転生した俺、英雄になる外伝
なうなす
第1話 設問
なんとも平々凡々な男だ。
美しい春、放課後の日は橙色をしていて、静かな校舎をその色へと染めている。
ただ好きな人に、聞いたことのある言葉。
何一つとして意外と思わない告白。
しかし、私は知りたかった。
ただ人を愛するという事を。
私はカンナ。
私は容姿に恵まれていて、どこでもチヤホヤされている。もちろん、告白だって何度も聞いたし、そして全て断った。
別に高嶺の花を気取るつもりはないけど、私が答える義理もない。
そして……
こいつはテッペイ。私にありきたりな告白をしてきた。
制服はしっかりと着ている。そんな全体からは真面目な雰囲気を感じる。
人としては無関心。そもそもあまり視界には入れていなかった。ただ、孤立しないための付き合いでイケメンとか、高身長とかとキャーキャー言われていたため、知ってはいる。
……なぜだろう。いつものように拒絶する筈だったのだが、自分の中にあるモノが彼を肯定している。
カンナ「……よろしくお願いします」
本当に気の迷いだった。ただ、数カ月付き合ってみてみようと思ったのなんて。
彼はとても紳士だった。
私を豆腐かなんかだと思っているのだろう。一緒に歩くときは、テッペイが常に道路の側を歩く。
エスコートでも受けている気分にされた。
□□□□き。
彼はとても優しかった。
なんでもただ『やってみるよ』と挑戦していた。
しかし、これは奉仕。決して恋愛などではない。
カンナ「また……明日」
テッペイ「カンナ。気を付けて帰ってな」
そう告げても、彼は不安そうにチラチラとこちらを振り返っている。
高校生になっても何も変わらない。
私はなにも渡せていないのに、
彼はたくさんのものをくれた。
□は□□き。
今日は前から決めていたデートの日。
そろそろ私も決めないといけない。付き合って2年目になる今日、この関係について。
思えばいいものだった。尽くして、尽くして、尽くしてくれた彼との日々。
私は単純だったから、もう彼を思っている筈だ。今も、ただ街を歩いているだけなのに、足が軽く感じている。
陳腐で平凡な、でもそれを突き通せる彼は素晴らしい人間だ。
□は嘘つき。
まだ朝だというのに、この街は騒がしい。
私は嘘つき。
恋とはとてもいいものだ。こんな日常に色があるようで。
それっぽいことを言うな。嘘つきのくせに。
私は、本心では彼をなんとも思ってもいないだろう。
いや、なんともではない。
私に恋など出来やしない。
昔から、私に人らしさなんてなかったのだから。
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