月冴ゆる
@Strawberry_TRPG
通常任務
――遠くから悲鳴と、嗤い声が近づいてくる…。
「どぉーん!!」
そんな掛け声と共に扉が破壊されると、薄暗かった部屋に光が差し込む。
部屋には、入口付近で愉しそうにしている少女と、中央付近にへたり込む小太りの中年男性。
「あはっ 追いつかれちゃったね? 」
「鬼ごっこはもうオシマイ?次は何してくれるの?」
へたりこんだ男に目線を合わせるように、かがみながらそう聞く。
「くっ、来るな!!」
男は震える手で拳銃を撃つも、それは軽々と避けられてしまう。
「……ん〜、ホントにもうお終い?……つまんないなぁ、期待してたのに。」
「つまらないオモチャはいらない。」
と先程までの愉しそうに対象を見つめていた瞳は、ゴミでも見るかのような瞳に変わっていた。
「…ッひっ、」
男は小さく悲鳴をあげ、部屋の隅に這って距離を取ろうとする。
そんな男性に少女は、一歩ずつ距離を詰める。
逃げ場なんてない、そう悟らせるために、わざとゆっくりと。
「あははっそんな距離で逃げられるわけないじゃ〜ん」
「それともその程度でボクから逃げられるとでも思ってるの?」
「ま、なんでもいっか。どうせもうサヨナラだし」
「最後くらいは、楽しませてくれるよね?」
といい刀を持つ左手を振り上げる。
直後に、ゴトリ…と音がして男――"対象"の腕が床に落ちる。
当の本人は、何が起こったか理解できないといった様子で呆然としていた。
数泊の後、よくやく痛みで自身の腕が"ない"事に気がつく。
途端、断末魔の叫びをあげる。
少女は切り口からどろどろと流れ落ちる血をみて
「…これなら大丈夫かなっ♪」
そう呟きながら縄を取り出し、慣れきった手つきで対象を縛り上げていく。
「……た、すけ…」
対象が掠れた声で唸る。
「あはっざんねんでした〜っ!助けなんてこないよ? キミはここでゲームオーバー。」
「来世にご期待くださ〜い♪」
そんな言葉に煽るように少女は、対象の顔の前でひらひらと手を振る。
*
__天井に縄で吊るされ、人…だったものから恐らく最後であろう血が落ちる。
少女は、全てが落ち切るその瞬間まで恍惚とした表情でその様子を見つめていた。
「…さてっ、ミッションかんりょっ〜!」
スカートをはたきながら、少女が立ち上がる。
「あー、あー。…こちらウツタヒメ、完了しましたー!」
少女は耳につけた通信機器でどこかへと連絡をする。
「…え〜?服?……あー、真っ赤だけど?」
通信相手から質問されたのであろう、身につけた服の状態を答える。
少女の服は血を被り、ほぼ真っ赤であった。
「……血が落ちにくいのは知ってるよ〜?でも人殺すんなら血付けないのは難しくな〜い?」
少し拗ねたように通信相手にそう宣う。
「あっははー…ごめんなさ〜いっ イゴキヲツケマース」
棒読みで反省の言葉を言いながら、少女は通信を終わらせる。
建物から出ていこうとしていた少女は、何かに気がつく。
「…あれっ? まだ、いたんだ?」
部屋の隅に積まれた木箱に話しかけた。
木箱の後ろにいるものが出てくる気配がないことを悟ると、少女は木箱に近づき、後ろを覗き込む。
「み〜つっけたっ!隠れん坊も、オシマイね?」
「あ、でももうロープないんだよね〜。残念だったね。」
「じゃ、オヤスミ。」
直後にはボトッと音をたて、首が部屋に転がる。
少女は転がる首を一瞥し、もう興味なんてない、と言わんばかりに部屋を出ていく。
「そういえば今日、新作の試作作るってびと言ってたっけ」
「味見してあげなきゃねっ♪」
少女は先程のことなんて忘れてしまったかのように楽しそうに笑いながら、その場を後にした。
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