クラゲと猫の探偵事務所〜戦闘編/タクシー編〜
昼月キオリ
クラゲと猫の探偵事務所〜戦闘編/タクシー編〜
〜紹介〜
<探偵事務所・サイレント>
新宿のバーの地下にある事務所。
<ミシェル>
普段はカフェ。
新月の日だけバーに変わる。
ホームズ君達のカモフラージュの為でもある。
梓(あずさ)(25)
新月の日だけミシェルでバーを経営している。
猫やクラゲ達のお世話係。
盃蕪(さかづきかぶ)(42)
依頼主。
誘拐された夏(なつ)の父親。
盃夏(さかづきなつ)(8)
誘拐された女の子。
<ホームズ君>
自称野良猫のアメリカンショートヘア。
オス。
本名はアッシュ。
自由きままな野良猫だと思っているが梓がいないと生きていけないことに自覚がない。
探偵事務所のリーダーだと思っている。
探偵事務所の中で一番体が大きい。
<ワトソン君>
バーの地下室でのんびり暮らすクラゲ。
元々海にいたが梓に頼んで水槽で飼われることになった。
本名はブルームーン。
水槽の中で一番大きい。
<ちび猫仲間>
ダイヤ。メス。茶トラ猫。
ハート。メス。白猫。
スペード。オス。ハチワレ猫。
クローバー。オス。ボンベイ猫。
<ちびクラゲ仲間>
マリー。赤色のクラゲ。
サン。オレンジ色のクラゲ。
ギムレット。透明のクラゲ。
バイオレット。紫色のクラゲ。
戦闘編
キキィ!!
車(おもちゃ)が5台、ビルの前に止まった。
ダイヤ「着いたわね」
ホームズ「ああ、俺は正面から行く、
なつは四階にいるみたいだな、それ以外はよく分からないから皆んなで手分けして探して欲しい、
ダイヤはクローバーと、ハートはスペードと
それぞれ裏口から行ってくれ」
クローバー「分かったよ」
スペード「今日は2対2に分かれて行くんだね」
ホームズ「ああ、犯人を見かけたらにゃあとひと鳴きしてくれ、
そしたら俺が葉を吹くから俺のところへ犯人を誘導するんだ」
ハート「了解だよぉ〜」
スペード「ハート、行くぞ」
ハート「うん!」
ダイヤ「クローバー君、行くわよ」
クローバー「はーい♪」
ホームズ
ホームズは正面にいた一人をあっという間にやっつけると四階へ向かった。
ビビビッ!
クラゲが猫の頭の上で何かを感知する。
何やら電波を受け取ったらしい。
ワトソン「見張りは二人いるけどなつちゃん無事だよ」
ホームズ「そうか、四階だな?」
ワトソン「そうだよ」
ホームズ「よし、行こう!」
ワトソン「うん」
ハート&スペード
裏口から入った4匹は2対2に分かれた。
ビビビッ!
ハートとスペードの頭の上にいたマリーとギムレットが何かを感知する。
ハート「二階に一人いるの?」
スペード「みたいだな」
ビビビッ!
同時にダイヤとクローバーの頭の上のサンとバイオレットも何を感知したようだ。
ダイヤ「こっちは三階に一人ね、私たちは三階に行きましょう」
クローバー「はい、ダイヤさん!」
ハートとスペードは二階へ。
階段から一番近い部屋から灯りが漏れている。
そこには男が一人、椅子に座りながらカップラーメンを食べていた。
どうやらこの部屋は食堂らしい。
犯人1「ずずっ・・・ん?・・・うわっ!?」
「「にゃあ〜にゃあ〜」」
犯人1「な、何だ、猫か・・・ん?つーか頭に何か乗ってるな、よし、捕まえて売り飛ばそう、金になるかもしれない!」
スペード「好都合だ、行くぞハート」
ハート「え?何が好都合なのぉ?」
スペード「いいから行くぞ!」
ハート「うん、分かったぁ、スペード君がそう言うんなら〜」
犯人1「え!?ね、猫が喋りやがった!?尚更面白い!!」
スペードはハートの速度に合わせて走る。
スペード「にゃあ!」
ホームズ「合図だ」
四階へ向かう途中でホームズが立ち止まる。
咥えていた枝を手に持ち変える。
そして、ホームズ用の黄色のショルダーバックからゴソゴソと何かを取り出した。
葉っぱだ。
そしてその葉を口に当てると勢いよく吹いた。
ピイィ!!
