la lumie're de la lune. 月の光に

「双子が生まれると夢でお告げをしたのはナジャスタ様だ。私はやめた方がいいと言ったが…パルティータが黙っておくのは嫌だと聞かなくてね…」

そう言ってオーボエは500年前のお告げの話を締めくくった。それから、アーリンとリュートをちらりと見て一言付け加える。

「結局そのお告げのせいで、2つの国はそれ以降お互いの子孫を婚姻はさせなかった。呪いが降りかかるのを恐れてね」

アーリンはそれを聞いて、身体をピクリとふるわせた。オーボエはそれを見たが、何も言わずに話を続けた。


「ドラブの呪いは500年後―…封印された自分の妖力が復活して、また元通りに戻れる事を計算した上での呪いだった。だから私は、その時にあわせて奴を封印するための力をリュートの中で育てた。覚醒は魔物だけが持つ力だ。人間のリュートが覚醒したら、たぶんルキシュがそうなったように、力を全部使い果たしてしまうかもしれない。でも幸いドラブは力をもう1人の双子に与えたと解っていたから、その力を使えば封印はできるだろうと思っていたんだ」

オーボエはそこまで一気に話すとふーっと息をついた。それからフッと笑って、困ったように呟いた。

「パルティータは、ほんとうにこっそりと君の力を入れ替えてしまっていたよ。おかげで私はそれに全く気づかなかった」

笑うオーボエを見て、アーリンは怒るに怒れない。パルティータがオーボエを思う気持ちが解るだけに、何も言えなかった。


「―…で―…どーしてくれんだよ…。俺はそれじゃ困るだろーが」

ゴロリと転がって、、リュートはオーボエを見た。

少し辛そうにに起き上がると、はーっと息をついて伸びをする。

「リュート。大丈夫?」

隣に座るリュートを見上げて、アーリンはその瞳の色を確認するように覗き込んだ。

「…よかった……元に戻ってる…」

「…あ…?ああ、目の色か」

髪をかき上げながらリュートはぱちぱちと瞬きしてみる。

「…っていうか、何で俺の目が紅くなった訳?」

そう言ってオーボエに説明を求めるリュート。オーボエはその質問にすこし考えながら答える。

「…ドラブは、覚醒すると真紅のドラゴンに変わる。そういえば解るか?」

その答えに、リュートは口をつぐむ。その代わりにアーリンが驚いたような怒ったような声で言う。

「…ド…ドラゴンって…じゃあリュートは―…」

「ああ…覚醒したら、そうなってしまうかも知れない。知れない、というよりもなるだろう、のほうが確実だな」


そのオーボエの言葉を聞いてリュートはしばらく黙っていたが、少ししてこう言った。

「…でも、そうすりゃ魔物は退治できるって事だよな。…だったらやるしかねぇ」

はーっとため息をついて、リュートは木の根にもたれる。そんなリュートをアーリンはすごい剣幕で怒鳴った。

「やるしかねぇ…って、何言ってんの?!ドラゴンになっちゃうんだよ?!そんなのダメに決まってるじゃん!」

腕に掴みかかって怒ってくるアーリンに、リュートは呆れたように言う。

「…アホだなお前は…。そうしなきゃ帰れねーの。解ってんだろーが」

「解ってるとか、解ってないとか、そういう問題じゃないっ!」

向き直って怒り出すアーリンを見てオーボエは少し驚いた顔をしたが、その後リュートの顔を見て少し目を伏せた。


「後は2人でゆっくり話し合うといい。私は明日の朝、また迎えに来る」

そう言うとオーボエは立ち上がり、アイビーとミントを連れてそこを離れた。



たぶん、それは気を使ったのだろうとリュートは気づいたが、アーリンはそれどころではない。

「良く考えなよ!ドラゴンになってまで、魔物退治する必要なんかあんの?!そんな事するくらいなら、もう帰れなくてもいい!」

ものすごく不満そうな目で自分を睨んでくるアーリンに、リュートはいつもの調子で答える。

