第15話 ノーベル賞候補
「あなた、また静香さんのところに行っていらっしゃるのでしょう?」
「そんなにいやだったら離婚しても構わないんだよ。こっちだって可愛い娘江梨香を虐待されて。腹に据えかねているのだから……」
「それはあなたが静香さんと続いていると思ったからよ。元彼女と会っていれば勘ぐられても仕方ないでしょう。私お父様に言いつけてやるから……」
「好きなようにしたらいいじゃないか?」
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「お父様恭介が浮気して私耐えられないの。何とか言って!うううぅ( ノД`)シクシク…」
「可愛い娘にあんまりだ。わしもそれとなく恭介君に注意しておく!全くどうしようもない男だ💢💢💢」
恭介はもう現役を引退したので、今までのような訳にはいかないと少し義父の聡を見くびっている。いくら現役を引退したと言えども、病院長時代の研究成果や論文発表は、その後の医療に多大な影響を与える。更には退職後も医療政策提言や学会活動など、医療界への貢献を続けることで、影響力を持ち続けているのだ。また若手医師の育成や講演活動などを通じて、後進に知識を伝えることで権威を保っているのだ。
ましてや 医療問題に対する専門家としてメディアにもちょくちょく顔を出している義父聡の権威は、現役時代ほどの影響力はなくなったと言えども、現在も医療界に多大な影響を与えている。
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夫婦仲が完全に冷え切っている恭介だったが、朗報が届く。2025年遂にノーベル賞候補に挙がったのだ。
チームは、哺乳類の視床下部にある「Ppp1r17神経細胞」に注目した。遺伝子操作でこの神経細胞の働きを強化したところ、何も操作しなかったマウスより寿命が7~8%延びた。運動量も通常の1・5~2倍に増加したという。
この神経細胞は脂肪細胞を刺激し、老化を抑える働きがある「 eNAMPTイーナムピーティー 」という酵素を分泌させる。加齢とともにこの神経細胞の働きが衰え、老化が進むと考えられるという。
研究チームは、2016年すでに哺乳類の視床下部にある神経細胞が、老化の制御に関わっていることを発見した。この神経細胞を操作することで、マウスの老化を遅らせ、寿命を最大8%延長させることに成功していた。
更に研究チームは、老化を抑える働きを持つ脳内の神経細胞をヒト実験で特定し、この神経細胞を操作することで老化を遅らせ、寿命を延ばすことに成功したと2018年1月に発表した。
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2025年遂に恭介はノーベル賞候補に選出された。ノーベル賞の候補者は、世界中の限られた推薦者から推薦される。推薦者は過去の受賞者や選ばれた大学教授など、ごく一部の人に限られている。推薦された候補者は、各賞約300人ほどだが、最終的に受賞できるのは最大でも3人と、非常に狭き門だ。候補者は段階的に絞り込まれ、最終選考は授賞日当日に行われることが通例となっている。
ノーベル賞は、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学の6分野で人類に最も貢献した人物に贈られる、世界で最も権威ある賞だ。受賞者の選考には、丸1年をかける厳正なプロセスが待っている。
まず、ノーベル賞受賞者や選ばれた大学教授など、限られた人たちが推薦者となり候補者を挙げる。候補者は各賞約300人程度。集められた候補者は、4月頃までに約20人に絞り込まれる。 さらに5月には各賞5人程度まで絞り込まれる。最終的に10月上旬に授与委員会で投票が行われ、受賞者が決定・発表される。
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ノーベル賞まであと一歩となった恭介は天にも昇る思いだが、ここで問題が発生。美琴は夫が静香のところに入り浸りなのが許せない。そこで手厳しいお仕置きを考えた。
父聡と共謀して愛人静香と縁を切らせることだ。
それはノーベル賞を取った婿が、どんなに逃げ出したくても逃げ出せない最終兵器をエサに、がんじがらめにしようと策を練った。恭介の研究時に起こったおぞましい事件。研究経緯で人命が失われた事実をエサに、名誉あるノーベル賞受賞者神宮寺の婿養子として永久に逃げ出せないようにすることだった。
神宮寺家にとっても婿がノーベル賞を授与されたら、これほど名誉で誇らしい事はない。どんなことをしても離婚などと言う不名誉な選択肢はない。
