あなたはカクヨムロボットですか?

ちびまるフォイ

ロボットのアクセスは必要悪

「さて、今日もカクヨムでちょっとエッチな作品を探すぞ~~!」


意気揚々と服を脱いでアクセスしたが、

待っていたのは事務的な画面だった。



『私はロボットではありません。』



チェックボックスを選択するや、

画面にはデカデカと警告が表示された。


『選択が早すぎます。

 あなたはロボットの可能性があります』


「なんでだよ! こっちは早く読みたいんだよ!

 服も脱いでるんだから早く選択しただけだ!」


『カクヨムではロボットによるアクセスが増加しています。

 次の詳細なロボット診断を突破するとアクセスできます』


「いいからエッチなやつ読ませてくれよ……」


画面に表示される【次へ】を押して診断を再開する。



『私はロボットではありません。』



ちょっと人間ぽさを出すために、チェックまでの時間を空けて押す。



『私は人間ではありません。』



「え?」


とまどった。チェックつけないほうが良いのか。

しばらく待っていると自動で画面が切り替わった。

どうやらチェックつけるのは罠だったらしい。



『私はロボットではない人間です。』



「どっち!?」


これは人間だと思うので迷ってチェックを付けた。

正解だったらしく次の診断へと進む。



『私はロボットじゃないわけじゃないこともないです。』



「もうわからん!」


チェックをつけるとコレはミスだったらしい。

画面には大きくこちらに指をつきつけて"You Are ROBOT!!!!"と表示された。


『あなたはロボットですね?

 サイトへのアクセスを拒否します』


「なんでだよ! ちょっと間違っただけじゃないか!

 おや、これは……?」


画面には【Continue?】というボタンがあった。

ボタンを押すとふたたび別のロボット診断がはじまる。



『ハシのタイルをすべて選択してください。』



「ああ、よかった。こっちのほうがいいや」


画面に橋が収まっているタイルを選択した。

OKを押して次の画面に進むと……"You Are ROBOT!!!!"


『お箸の選択が抜けています。

 ロボットは同音異義語を理解できないので、

 あなたはロボットですね!!!』


「ちがうわ!!」


ふたたび【Continue?】でチャレンジ。

よく見ると画面の上に「残機:1」という表示がある。

残機使い切ったら完全なるロボット判定されてアクセスできないのだろう。



『最後の挑戦です。カメラをオンにして待機してください』



「え……?」


カメラを付けてしばらく待った。

セルフカメラが自分の顔を捉えて勝手に録画モードに入る。


『それではカメラに向かって、

 自分の過去にやらかした恥ずかしい思い出をどうぞ』


「え? え? えーーっと……」


とっさに話をふられてしどろもどろ。

でもこれに答えられれば人間判定は間違いないだろう。


どんなに高性能なロボットでも、

矛盾のないエピソードを急に作るのは難しいはずだ。


「学生の頃、クールな自分がかっこいいと思って

 学校では一言も話さないキャラで通していた。

 休み時間はあえて窓の外を見てたそがれたりして、

 女子から一目置かれる存在になっていると思っていた。

 でもある日先生から指導室に呼ばれて、

 ひとことも喋らないことがなんらかの病気だと言われ

 否定しようにも喋れないキャラなので答えることができず

 最終的に親に連絡されて大恥をかいた!」


とカメラの前に向かって語った。

けして筆者の実体験でないことは断っておく。ちがうもん。


エピソードを解釈すると、画面には大きく表示された。



"You Are ROBOT!!!!"



「なんで!?」


『エピソードができすぎています。

 ネットに転がっている黒歴史をあれこれつまんで、

 再構成したようなロボット感を感じました。

 エピソード話す際にあなたの表情変化がとぼしいので、

 よりロボットらしさを際立たせていました』


「クールキャラを演じてた頃の後遺症なんだよ!」


『あなたはロボットですね。間違いありません。』


画面には冷たい言葉が表示された。


まるで自分には人間らしさがない。

「あなたはこういう人だ」と決めつけられた気持ち。


もう診断は終わっているのにイラだちは止まらない。



「誰がロボットだ!! ふざんけんな!!

 ロボットごときに、人間かどうかわかってたまるかぁーー!!」



ブチ切れてサイトを閉じようとしたとき。

画面に紙ふぶきが待ってファンファーレが鳴る。



"You Are HUMAN!!!!"




『驚かせてすみません。これまでのもすべて試験でした』


「……へ?」


『すべてはあなたの感情を引き出すためのものです。

 人間は感情がありますが、ロボットは感情がありません。

 テストにより本物の感情が観測するのが目的だったんです』


「と、ということは……!?」


『これだけ抜き身の感情を出す。

 あなたは人間で間違いありません。

 Welcome to KAKUYOMU。どうぞお楽しみください』


ついにアクセスの扉が開かれた。

これ以上、裸で待機していたら風邪を召し上げるとこだった。


アクセスするとたくさんの作品群が待っている!



「ああ長かった! さあ、たくさん読むぞーー!!」



生まれたままの姿になった人間は、

ロボットが自動筆記するエッチな作品を読んで満足した。



「やっぱりロボットが書く作品はいいなぁ!

 すごく読み手が読みたい部分をわかってくれてる!」

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