狂疾のアテナ

不明無命

第一話《暗殺ターゲットと旅立ち》

〜クリミナス邸、玉座の間にて〜


グロウ・クリミナス(アテナの父)「我が娘、アテナよ。次のターゲットなのだが、この竜人の男、ドラグ・エスパイアの暗殺を頼む。この男は最強の竜人族と呼ばれていてかなり危険だ」


グロウが一枚の写真をアテナに渡す。それを受け取るアテナ。


アテナ・クリミナス「最強の竜人族ドラグ・エスパイア……分かりましたわ。お父様。それで、今回の任務の場所はどこですの?」

グロウ「『学園都市-エデンズ・グラビティ-』だ……」

アテナ「おっ、お待ち下さい!お父様!そこは、私達の生まれ故郷!その学園都市と私は相性が悪いですわ!この国『クリミナス王国』より、あの国は万有引力が強いんですのよ!?」

グロウ「分かっておる!我々は、あの国に罪を被せられ、そしてあの国に適応出来ぬ者達は皆追放されたのだ!これは、復讐だ……あの国を滅ぼす為に。国王命令だ、許せアテナよ!」

アテナ「承知いたしましたわ、お父さま。ですが、私の速さは使い物にならないと先に言っておきますわ。あと入学手続きをお願いいたします」

グロウ「……うむ、それは当然であるな。親としての最低限の務めは果たさなくてはならぬのでな」

アテナ「では、私はお先に自室に戻らせていただきます」


三日後の夕食後、グロウが口を開く。


グロウ「アテナよ。例の入学試験の事だが、一週間後に決まった。制服代と受験料を合わせて百万GV(ひゃくまんグラビティ)だ。既に手続きは完了している」

アテナ「感謝しますわ。お父様」

グロウ「ははは、親として当然のことだ。そして、付き人にメイドの『シャルロッテ』を連れて行くのだ。幼き頃からのお前の友人だから心強いだろう?」

アテナ「シャルが!?本当に良いんですの?」

グロウ「ああ、シャルロッテが自ら望んでいるのだ。それにターゲットのドラグを殺す為でもある。文句はあるまい?」

アテナ(ターゲットの写真を見ながら)「……ありませんわ。(それにしてもドラグって方、かっこいいですわね。)」


〜一週間後〜


グロウ「遂に試験当日だな。アテナよ」

アテナ「はい。お父様」

グロウ「くれぐれもターゲットのドラグには慎重に近づくのだぞ?噂によると竜化しなくても一般兵士や冒険者を軽く凌駕する強さだという」

アテナ「……気を付けますわ。では、お父様、皆さん!行ってまいりますわ!」

メイド&執事達「行ってらっしゃいませ!アテナ様!」


グロウとそのメイドや執事達に見送られるアテナ。彼女の背後から付いてくる猫の獣人メイドの少女、シャルロッテが声を掛ける。


シャルロッテ「アテナ様!敵国の制服とはいえ、よくお似合いですね!そして私、『シャルロッテ』がアテナ様の『付き人』です!あと、その制服には『重力反転魔法』を施しておきました!」

アテナ「シャルロッテが付き人なら安心して隣を任せられますわ。って重力反転魔法って何ですの!?」

シャルロッテ「ふっふっふ!それは『猫獣人族』の身軽さを応用した私独自の魔法ですにゃ!直径二メートルまでならエデンズ・グラビティの重力の影響を無効化出来ます!あとは、そっとやちょっとでは破れないので安心してくださいにゃ!」

アテナ「なるほど?そしてシャル、語尾が猫に戻ってますわよ?とにかく出発しましょう?」

シャルロッテ「かしこまりました!アテナ様!このシャルロッテ、命を懸けてアテナ様をお守りします!」

アテナ「命は懸けなくてけっこうですわ。とにかく安全第一に!ですわ。正直、私はなるべく殺したくは無いんですの。たとえそれが、お父さまからの依頼、ターゲットだったとしても……」

シャルロッテ「ふふっ。その優しい所は昔から変わりませんね。アテナ様は!」

アテナ「もうっ!さっさと出発しますわよ!ところで、学園都市はどこにありますの?私は、幼い頃に追放された記憶とお父様から聞いた話しか知らないですわ」

シャル(地図を見ながら)「うーんと、場所はグランドロスト大森林の中ですね!その奥のダンジョンの入り口です!森をそのまま突っ切れば着くはずです!」

アテナ「……かなり大雑把ですわね」

シャル「猫獣人族ですので!それにアテナ様と私のスピードなら今日の夕方までには着くかと!」

アテナ「そうですわね。でも試験は今日、試験は一日中やってますの?それに試験内容も分かりませんわ」

シャル(書類を見ながら)「試験は、二十四時間やってるらしいです!夜の十二時までに辿り着かなければ失格です!」

アテナ「そう……試験内容は?」

シャル(キッパリと)「……書いてありません!!」

アテナ「そっ、そんな事あります!?あと何で私に書類を渡さないんですの?」

シャル「それはアテナ様に渡した場合、すぐに紛失させてしまうからですにゃ!物の紛失の早さも狂ってますにゃ!」

アテナ「シャ、シャルのとおりですわ……」

彼女達は雑談を交えながらグランドロスト大森林へと向かうのであった。

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