スペード「ホームズの奴、二階の階段のところにいるな、行くぞ」
ハート「うん!」
犯人1「待て〜!!」
犯人1は音に気付いていない。
ハート「ねぇねぇ」
スペード「何だ」
ハート「さっき、どうして好都合って言ったのぉ?」
スペード「ん?ああ、あれは・・・
本来なら俺があいつの腕に噛み付いて怒らせた上で追いかけさせる予定だったからな。
それだとこちら側のリスクが高いだろ?
捕まる可能性もある。
だから、向こうが勝手に追いかけてきてくれれば手間が省ける。」
ハート「なるほどね〜、スペード君ってやっぱり頭いい〜」
スペード「それはどうも」
お前がおバカすぎるだけだけどな、とは言えないスペードであった。
ホームズ「よし、来たな」
犯人1「何だ?もう一匹おかしなのが増えやがった!
ラッキー!!」
ハートがスペードの後ろに隠れ、ホームズが前に出る。
犯人1「まずは一匹、つかまえ・・・」
ホームズ「猫の手パンチ!!」
ベシッ!!
ホームズは犯人の鼻目掛けて強烈な一撃を食らわした。
犯人1「いってぇ〜!!くそっ!!」
犯人は鼻を手で押さえながら手を振り回してきた。
それを紙一重で全て交わすホームズ。
ハート「さっすがホームズ君!」
ハートが目をキラキラさせながらホームズを褒める。
スペード「・・・フン」
顔の見えない位置にいるスペードがムスッとしているのに気付くはずもなく・・・。
ホームズ「両足キック!!」
ホームズの伸びた両足が犯人1のみぞおちにクリーンヒット〜!!
犯人1「ぐあっ・・・」
犯人1はその衝撃で蹲る。
その拍子ににホームズが紐を取り出し、手でスペードに渡す。
紐の先端を口に咥えるとぐるぐると犯人の体の周りへと巻いていく。
ハートがもう片方の紐の端を手でタシッと押さえてくれている。
ある程度巻き終わり、スペードとハートが口で紐をきつく結ぶ。
ぎゅっ、ぎゅっ!
ホームズ「ご苦労」
ハート「やったね!!」
スペード「ああ」
ダイヤ&クローバー
ダイヤとクローバーは三階へ。
階段から少し行った先の部屋から灯りが漏れている。
中を見ると男がぐーぐーとソファの上で昼寝をしていた。
どうやらこの部屋は接待用の部屋らしい。
ダイヤ「ラッキーだわ、クローバー君、ひと鳴きお願いね」
クローバー「はーい、にゃあ!」
犯人2「ぐがっ!?」
「「ビクッ」」
犯人2「ぐがああっ」
クローバー「び、びっくりした・・・」
ダイヤ「それにしても凄いイビキね・・・」
ホームズ「合図だな」
ホームズはそう言って黄色いショルダーバッグから葉っぱをもう一枚取り出した。
そしてまた勢いよく吹く。
ピイィ!!
ダイヤ「あら、合図だわ」
クローバー「でも、どうしよう、犯人寝てるからホームズ君のところにおびき寄せられないです」
ダイヤ「だったら私が見張っているからクローバー君はホームズ君を呼んできてちょうだい」
クローバー「え、でも・・・」
ダイヤの足が僅かに震えている。
クローバーは体にぎゅっと力を入れると目に力を込めた。
クローバー「僕が見張り役やります、だからダイヤさんはホームズ君を呼んで来て下さい」
ダイヤ「クローバー君・・・分かったわ」
タッタッタ!
犯人2「ぐごーぐごー!」
わああ!どうしよどうしよ!犯人起きたらどうしよう〜!
さっきはあんなにカッコ付けたけどやっぱり怖いよ〜!
ホームズ君早く来てー!!
