娯楽奴隷だった俺は逃げ逃れたら奇跡的に新たな土地でスローライフ育みながらもハレーム生活も?
海うみ海
01・異世界に飛ばされたら奴隷商人に捕まってしまった
普通に仕事をして、土日は溜まった家事を片づけて、アパートの部屋で好きな本や漫画を読んで過ごす、そんな毎日を送っていたおれは、どういうわけか知らない森の中にいた。
珍しく22時まで残業をして、いつものように住宅街の角を曲がった瞬間。
気がつくと、暗い森の中に立っていたのだ。
なぜ森だとわかったかというと、手に持っていた懐中電灯の光が、周囲にびっしり生えた杉の木を照らし出していたからだ。
しかも、どうも目線が低くなっている気がする。
不安になって懐中電灯を自分の左手に向けてみると、なんということでしょう。
スーツの袖から手が出ていない。
裾をめくると、そこには子どものような小さな手。
しかも着ているスーツがブカブカだ。
何が起きたのかわからず、夜空を見上げれば、そこには月が三つ浮かんでいた。
その異様な光景を眺めながら考えた末に、ここは異世界なのではないかという結論にたどり着く。
つまり、おれは何かの拍子で異世界にトリップしてしまったらしい。
そう思うと、意外と冷静でいられる自分に驚いた。
「どうしたものか……」
三つの月をぼんやり見上げていると、ガタガタと音がして、何かがこちらに近づいてくる。
慌てて隠れようとしたが、スラックスが大きすぎて足がもつれ、派手に転んでしまった。
その瞬間——
ガタガタという音の主が目の前に現れた。
「○×$#&%!!」
怒鳴り声のような言葉が響く。
懐中電灯を向けると、そこには中世ヨーロッパ風の装いをした、いかにも悪そうな男たちが四人。
彼らの後ろには、大きな馬車。
だがそれを引いているのは馬ではなく、鹿のような角を持つ巨大なイノシシだった。
思わず自分の目を疑う。
男たちはキャンプ用のようなシックなランプを手に、おれの方へ近づいてきた。
何かを話しかけてきたが、言葉はまったく通じない。
最後に見たのは、彼らのあくどい笑みだった。
次に目を覚ましたとき、朝日が昇る馬車の中にいた。
周囲にはおれと同じくらいの年の子どもたちが何人もいる。
そしてみんな、首や手首、足首に鉄の枷をつけられていた。
このとき、おれは嫌な予感しかしなかった。
それからは飲まず食わずで、ただ日だけが過ぎていった。
最後の夜に食べた大好きな豚骨ラーメンのスープを残したことを、これほど後悔したことはない。
どこに連れて行かれるのかもわからず、うとうとしていると、突然馬車が止まった。
次の瞬間、怒鳴り声が響き渡り、子どもたちは慌てて外へと引きずり出された。
そこに広がっていたのは——
まさに地獄だった。
無理やり体を洗われたかと思えば、全身に油のようなベトベトしたものを塗られる。
気持ち悪くてたまらない。
言葉は理解できないが、どうやらおれは「奴隷オークション」で売られているらしい。
そして、買われた先は、さらに地獄だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます