死にたい

見鳥望/greed green

『死にたい』


 何よりも重いものを何ともない軽さで投げ捨てられる言葉。タイムラインで、どこかの誰かがいつものように呟く。


『大丈夫?』

『何があったの?』

『話聞くよ?』


 薄っぺらい、半紙以下の関係性の連中がここぞとばかりにその言葉に群がる。


 ――気持ち悪い。


 その光景を見る度に、まるで光に群がる羽虫を見ているかのような嫌悪感でいっぱいになる。


 どうしてそうも簡単に、言葉を投げ捨てられるのだろう。

 どうしてそうも簡単に、大した関係性もない人間に向かって、形にもならない薄い味方のような言葉を投げかけるのだろう。


 どこまで分かってるのだろう。

 息を吐くかのように死にたいなんて言う奴が、本当に死にたいだなんて思ってない事。

 それに手を差し伸べる奴らが、本当の意味で心配なんてしてない事を。

 本人達に、どこまでの自覚と意識があるのかは分からない。


 ただ思う。自分には理解出来ない。

 そんな連中と一緒に、自分もネットの中にいる。リアルとは別の人格を持って、もう一人の自分としてここに生きている。


 厚みなどいらない。

 手軽な息抜き程度の空間。

 それなのに、驚く程簡単に気安く、彼らは領海を犯す。


「死にたい、か」


 勝手に死ね。

 そう思いながら、無性に苛立った。

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