数分後。
ダイヤ「クローバー君、お待たせ」
ホームズ「よくやったぞ・・・っておい、大丈夫か?」
クローバー「こ、怖かったよ・・・」
ヘナヘナとクローバーが座り込む。
ダイヤ「だから私がやるって言ったのに」
クローバー「すみません・・・」
ダイヤ「でも、ありがとう、はい、掴まって」
クローバー「えへへ、ありがとうございます〜」
ダイヤの力を借りてなんとか立ち上がるクローバー。
ホームズ「全く仕方ないな」
ホームズが黄色いショルダーバッグから紐を取り出すと先端を口に咥え、体に巻き付けていく。
もう片方の紐の端をダイヤとクローバーが押さえる。
ホームズ「よしっ!じゃあ、四階へ行くぞ!」
「「了解!!」」
四階。事務室。
夏「・・・」
夏は口をテープで塞がれ、後ろで両手を紐で縛られていた。
床に横になったまま大人しくしている。
犯人3「父親が警察に連絡して金を用意してるらしい」
犯人4「明日の昼には来るそうだな」
犯人3「ああ、金を奪ってこの娘は返す」
犯人4「へへ、その後は海外へとんずらって寸法だ」
ホームズ「お前達は日本を出れんよ」
犯人3「な、誰だ!!」
犯人4「な、何だ、ただの猫じゃん・・・」
犯人3「いや、待てよ、なんか頭に乗せてるぞ!」
犯人4「本当だ・・・おもしれぇじゃん」
犯人3「へへ、売れば金になんじゃね?」
犯人4「違いねーな」
二人がホームズに近付こうとする。
ザッ!!
ホームズ「なつ?」
夏がホームズの前に立つ。
夏は猫が好きでいじめられてしまうと思ったようだ。
犯人3「なんだ、邪魔だよガキ!!」
ブンッと手を振り上げた瞬間、
ダイヤとハートが女の子をトンっと押した。
その衝撃で夏はふらついたがなんとか耐えた。
ホームズ「食らえー!猫の手パーンチ!!」
ホームズのパンチが目にバシッと決まる。
犯人3「いってぇ!何しやがる!」
犯人3が目を押さえたまま拳を振り上げた。
と、その時、スペードとクローバーが犯人4を後ろから両足で勢いよく蹴った。
よろけるくらいの衝撃は加わったようだ。
犯人4「わっ!?バカ、やめ!!ぐわっ!!」
犯人3の拳が見事に犯人4の顎に命中。
そのままノックダウンした。
ようやく目を開けられるようになった犯人3。
犯人3「くそー!猫のくせに!!」
犯人3がホームズ目掛けて足を振りかざす。
その瞬間。
ドスっ!!
犯人3「はう!!!!」
ホームズの頭突きが股間にクリーンヒット〜!!
股間を押さえながら悶絶している。
その隙にホームズが黄色いショルダーバッグから紐を取り出し、二人をひとまとめにしていく。
クローバーが紐の端を口で咥えてぐるぐる巻き付けていく。
ダイヤがもう片方の紐の端を手でタシッと押さえる。
ハートとスペードは夏の紐とテープを取った。
スペード「大丈夫か?」
夏「あ、ありがとう・・・あの、あなた達は一体?」
スペード「探偵さ」
夏「探偵?・・・」
犯人3「く、くそう・・・」
犯人4「・・・」
犯人4は完全に伸びているが、犯人3は脂汗がまだ止まらない。
明け方。
父親が夏と一緒に警察に報告するまで犯人3はうーうー唸り続けていたらしい。
タクシー編
夏「運転手のおじちゃん」
運転手「ん?なんだいお嬢ちゃん、タクシー乗りたいのか?」
夏「うん、でも夏、お金なくて・・・」
運転手「残念だけどね、お金無いとタクシーは乗せれないんだ」
夏「でも、夏帰らないと・・・」
運転手「タクシーはね、ボランティアじゃないんだよ」
その時、ホームズが黄色いショルダーバッグから何やら取り出した。
紺色の手帳のようなものだ。
夏「どうしても?」
運転手「どうしてもダメったらだ・・・」
それを開くとタクシーの運転手に見せた。
運転手「やや!!こ、これは・・・失礼しました!探偵のホームズ様でしたか!