「…あのなぁ…。だっだら最初から引き受けなきゃ良かっただろ?」

「それはそうだけどっ。あの時はこんな説明されてなかったじゃん!」

「されてたら引き受けねーよ。絶対に」

あきれ返って自分を見るリュートをじーっと睨みつけるアーリン。リュートはしばらくそんなアーリンを眺めていたが、ふいにその髪をさらりと撫でた。





「…俺は…、別に帰れなくったっていいんだ…でもさ…」


「リュート…?」

リュートの声がいつもと違う声になったのがわかって、アーリンは怒るのをやめる。自分の頬をゆっくり撫でるリュートの指に自分の指を重ねて、ただじっとその目を見つめた。


「…お前だけは―…ちゃんと帰してやりたいから…」

「…何言って―…」

アーリンは目を大きくしてリュートを見た。まさか、リュートがそんな事を考えているとは思いもしなかった。


「……お願いだから…俺の言う事聞いて…」

ぎゅっと抱きしめられて、アーリンはもう返す言葉がなかった。

髪を撫でられて、キスをしてくるリュートの背中をただきゅっと抱き返す事しかできない。




「……あ…っ…やっ…リュー…ト……ダメ…ちょ…っと待っ…て―…」

首筋を伝うキスで、リュートがこれからどうしようとしているか解っているのにアーリンはそれを拒めない。

「……ダメ…だよ…こんなコト―…したら…」

「…したら…?」


肩がゆっくりと月の光に晒されていくのが解る。背中を伝う指の感覚にアーリンは身体がピクリと震えてしまう。

「…だって…リュートは…クロイアーツの王子なんだよ…?…俺とは…敵同士なんだから…」

「敵同士だから…?…ダメだと思う…?」



鎖骨の上に痕を残して、リュートはクスッと笑う。

「……だから―…余計に好きになった―…。そう思っちゃいけない相手だったから―…」

耳元で囁くリュートの声がひどく甘えた声に聞こえて、アーリンは自分の鼓動が止まりそうな気持ちになる。

唇をなぞる指にピクリと反応するアーリンを見て、リュートはゆるく笑った。


「…でも大丈夫…」

「―…え……?」

何が大丈夫なのだろう。アーリンは瞬きをしながらリュートを見上げる。そんなアーリンを見て、リュートは目を細めて笑った。

聞こえないくらい小さな声が耳元で聞こえる。


「……俺がちゃんと戻してあげる……」

「…戻…すって…誰…を…?」



心なしか潤んだ瞳で自分を見上げるアーリンの左手を取って、リュートはその手にキスをする。


「…王子様を―ちゃんとアーリン姫に戻してあげる……」

「…リュー…ト…」

泣きそうな顔で自分を見つめるアーリンの頬に、リュートはそっと唇を寄せる。そして、すこしからかうような声でこう聞いた。

「…俺に―…こういうコト―されるの…イヤ…?」



囁かれて、アーリンはふるふると首を振る。そんな事を言われたら、もうイヤだと言えるはずもない。

「―…ちょっと予定が早まっちゃったな…」

リュートは笑いながら、アーリンの髪を撫でる。

「…でも、まいっか…」

さっきつけた痕を唇で伝いながらリュートは指を背中に滑らせた。




「―……好きだよ…」




低く、掠れた声でリュートはアーリンの耳元で囁く。

もう言葉では何も返せないまま、アーリンはリュートの首に回した腕にきゅっと力を込めた。





オーボエの灯した炎が徐々にゆるくなり消えていき、残ったのは月の光だけ。

その光に照らされて、アーリンは何度もリュートの名前を呼んだ。

何もわからなくなって、ただ感じるのは目の前にいるリュートの体温だけ―…。

リュートは腕の中のそんなアーリンを見つめて、目を細めて”ゆるい笑い”を見せる―…。











自分の中でぐるぐるとまいていた熱が溶けていくのを感じながら、リュートはアーリンを後ろから抱きしめて一言言った。

「…こんなの反則…だろ…」

「…え……?…なぁ…に…?」

