神人目録
からあげ魔神
第1話 神様
退屈だ。
今俺は目の前にいる死者とその死者の資料に目を通している。
俺はこの天界で様々な世界からやってきた死者を別の世界へ転生させる役割を渡された神だ。
いつも通り割り振られた死者達をどの世界へ転生させ、どのようなオプションをつけるか迷っているところだ。
他の部署では自動で転生させるマシーンが取り入れられているようだが、この部署では今でも古くさい方法で転生先を選別している。
俺は目の前の死者をどの世界へ転生させるか判断した後、死者へもろもろの説明を終えた後、転生させる。
丁度、俺のいるこの空間に鐘の音が響きわたる。
どうやら昼休憩の時間らしい。
俺は背伸びを軽く体をひねる。
そして俺は空間をテレポートする事により自分の家へ帰る。
昼休憩を終えた後は、俺の嫌いな派遣である。
派遣と言うのは、さまざまな世界で度々起きる現象であり、その世界が破滅する原因となりうる可能性を排除する仕事だ。
これを行うことによって本来すぐに破滅するさまざまな世界を長年にわたり、安定して保つことができるのだ。
そして昼休憩を終え、俺は再び仕事を行っていた空間へ、テレポートする。
そこには何柱かの同僚や先輩もいた。
そして同僚の1柱である奴が声をかけてきた。
「お!久しぶりだな!オランクル・デルヘル!」
オランクル・デルヘル、それは俺の名前だ。
そして今、俺に話しかけてきた同僚はアルメヒ・メルグである。
そして俺達はこの部署にいつまでたっても自動転生マシーンが来ない愚痴をこぼし会う。
そうしていると虚空からそれぞれの派遣される世界などの情報が細かく書かれた資料を見る。
そして俺達は、お互いに挨拶を交わし、テレポートされる。
テレポートされたのは上空10km辺りであった。
そこから俺は翼を使い目的地点へ向かう。
俺がテレポートされたのは今までに聞いたこともない番号の世界だった。
どうやら目的地は周辺に人工物もないような森の中らしい。
そして目的地の手前で着地する。
そこから少し歩いていくと段々空気が重くなっていくのを感じる。
やがて黒いオーラをまとっている何かが目視できた。
そのなにかはこちらに気づいたと思ったら突然触手のようなもので俺に襲いかかってきた。
俺はその触手を軽々と避けて触手を切り落とそうと剣を顕現させる。
そして俺の剣が触手に触れた瞬間、パリンっというような、まるでガラスが割れたかのような音を立ててくだけ散った。
それを見た俺は直感でこの触手に触れたらまずいとわかった。
そして次に俺は弓と矢を顕現させ本体であろう黒いオーラの中心に向けて矢を放つ。
すると黒いオーラを突き抜けた。
やがてその矢は木に刺さる。
俺は他の方法も試そうと思ったが、回りに人工物や人がいないからと言って、高出力の攻撃を放てばこの世界に大きな痕跡を残してしまう。
本来、神と言うのは人々にバレては行けないと言う暗黙のルールが天界ではあるためである。
だからといって、このまま逃げ帰るのも違う気がする。
そのような攻防を続けていると、気配がした。
どうやら先ほどからの戦闘の衝撃音で近くまで来ていた人間がこちらまで来てしまったようだ。
俺がそう考えていると、その黒いオーラをまとっている何かはその人間に向けて触手を放つ。
俺は急いでその人間を突き飛ばすことによって触手から逃す。
しかしその触手に俺は捕まってしまった。
もう何本かがさらに俺の体に巻き付き身動きが取れなくなる。
すると俺の体から何かが抜けていくような感覚がした。
俺は咄嗟に権能の1つを使い、光のエネルギーのようなものを生成し、自分を中心に高出力の爆発を引き起こした。
俺の攻撃によって黒いオーラをまとっていた何かは消えていた。
さっきまでいた人間もどうやらさっきのは何かを見て逃げたお陰で爆発には巻き込まれていないだろう。
そして俺は天界に帰るはずだった。
天界に帰るには、神の持っている権能をすべて解放する。
すると世界はそのイレギュラーな存在を弾こうとするため結果、天界へ戻ることができると言った感じだ。
しかし今の俺は、先程の触手に触れたせいで権能がほとんど破壊されてしまったせいで、世界にイレギュラーな存在と認識させることができなくなり、天界に帰ることができなくなってしまった。
なるほど、確かに神の権能を破壊できるほどの能力を持っているなら、世界の脅威として、派遣させられるのも納得できる。
俺が今使える権能は、光のエネルギーを操る権能のみとなってしまった。
これからの生活をどうすればいいのか途方にくれる。
やがて俺は歩き始めた。
ただ呆然としていてもなにも変わらないゆえに目的もなく歩いているのだ。
しかしこの世界はどのような世界なのだろう。
初めて派遣された世界であるがためにどのような世界で、今いるのはどこなのかもわからない。
そしてやがて俺は丁度いい木陰のある場所で座り込む。
上空から飛んで回りを見るにも、翼の権能を破壊されたため使えない。
俺がため息をつき空を眺めている。
「こんなところで何をしているんだ?」
そのように俺へ質問を投げ掛ける声が聞こえる方向へ視線を向ける。
そこには、人間でいうところ、二十歳後半と言った具合の容姿をした女がいた。
俺は答える。
「特になにも、ただの一文無しの放浪者だよ」
そして俺はその女に問いを投げる。
「なぁあんた」
「こんなことを聞くのも何だが、天界に行く方法とかって知ってたりするか?」
そういうとその女は少し笑った後に言う。
「いきなりなにかと思ったら馬鹿げた話しだね」
そのようにいいながら俺の近くまでやってきて座り込む。
「天界に行く方法なんて神様くらいしか知らないんじゃないかな?」
俺はそれに無言で返す。
するとその女は言う。
「そういえば君は見ない格好をしているな」
「見たところ魔法の輪もつけてないようだが」
その言葉に俺は言う。
「魔法?」
するとその女は少し驚いたように言う。
「魔法を知らないのか?」
俺はコクりと縦に首をふる。
すると女は言う。
「驚いたよ、まさかこの時代に魔法を知らない奴がいたなんて」
そしてその女は、立ち上がり言う。
「こんなとこで話すのも何だし、私のテントまで来るか?」
その言葉に俺は立ち上がりながら言う。
「特にすることもないし行こうかな」
そして俺はその女の後ろをついて行くのだった。
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