第24話 ギルドの闇

「は?」


 クロウドは、リードリックの言葉に顎を落としそうな勢いでアングリと口を開けて固まった。


「まぁ、だいたい予想通りの反応で良かったよ」

「いやいやいや! なにも良くねぇよ! なんだよ反乱の予兆って!!」


 あまりにも気楽なリードリックに、クロウドは歯をむき出しに立ち上がると、目の前のテーブルを両手を強く叩く。


「うんうん、わかってるから落ち着いて」


 リードリックはクロウドを落ち着かせようと、両手を前に出すと座るようにと促す。

 一方、ニーナクックは顎に手を当てて、何かを考えているのか無言のままだ。

 その彼女が考えがまとまったようで、リードリックを見て口を開いた。


「もしかして……ナルバナですか?」

「ほぉ! 流石ニーナだな。 何故そう思ったんだ?」


 ニーナクックは北東に位置する隣国の名前を口にした。

 それを感心するように、リードリックは驚きで返す。


「いえ、ただちょっと……噂ですが、ここ最近街道にワイバーンの姿を見たという話しを聞きましたので……」

「それだけで? やっぱすごいよ君の感は」

「感というか……そもそもワイバーンなんてこの国に居ませんから……たとえ噂でも、その名前が出る事自体があり得ませんので」

「なるほどな! うん、ご名答! まぁもちろんそれだけじゃ無いし、まだ確定するほどの情報は揃っていない。 それでもだ……君の言う通りにワイバーン情報が切っ掛けだ」

「ちょっとまってくれ、ワイバーン目撃情報ってなんだ? それにそれだけでナルバナが出て来るんだ? そもそもそのナルバナが反乱の話しに?」


 二人の会話について行けなかったクロウドが、困った顔で二人にそう質問すると、二人は顔を見合わせてクスリと笑う。


「まぁ、クロウドにはずっとそのままでいて欲しいよ」

「いえ、もう少ししっかりして頂かないと私が困ります」


 そんな風に、相反する感想を二人に言われてむっすりとするクロウドに、ニーナクックが仕方なさそうに説明を始めた。


「クロウド様、ちゃんと聞いて下さいね?」

「あ、ああ」


 まるで子供に教える教師のように、上から目線の口調になるニーナクックに少しムッとしたが、機嫌を悪くされて説明されないのも困るので、クロウドは素直に返事をした。


「よろしい、では説明致します」


 そう言って語った、ニーナクックの話しを纏めると、下記の通りになる。

 一つ、ワイバーンと言う魔物の名前は、この辺りで知る者は少ない。

 にも関わらずに目撃情報があると言う事は、ワイバーンを知ってる誰かが実際に見た可能性が高い。

 一つ、近隣で最も近い、野生のワイバーンの生息地は、国を三つ以上跨いだずっと西の方だけなので、野生のワイバーンがこの辺りに出没する可能性はほぼ無い。

 一つ、野生でなければ隣国のナルバナが、その方法は不明だが飼い慣らす事に成功しており、少数だがワイバーンによる竜騎兵団を持っている事。

 これら三つの状況から、国内にワイバーンが入ってる事はほぼ間違い無く、しかも目撃情報で済んでる時点で、きっちり管理されたワイバーンで有る可能性が濃厚。

 以上の事から、ナルバナがワイバーンを国内に密入国させて何かを企んでる事が予想できる。

 との事だ。


「なるほど……だけど、それがどう反乱と結びつくんだ?」

「リードリック様が、反乱の予兆があると申されましたので、単純に他国の扇動の可能性を一つとして予想した場合に、ワイバーンの話しを結び付けただけです」

「まぁもちろん、俺はそれ以外の調べた情報から、そう言う結論に至ったんだがな」

「そうなのか?」


 二人の話しに、やっと理解が追い付いたクロウドは、最後にリードリックの情報が気になった。


「ああ……問題はな、この街の冒険者ギルドに……ナルバナから最近異常な人数のギルド員が移動してきてる事なんだよ」

「……まさか、ギルドが何かやってると?」


 クロウドは息を呑む。

 その姿を確認してから、リードリックはしっかりと頷いた。





「ロックお姉ちゃん!」


 ルールレイは、ロックアックの部屋の扉も、遠慮なく全開にして中に飛び込んだ。


「あれ? ロックお姉ちゃんもいない?」


 そう思った瞬間、突然後ろから羽交い絞めにされる。


「きゃ! ロックお姉ちゃん?!」

「やぁ、久しぶりだねルール」


 そう言ってロックアックは、ほんの少しだけ背が高いだけなのに、軽々とルールレイを持ち上げて、ベッドに座る。

 傍から見ると、ベッドに座った少女が自分の背丈に近い人形を、ぎゅっと抱きしめてるようにしか見えない態勢だ。


「ちょっと! お姉ちゃん離してよ!」

「だめ! 今ルール成分補給してるから」

「きゃ! ちょっと背中がくすぐったい!」


 ロックアックはルールレイを抱きしめたまま、背中に顔を埋めて深呼吸をしだした。


「もう! いい加減にして! くすぐったいんだって!」


 もぞもぞと必死に、その拘束から逃れようとするルールレイに、それを離すまいとするロックアックの仁義なき戦いが……いや、そんな大げさな物ではないが、互いの抵抗が拮抗して、結局逃れられないままにロックアックが満足するまで、ルールレイは抱きかかえられ続けた。