「…ん…?…なんでもない…。ヒトリゴト……」


知らなかった方が良かったのかも―…。リュートはアーリンの髪に唇を寄せながら、そんな事を考えてしまう。

知らなければ、欲しいと思う事はない。でも―…。

「…俺…ダメかも…」

「…どうしたの?何が…?」


自分の方を振り返って小首をかしげるアーリンを見て、リュートは困った顔をした。

「―…離せなくなっちゃいそう…な気がする……」

どうしても自分のものにしたいというのはこういう感覚なのか、とリュートは実感する。そんなリュートの心の中を知りもせず、アーリンはちょっと考えてこう言った。


「…帰ったら―、このコト―…絶対に誰にも言わないで…ね?約束だよ…」

真剣な目で訴えてくるアーリンに、リュート自信なさげな声で言う。

「…そんなの…約束できるわけない……だろ…」

「…だめ…っ…絶対だめ!…だって俺は―…」



「アーリン」

何か言いかけたアーリンをリュートは小さく睨む。


「…この状態で…俺って言うな…」

リュートの言葉に、アーリンはあ…と小さく声を上げて口をつぐんだ。


「……だ…って……わ…たし…っ…」

真っ赤になって言い直すアーリンが可愛くて、リュートは思わず顔がほころんでしまう。



「…わかってる…絶対に秘密にする……。でもその代わり―…」

「…その…代わり…?」

「…俺と逢う時は、いつでもちゃんと"アーリン姫"でいるって約束できる?」

潤んだ目でリュートを見上げて、アーリンはコクリと頷く。

「…う…ん…。…わかっ…た…」









「…初めて会ったときのこと―…覚えてる?」

後ろから抱きしめたまま、リュートはポツリとそんな話を始めた。

「―…初めて…?…ああ…宮殿で…会ったときのコト―…?」

「…うん…」

「…覚えてるよ……?どうして…?」

自分の身体を抱くリュートの腕にそっと触れながら、アーリンは質問の理由を聞いてみる。

「…俺、あれからお前の事、忘れた事なかった。それがどうしてかずーっと解らなかったけど、今ならわかる気がする」

「…どうして…なの?」


ふーっと息をついて、またきゅっと抱きしめられた。


「…本当は、ずっと探してたような気がする。だからやっと見つけたのに、思い出せなくて遠回りしたけど」

「……ずっと…?」

「…ん…そんな気がする…」

アーリンは身体の向きをかえると、リュートの瞳を覗き込んだ。


「……ありがと…」

「…あ…?」

自分を見上げてニコリと笑うアーリンを見て、リュートは怪訝な顔をした。

そんなリュートにアーリンはゆっくり顔を近づけて、自分からキスをする…。


「―…」

リュートは口をきゅっと結んで、黙ってアーリンを見つめた。その顔が明らかに照れているのが解って、アーリンはクスッと笑ってしまう。

「…見つけてくれてありがと…って」

「―…う…ん」



目を閉じてフッと笑うとリュートはアーリンをぎゅっと抱きしめた。

「―…このまま―帰らずに…ここに2人でいてもいいような気がしてきた…」

笑って言うリュートに、アーリンはその耳元に唇を寄せて小さな声で答える。

「……いいよ…どこでも…リュートと一緒なら―…」


髪をさらりと撫でる指がゆっくり唇へ移る。額と頬にキスを繰り返しながら、リュートは甘えるような声でアーリンに囁く。


「……好きって―…言って―…?」



それを聞いてアーリンはものすごく困ったような顔をしてリュートを見上げた。でも、目を細めて笑うリュートを見ていると絶対にイヤだと言えなくなってしまう。



「……すき…………」

本当に押し出すような声で、真っ赤になりながらそういうと首筋にしがみついた。とてもじゃないけれど、こんな姿はリュート以外には絶対に見せられない。アーリンはそう思いながらリュートの背中をぎゅっと抱きしめる。