「君研究成果は上出来だったが、それまでに多くの施設の子供たちを犠牲にしたことで研究成果が出たことを、娘の美琴から聞いている。女に狂い美琴を捨てようなど浅はかな真似は止めたまえ。そんなことをしたら自分の首を自分で絞めるようなものだ。分かっているね!君がこの家から出て行けばどういう事になるかという事を……美琴から事実を聞かされた時は心臓が止まるかと思った。仮にも人を救う医師たるものが何という非人道的なことが出来たものだな。到底許されぬ行為!💢💢💢もし事実を表沙汰にしたらノーベル賞など夢のまた夢。一生刑務所暮らしだ。わーっはっはっは!だが、仮にも娘婿となったのだから、黙っておいてやる代わりに、娘を絶対捨てるようなことはしないでおくれ。そうすれば君は多分ノーベル賞を受け取ることが出来るだろう。5月で各賞5人に絞り込まれ、その中の1人だからなあ。もし表沙汰にされたくなかったら、江梨香の母と縁を切って美琴を大切にしてくれ。分かったね!」
(美しく魅力的で美琴よりも4つも若い優秀な静香と別れるのは辛いが、ノーベル賞は俺の心に今も重くのしかかり、くすぶり続ける誰にも知られたくない「汚れた血」を払拭できる唯一の方法だ。ノーベル賞を取ることでやっと今までの途方も知れないコンプレックスや苦しみを捨て去ることが出来る。「エタ」がどれだけ高貴な人間の発案だったとしても、何の根拠もない民衆がやり玉に挙げた、只の妄想、幻覚に過ぎない。ノーベル賞の名のもとに「エタ」など何の意味も持たない。今そのノーベル賞を逃したら俺はまた「汚れた血」の呪縛に永遠に捕われ、重い十字架を背負って行かなければいけない。たとえ有能な医師であってもその呪縛から逃れることは出来ない。それを払拭するためには、何が何でもノーベル賞を取る!)
「お父様お許し下さい。僕は家に戻ります」
こうして…静香と別れ家に戻った恭介だったが、静香はやっと3人の温かい家庭が築けると思った矢先に2人を失い失意のどん底にいる。
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現在NMNとして研究や製品化されているのは主にβ-NMNである。生体内でNAD+という物質に変換され、若々しさや健康維持に役立つと考えられている。
マウス実験からの進展 NMNの研究は、マウス実験において顕著な抗老化作用が示されていたが、ヒトへの臨床試験は最近始まったばかりだが、特に、2016年には日本のK大学と米国某大学が共同でヒトへのNMNの安全性確認のための臨床研究を開始し、安全に投与できることが確認されたのは大きな一歩とされている。
2016年からK大学と米国某大学の研究グループは、NMNがヒトに安全に投与できるかを調べる臨床研究を行った。この研究では、40歳から60歳の健康な男性10名を対象に、100mg、250mg、500mgと異なる量のNMNを経口で単回投与し、その影響を評価した。
だが、ここまで辿り着くプロセスには、恭介のたゆまぬ臨床成果があっての事なのだ。臨床研究を開始し、安全に投与できることが確認された背景には恭介が密かに進めた研究成果が実を結んだ結果だった。
α-NMNが多く混入していると、期待される効果が得られない。
酵素法や発酵法でNMNを合成する場合、β-NMNが主に生成されるが、化学合成ではα-NMNも生成されやすくなる。
NMNの精製技術によっては、α-NMNとβ-NMNを完全に分離しきれない場合がある。特に高純度を謳う製品でも、微量のα-NMNが残存する可能性がある。α-NMNはβ-NMNと分子構造が非常に似ているため、通常の分析方法では検出が難しい。これにより、α-NMNが混入していても見過ごされてしまう可能性も考えられる。
α-NMNの生体内での作用や安全性に関する研究はまだ十分ではない。そのため、α-NMNを摂取した場合に、予期せぬ副作用や健康への影響が生じる可能性が考えられる。
この様な臨床研究を愛人である静香の育った施設の子供を利用して、NMN臨床試験を行った結果1名の人命が奪われる事態が発生していた。
マウス実験ではある程度の成果は出ていたが、ことヒトを使っての臨床試験は熾烈を極めた。
100mg、250mg、500mgと異なる量のNMNを経口で単回投与までのプロセスには甚大なる時間と労力とヒトの健康被害が立証され、そのたびに挫折を味わった。
α-NMNの生体内での作用や安全性に関する研究はまだ十分ではない。そのため、α-NMNを摂取した場合に、予期せぬ副作用や健康への影響が生じる可能性が考えられる。
この様な臨床研究を愛人である静香の育った施設の子供を利用して、NMN臨床試験を行った結果1名の人命が奪われる事態が発生していた。
(私を利用するだけ利用して許せない!)
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