リアルモンスターハンター

鷹山トシキ

第1話 昔話

 むかしむかし、西浦和の静かな住宅街に、ごく普通のサラリーマンである佐藤さんが住んでいました。しかし、佐藤さんには誰にも言えない秘密がありました。彼は、突如として街に現れるモンスターと戦う「選ばれし者」だったのです。

​ ある日の夕暮れ時、佐藤さんが会社からの帰り道、西浦和駅のロータリーに異変が起きていました。空間が歪み、そこから不気味な咆哮をあげるグロテスクな姿のモンスターが出現したのです。人々はパニックに陥り、我先にと逃げ惑いました。

​佐藤さんは、すぐに状況を理解しました。彼は人々の避難を促しながら、手に持っていたビジネスバッグをそっと地面に置きました。そして、その中から現れたのは、鈍い銀色に輝く日本刀でした。


 モンスターは、鋭い爪を振り上げ、佐藤さんに襲いかかります。佐藤さんは冷静にその攻撃を受け流し、一瞬の隙を突いて刀を閃かせました。しかし、モンスターの皮膚は想像以上に硬く、佐藤さんの刃は浅い傷をつけるだけに終わりました。

​「くっ…手強いな!」

​ 佐藤さんは、再び刀を構え、モンスターの動きを注意深く観察します。モンスターは、その巨体からは想像できないほどの俊敏さで、次々と攻撃を繰り出してきました。佐藤さんは、狭いロータリーの中で、車の影や看板の裏を使いながら、巧みにモンスターの攻撃をかわしていきます。

​ その戦いの中で、佐藤さんはあることに気づきました。モンスターの攻撃には、一定のパターンがあるのです。そして、そのパターンの中に、わずかながらも隙が存在することを。

​ 佐藤さんは、その隙を狙いました。モンスターが大きく腕を振り上げた瞬間、佐藤さんは地面を蹴り、一気に距離を詰めます。そして、渾身の力を込めて刀を振り下ろしました。

​「これで…終わりだ!」

​ 刀は、モンスターの硬い皮膚を切り裂き、その心臓部に深く突き刺さりました。モンスターは、断末魔の叫びをあげ、その巨体を震わせながら、ゆっくりと崩れ落ちていきました。


 倒されたモンスターは、光の粒子となって消滅し、空間の歪みも元に戻りました。人々は、呆然と立ち尽くしていましたが、やがて佐藤さんに安堵と感謝の視線を送りました。

​ 佐藤さんは、刀を鞘に収め、何事もなかったかのようにビジネスバッグを手に取りました。そして、人々のざわめきを背に、静かに西浦和の街を後にしました。

​ 明日もまた、彼は普通のサラリーマンとして会社に行き、普通の生活を送るでしょう。しかし、西浦和の平和を守るため、彼は今日もまた、密かに刀を研ぎ続けるのです。

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