――アレン・クラフトは、注がれる好奇と侮りの視線に身を縮こませながらも、まっすぐに受付カウンターへと向かった。
「あの、すみません。冒険者の登録をお願いしたいのですが…」
自信なさげな声に、受付カウンターの向こうから快活な笑顔が向けられる。栗色のポニーテールを揺らした少女、リナ・ベルフォードだ。
「はい、こんにちは! 新規登録ですね! 私が担当します、リナです。よろしくね!」
「あ、はい。アレン・クラフトと申します。よろしくお願いします」
リナは差し出されたアレンの手を見て、少しだけ目を見開いた。若者の手にしてはあまりに多くのマメと古傷に覆われている。まるで、何年もハンマーを握り続けてきた職人のような手だった。
「アレン君ね。よし、書類に記入をお願い! ところで、何か経験は? 見たところ、剣士って感じでもないみたいだけど…」
「えっと、以前は、あるパーティーで鍛冶師の見習いをしていました。武器の手入れとか、雑用とかを…。戦闘の経験は、ほとんどありません。まだ半人前ですので…」
アレンがそう言うと、近くで酒を飲んでいた冒険者の一人が、聞こえよがしに鼻で笑った。
「なんだ、鍛冶師崩れか。武器もまともに振れない奴が冒険者なんて、命がいくつあっても足りねえぞ」
「荷物持ちでも探してるのか? ま、それすら務まらないだろうがな!」
嘲笑がギルド内に響く。アレンは俯き、ぎゅっと唇を噛んだ。かつて所属していた勇者パーティーで浴びせられた言葉が、脳裏に蘇る。
『お前の努力は無駄だ』
『才能がないのに足掻くな。見苦しい』
その時、ギルドの扉が勢いよく開かれ、全ての喧騒がぴたりと止んだ。
入ってきたのは、陽光を反射して輝く銀髪の美青年。磨き上げられたミスリル製の軽鎧をまとい、その立ち姿だけで周囲を圧倒する覇気を放っていた。
「ゼファー様…!」
「『銀閃』のゼファーだ…!」
Aランク冒険者、ゼファー・フォン・エインズワース。この街の若きエースの登場に、誰もが畏敬の念を向ける。
ゼファーは周囲の反応など意にも介さず、冷徹な蒼い瞳でギルド内を一瞥すると、アレンの姿を捉えて、小さく舌打ちした。
「また才能なき者が増えたか。無駄な努力は、仲間を危険に晒すだけの自己満足に過ぎん。去れ、戦場はお前のような者の居場所ではない」
突き刺さるような言葉。それは、アレンが最も恐れていた評価そのものだった。
リナが何か言おうと口を開きかけたが、アレンは静かに首を横に振った。そして、登録を終えると、まっすぐに依頼掲示板へと向かった。
「…僕に、できることを探します」
討伐依頼、護衛依頼、素材採取依頼。どれも今の自分には分不相応に思える。アレンは一番下の隅に貼られた、一枚のくたびれた依頼書に目を留めた。
『急募:薬草園の害獣『粘着スライム』の完全駆除。及び、粘液による土壌汚染の完全除去。報酬:銀貨5枚』
「あ、その依頼…」
心配そうに後からついてきたリナが声をかける。
「誰もやりたがらないのよ。ベトベトするし、土を入れ替えるなんて面倒なだけで実入りが悪いって。もっといい依頼もあるよ?」
「いえ、これがいいです」
アレンはきっぱりと言った。
「どんな仕事でも、完璧にやり遂げるのが僕の信条ですので。僕にできるのは、きっと、こういうことだけですから」
その実直な瞳に、リナは言葉を失った。アレンがその依頼書を剥がしてカウンターへ持っていく。その背中に、ゼファーの冷たい声が投げかけられた。
「フン、ゴミ掃除がお似合いだな」
アレンは何も答えず、ただ深く一礼すると、ギルドを後にした。
彼の新たな一歩が、誰からも見向きもされない、最も地味で、最も厄介な仕事から、今、始まろうとしていた。
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