第4話 初めて届いた「ありがとう」の言葉——書くことが救いになった夜

休職中、私は毎日少しずつ、心に浮かんだことを言葉にしてSNSに投稿していた。

フォロワーはほとんどいない。

でも、誰か一人でも読んでくれたら、それでいいと思っていた。


「時には休んでいい。立ち止まってもいい。」


「ちゃんと生きるって、誰かの期待に応えることじゃなくて、

自分に素直でいることなんだと思う。」


「今日も、自分を大切にできる一日に。」


そんな当たり前のことを書くだけでも、少し心が軽くなる気がした。

書くことは、私にとって“心の呼吸”みたいなものだった。


ある日、そんな私に一通のメッセージが届いた。

「あなたの言葉に救われました。もう少し、生きてみようと思えました。」

その瞬間、心臓がドクンと鳴った。

スマホの画面を見つめたまま、涙が止まらなかった。


信じられなかった。

あんなに苦しくて、誰にも必要とされていないと思っていた私の言葉が、

 

誰かの心に届いていたなんて。


思えば、鬱で苦しんでいた日々、

Y先輩の「頼れるもんは頼れ」という言葉、

Sさん、ひすいこたろうさんから教わった「今の幸せに気づくこと」——

あの全部が、きっとこの瞬間のためにあったんだ。


あの時、私が味わった痛みも、絶望も、全部無駄じゃなかった。

自分の痛みは、誰かの希望に変えられる。

そう思えた瞬間、初めて“過去の自分”を許せた気がした。


その夜、私は心に誓った。

これからも書いていこう、と。

同じように苦しんでいる誰かに、「大丈夫だよ」と伝えるために。

もう一度、生きてみようと思える人が、ひとりでも増えるように。


私はエッセイストになる。

過去の自分を救うように、誰かの心を救うために。


休職はもうすぐ終わる。

けれど私の中では、“新しい仕事”が始まっていた。

それは、書くことを通して人の心を灯す仕事。


あの日、退職代行のボタンに指を伸ばしかけた私が、

今はキーボードを叩いて、誰かに希望を届けている。


——ほとんど嘘みたいだけど、本当に起きた、私の人生の奇跡だ。

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