❤️と💙は天を見る。

夜桜🎐

第1話 彩雲高等学校の4人

付き人ー神に仕え人々を演技で魅了する選ばれし存在、アイドルのような存在。彼等は厳しい練習生期間を経て就任試験に挑み、受かった者だけが晴れ舞台に立つ。限り無く狭き門で、合格するだけで奇跡である。彩雲高等学校は、関西の付き人養成専門の高校であり、定員は僅か60人。倍率は毎年5倍近く、全国から志願者が集まる。そんな彩雲高等学校に合格した新入生が2人。同じクラスの『東宮葵』と『紅月夕夜』。青い髪に青い目の東宮葵と、臙脂色の髪に黄色い目の紅月夕夜。性格も正反対、でも目標は同じ。彼等は、ライバルで、同士だった。


今日は入学式。東宮葵は、在校生の姉を見つけて小さく手を振った。ギリギリ合格しただろうから、どん底からのスタートになるだろう。出席番号順に並ぶと、カチカチに緊張する。

「新入生代表答辞、山中遥斗。」

首席で入学した生徒は、自分と同じクラスらしい。何か凄く出遅れた感。入学式が終われば各クラスに移動し、初顔合わせがある。今年入学した1年生は54人、コースごとにクラスが分けられている。僕のクラスは8人で、担任はのんびりしたおじいちゃんだった。

「宇羽結翔(ゆいと)です。」「東宮葵(あおい)です。」「紅月夕夜(ゆうや)です。」「松木弘人(ひろと)です。」「浮川瑛(あきら)です。」「山中遥斗(はると)です。」「黒川雪都(ゆきと)です。」「水沢万智(まち)です。」自己紹介を終わらせ、席に座る。

「皆さん、入学おめでとう。この学校では、基礎教育の他に付き人用の特殊教科が入る。科目が増えて大変だと思うが、筆記、実技共に精進するように。量の部屋割りは掲示しておくから、確認しておくように。」おじいちゃん先生の言葉が終わり、早速寮へ移動になった。

「…4人部屋か…緊張するなあ。」

ボストンバッグを抱え、クラスの人達に紛れて移動する。寮は西寮で、部屋は2階。ルームメイトは、宇羽結翔、紅月夕夜、松木弘人。2段ベッドが2つ、勉強机が4つ、壁には大きな収納庫。結構豪華な部屋だ。荷物をそれぞれに割り振られた場所に片付け、向き合った。

宇「…自己紹介します?」

松「…しないと始まらないしな。」

宇「じゃあ、俺から。宇羽結翔(うわゆいと)です。出身は愛媛県四国中央市土居町。付き人練習生は6歳からです。うーん、趣味は人間観察かな、よろしくお願いします。」

この人は、何故か人生3週目くらいの人に見えた。目が死んでいた。

紅「紅月夕夜(こうづきゆうや)です。神戸出身、5歳から付き人練習生です。…趣味は特に無いです。よろしくお願いします。」

確か、この人は上位成績で入学したはずだ。

東「えっと…東宮葵(とうぐうあおい)です。広島県福山市出身です。元はアイドル練習生です。付き人練習生は、13歳からです。趣味は、音楽を聴く事です。よろしくお願いします。」緊張しすぎて顔が真っ赤になる。凄く暑い。

松「松木弘人(まつぎひろと)です。福岡県福岡市出身です。付き人練習生は6歳からで、趣味は読者です。よろしくお願いします。」

背が高い人だ。170はあるかな?

自己紹介を終え、各々質問大会を始めた。

宇「筆記の成績自信ある?」

松「…それなりに?まあ、半分以下にはならないと思うぞ。」

宇「俺も同じくらいだよ。20位台くらいかな。」

東「…皆、頭良いんだね。僕なんか良くて35位だよ。」

結翔と弘人が思った以上に賢くて恥ずかしい。結翔と弘人が話し続ける隣で、ひたすら黙っている夕夜。気になって声をかけると、遠い目で呟いた。

紅「…筆記は、40位以下だった。」

東「…頭悪いんだね。」

紅「はっ倒すぞお前。」

驚きすぎて本音がポロッと出てきた。恨めしそうな目で睨まれ、慌てて口を閉じる。

宇「まだ良いじゃん。うちの幼馴染なんか、最下位争いするレベルだよ。…はー、マジで高校入試対策疲れた。」

幼馴染の為に筆記を夜通し叩き込んだらしい結翔が、机に突っ伏した。

宇「無事に入学出来たから良いけどさー、多分筆記最下位入学だけど。」

松「その幼馴染は何処クラスだ?」

宇「1組だよ。寮は東らしいね。」

松「ふうん。」

弘人が、興味無さげに欠伸をする。もうそろそろ21時だ。消灯時間までまだ2時間あるが、弘人は眠気に勝てなかったのか、さっさと布団に入ってしまった。夕夜はぼんやりとスマホを弄るばかりで無反応だし、何をしようかとオロオロしていたら、結翔が寄ってきた。

宇「ねえ、葵君、だっけ?」

東「あ、呼び捨てで良いよ。…結翔、だったよね?どしたの?」

宇「暇そうだったから。」

結翔は、僕の隣で片膝を立てて座り、スマホを弄る。

宇「…アイドル練習生だったんだね。何してたの?」

東「え、うん…。ダンス、ボーカル、語学、体型管理、ビジュアル磨き、基礎教育…だよ。」

宇「へえ、だからそんなに綺麗な顔なんだね。ジャンルはKPOP?」

東「き、綺麗って…別に普通だよ。KPOPで合ってる。」

恥ずかしくて赤くなると、結翔がクスクス笑った。

宇「照れ屋さんなんだね。」

東「…。」

宇「これからよろしくね。」

結翔はそれだけ言うと、自分の布団に潜って行った。

東(…此処で、やって行けそうだ。)

僕は布団に潜り、これからの高校生活に思いを馳せた。まさか、ドタバタ非日常になるとは露知らず、深く眠って行った。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る