ささ、どうぞお乗りになって下さい!」
夏「え、いいの?わぁい!!」
運転手「ささ、どうぞ」
運転手がニコニコしながら夏を後部座席へ案内する。
運転手「シートベルトはして下さいね!」
夏「はーい!!」
ホームズ「この子達と、あと車(おもちゃ)も5台いいかい?」
運転手「もちろんでございます!」
夏「ねーねー、ホームズ君って凄い人?」
ホームズ「まぁな」
ダイヤ「ホームズ君は東京23区では結構有名なのよ」
ハート「うんうん、タクシーはフリーパスなんだって!」
スペード「こら、子どもに誤解を与えるような言い回しをするな」
クローバー「ちゃーんと梓ちゃんが支払いをしてるんだよ」
夏「梓ちゃん?」
クローバー「僕らの飼い主だよ!」
夏「へぇ〜!その頭の上のクラゲさんも?」
クローバー「そうだよー」
夏「凄いすご〜い!」
ホームズ「フン、俺は飼われてなどない、野良猫だ」
ハート「はいはい、自称野良猫ね」
ホームズ「違う、俺は自由きままな野良猫だ」
ハート「はいはい」
梓「えーと、料金はいくらですか?
子ども一人と、猫とクラゲと車(おもちゃ)と・・・」
運転手「いやー、子ども一人分なんで3540円、手帳ありで半額の1770円です」
梓「そんな、いいんですか?
ありがとうございます、助かります」
運転手「いいえ!こちらこそお役に立てて光栄です!」
梓「ホームズ君、手帳見せたのね?」
ホームズ「使えるもんは使った方がいいだろ」
梓「まぁ、助かるけどね」
ホームズ「なつの父親は?」
梓「事務所で寝てるわよ、
リラックスするようにハーブティーを飲ませたのだけど、
そしたら一気に眠気が来たみたいでね」
ホームズ「娘が誘拐されたってのにか、呑気な奴だな」
梓「私が解決100%だって言ったら安心したみたいなの」
ホームズ「なるほどな」
梓「じゃあ夏ちゃん、パパを起こしに行こうか」
夏「うん!」
梓が夏の手を取り、店に入ろうとする。
ホームズ「なつ」
夏「なぁに?」
ホームズ「さっきはありがとな」
夏「わたし、何もしてないよ?」
ホームズ「いや、犯人が俺の方に向かって来た時、助けようとした」
梓「え!そうなの?怪我は?大丈夫?」
夏「うん!みんなが悪い奴をやっつけてくれたから!」
スペード「全く、無茶をする子だ」
クローバー「冷や冷やしちゃったよね!」
梓「もう、危ないことはダメよ?」
夏「でも・・・なつ、猫好きだから放って置けなかったの」
梓「夏ちゃん・・・」
ホームズ「ま、勇敢だったな」
夏「ゆーかん?」
梓「カッコ良かったって意味だよ」
夏「やったー!いっつも泣き虫ってパパに言われるから嬉しい!」
再会後。別話。
盃が夏を見て涙を流し始めた。
梓「盃さん、大丈夫ですか?」
盃「ああ、すまん、夏が心配だったから・・・」
夏「パパ、なつはもう大丈夫だよ?」
梓「娘さんもそう言ってますよ」
盃「はい、ただ娘は人一倍感性が強くて泣き虫な子で・・・だから余計に心配だったんです」
スペード「いや、そんなことはないぞ」
盃「え?」
ホームズ「なつは勇敢だった」
盃「え?夏が勇敢・・・?」
ホームズ「ああ、まぁ、その話は帰ってゆっくりするんだな」
盃「あ、ああ、そうさせてもらうよ」
ホームズ「じゃあな、なつ」
夏「うん!ホームズ君も皆んなもありがとう!」
夏が元気に手を振るとちび猫達がにゃあと鳴き、
水槽の中のクラゲ達が手足をゆらゆらと動かした。
盃は会釈をすると夏と一緒に帰って行った。
クラゲと猫の探偵事務所〜戦闘編/タクシー編〜 昼月キオリ @bluepiece221b
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