「うん、満足」


 そう言って解放された頃には、ルールレイは完全にぐったりとして、その場に倒れ込んだ。


「ルール、床に寝ちゃだめだよ? ベッドに寝かせてあげるね?」


 そういうと、自分の責でぐっだりしてるルールレイをもう一度抱え上げると、そのままベッドに寝かせた。


「……もうちょっと抱きしめてもいいかな?」


 自分のベッドに、横になってる姿に欲情したロックアックは、紅潮した顔でそのまま覆いかぶさろうとしたところを、ルールレイに鼻を摘ままれて阻止される。


「もうやめて……嫌いになっちゃうよ?」

「それはやだなぁ……仕方ない諦めるよ」


 そ言って、ロックアックはベッドの上から降りて、そばにあった椅子に座った。

 ルールレイも、乱れた服を直しながらベッドに座る。


「んで、珍しいね? 平日にクランハウスに帰ってくるなんて」

「……先生達が2週間程休みだって、それでね……」


 いつも元気なルールレイも、流石に今の攻防では体力を消耗したみたいで、声も元気無く簡潔に答えた。


「ふむふむ、じゃ二週間はクランハウスにいるんだね! それは上々」

「……次、同じような事してきたら、暫く会話しないからね」

「……っち」

「舌打ちした! 今舌打ちしたよね! もう出てく!」

「ごめん、ごめん! 冗談だって。 もう十分ルール成分は接種したので暫くは大丈夫だよ?」

「ほんとだよ?」

「ほんとだって!」

「うーっ、信じるからね?」

「うん!」


 あんまり信用しきれていない顔で、ルールレイはロックアックの言葉を受け入れた。


「んで、何か聞きたい事が有ったんじゃないの?」

「あ、そうだ! 父! 私の父しらない?」

「乳……確かにな」


 バコーン!

 ルールレイは、その言葉を全部言わせる前に、どこに持っていたのか蛇腹折りにした分厚い紙で、ロックアックの頭を思いっきり叩いた。


「殴るよ!」

「す、既に殴られてます……」


 意外に相当痛かったのか、ロックアックは頭を押さえて蹲る。


「で? 父しらない?」

「いててて、ゴードンね……全員一致でクランから追い出したよ」

「へ?」

「ん? 聞こえなかった? ゴードン、クランをクビになったから出ていったよ?」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」





「あのぉ……ゴードンさん……あれ……」


 今まさに、カランブスの街が見えたと言うところで、セバスタが後ろを指さして顔を青くした。


「あ? なんだよあれって」


 そう言って俺が振り返ると、少し離れた所に被膜状の翼を持った鳥が見えた。


「ん? 鳥?」

「鳥にしてはデカ過ぎだと思うんですけど……」


 今にも震え出しそうな程、緊張した声でそんな事を言うセバスタの言葉に、俺はもう一度目を凝らして、その鳥を凝視する。


「……」

「……」


 二人共無言になって、その鳥を凝視する。

 凝視したまま、二人とも顔が青くなっていくのが誰の目にも明らかだった。


「「ワイバーンだ!!」」


 二人してそう叫ぶと、セバスタはその場で腰を落としたが、俺は慌てて風の魔石に魔力を全力で流す。


「くそ! 速度が上がらねぇ!」


 この、空飛ぶ魔道具の性質なのか、風の魔石にどんなに魔力を流しても、なかなか速度が上がっていかない事に、俺は焦ってアイテムボックスに手を突っ込む。


「だめだ! 今ここで無理に色々出したら落ちてく! ど、そうすれば」


 そう思って後ろを振り向くと、ワイバーンはかなり近くまで迫っていた。


「うそだろぉぉ! セバスタ、お前疫病神か!」

「なんで僕のせいになるんですか! ゴードンさんを狙ってるかもしれないでしょ!」

「いや、お前だ! きっとお前を狙ってるんだ!」


 二人して、無意味な責任の擦り付け合いをしている間に、ワイバーンはもう目の前まで迫ってくる。


「くそ!」


 俺は、アイテムボックスにもう一度手を突っ込むと、最初に手に触った何かの持ちてを持って、それを出すとそのままワイバーンに向けて投げる。

 それは丁度、街を出る前に一度アイテムボックスから出して確認した、材質の分からない剣だったようで、キィィィンと甲高い音を立てて、ワイバーンに向かって飛んで行く。


「あたれぇぇぇ!」


 俺は天に祈る気持ちで叫ぶと、その剣の軌跡を目で追った。

 ひょい

 そんな軽い音が聞こえそうなほど、ワイバーンは余裕でその剣をよけた。

 そして、剣は放物線を描いて落ちて行った……。


「やくたたずぅぅ!!」

「いや、ゴードンさんの腕が下手だからでしょ!」

「なんだと!」


 またしょうも無い喧嘩を始めようとした時、ワイバーンはついに追いついて、上部の膨らんだ布袋の上に消えた。


「……もしかして、俺達を追ってたんじゃなかった?」

「こ、怖かったです!」


 そう、一瞬安心した瞬間、ビリリと布を何かが切り裂く音がして、乗ってる籠がガクンと揺れる。


「穴を開けやがったぁぁぁぁ……」


 そのゴードンの叫びと共に、その空飛ぶ魔道具がランダムな軌跡を残して森の中へ落ちていった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

こんにちは!猫電話ねこてるです!

本日の第24話パンツァー公開です!


昨日よりは早くできたかな? ふー(;^_^A

ゴードン(主役)の知らない所で物語りが進行中w

どうするゴードン! 逃げるなゴードン! あ、墜落してたっけ……生きてる?w


そんな訳で(どんな訳やん!)

次回もパンツァーでまたお会い致しましょう!

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