便利なシステムの話なのに、読み終わってみて心に残ったのは“人の温度”でした。春木の静かな情熱も素敵なのですが、私は川嶋さんの「遅いけど優しい」という空気感にすごく惹かれました。効率を追いかける物語ではなく、“余裕が生まれると人は笑えるんだ”と気づかせてくれる作品だと思います。アミナの存在もやわらかくて、音や言葉の工夫が少しずつ町を変えていく流れにじんわりしました。
特に好きだったのは、「並ばない」のに“賑わい”を感じる描写です。静かなのに活気がある商店街の空気が、読んでいるこちらの呼吸までゆっくりにしてくれる感じがしました。派手な展開ではなく、人と人の距離が少しずつ近づいていく物語が好きな方には、ぜひ読んでほしいです。