「……可愛い…」

耳元に聞こえる声がお願いをするように聞こえて、アーリンは胸がきゅっと締め付けられるような感覚になった。

頬を伝って首筋をなぞりながら肌の上を滑っていく指が、何も言わなくてもこれからどうしたいのか言葉の代わりに伝えてくる。

アーリンはそれでリュートが何を言いたいのか、もう解ってしまうようになっていた。

「―…いい…よ…」



小さな声でそう言うとアーリンは目を閉じて、きゅっとリュートの首に腕を回す。




言葉はなくなり、2人の呼吸だけが青い月明かりの木立の中に聞こえる。

朝が来るまで、それは終わることなく続く。

夜明け前、ゆっくりと2人は眠りに落ちていった。



⊹⊱⊰⊹════⊹⊱⊰⊹⊹⊱⊰⊹════⊹⊱⊰⊹




「どーしたのよ。ボーっとして」

「…あ。ううん。何でもないよ!」

いつもと同じケーキと、オレンジペコの紅茶。

ライラックはゆらゆらと揺れる紅茶の湯気を眺めてため息をつく。ピアニーはそんなライラックを眺めて首を傾げる。


2人は宮殿のカフェでランチを食べて、食後のデザートを楽しんでいる最中だった。

「まだ心配してんの?仕方ないでしょ、見つからないものは見つからないんだし。それに2人で一緒にいるんだろうから大丈夫よ」

ピアニーはパタンと読んでいた本を閉じるとクランベリーティーを手に取った。その色と香りを楽しんだ後、ちらりとライラックを見る。

「…それとも、別の心配?」

意地悪そうに笑って自分を見るピアニーを見返して、ライラックははぁ?という顔をする。

「なに?別の心配って」

「いーえ別に。違うならいいのよ」

フフフと笑って、ピアニーは紅茶を口にする。ライラックは紅茶を銀のスプーンでくるくると回しては、はぁっとまたため息をつく。

「…なんか…足りないような気がするのよね…」

「そりゃそうでしょ。いっつもあんだけ一緒にいれば、もの足りなくもなるわよ。まぁ、付き合ってたわけじゃないんだからまだマシなんじゃない?」

「…―うーん…」

肘をついた両手の上にあごを乗せて、ライラックはふーっと息をつく。

「…それもそうなんだけど…何か違うんだよね…」

「何が?」

「―…うーん…。何かねー…私、アーリンとずっと一緒にいて、夜だってデートって訳じゃないけど2人っきりで出かけたりしてるのに、一度もドキドキするような事がないの。それって、変じゃない?」

「……―」

真剣な顔で訴えてくるライラックを見て、ピアニーはしばらく上手く返す言葉をさがした。確かに、いい年頃の男女が夜中に2人っきりで逢っていて、ドキドキが一度もないのはおかしい。そうは思うのだが、ピアニーにはなんとなくその理由が解るだけにコメントのしようがない。


―…アーリンねぇ…。ドキドキしない理由もわかる気がするけど


ピアニーはあーあ、という顔をすると、うーん、と考え込んだ。ライラックは自分に、何か言って、とさっきからずっと訴えかけてきている。

でもしばらくしてカフェの窓の向こうに見える人影を見て、ニヤリと笑った。


「そうねぇ…。でもアーリンが特別なだけで、ライラックが何か悪いわけじゃないんじゃない?他の人と出かけてみれば解るかも知れないから、試してみたら?」

ライラックは、ピアニーにアーリンの気持ちを聞いているのに見当違いな返答をされ、眉間にシワを寄せた。

「…違ーう。じゃなくってぇー」

もう…と膨れるライラックは、ピアニーがニヤニヤして窓の向こうを見ているのに気がついて、くるりと振り返った。



「…あ…」

窓の向こうには、本を片手に何か調べているユーリウェンと、それを覗き込んでいるサファスがいた。


「ピアニー?」

ライラックは身体の向きを元に戻すと大きな目を吊り上げてピアニーをキロっと睨んだ。

「いいじゃない。だって見てて付き合ってるみたいよ?アンタ達」

「違うもん!私はアーリンがすきなのっ!別にサファスが好きだから一緒にいるわけじゃ―…」

「じゃあなんでクリスマスに一緒に帰ったの?来るときも一緒に来たんでしょ?」

その言葉をきいて、ライラックはがたんと椅子から立ち上がる。

「それはっ…。リュートのせいでアーリンがいなくなっちゃったからっ、サファスに責任取ってって」

「責任とってもらいついでに、付き合ってもらえばいいじゃない。良く見ると、けっこういい男じゃない?サファスも」

「な…なに言ってんのっ?!わたしそんな風にサファスのコト見た事ないもん!」

「そーなの。でもサファスはどうなのかなぁー?そこにいるから聞いてみる?」

ん?と首をかしげたピアニーから、なにか不思議な力が発せられたのか、外にいたユーリウェンとサファスがカランとカフェのドアを開けて、中に入ってきた。

ライラックは真っ赤になって、あわてて椅子に座ると両手でティーカップを持ち、うつむいた。


「お、何だ、2人して暇そうだな」

それまでの2人の会話を全く知らないサファスは、何も気にせずライラックの隣に座る。

「…どーしたよ…。お前…、そんな真っ赤になって。熱でもあんのか?」

「な…な…ないよっ!お茶が熱かっただけっ!」

「相変わらずガキだな。ふーふーしてから飲めっつってんだろ。いつも」

それを聞いて、ピアニーはニヤニヤ笑いをさらに深くした。

「…へーぇ…。いつもそんな会話してんの?」

「は?いや、いつもって、ここでメシくったりしてる時だけだけど?何で?」

平然として、普通に答えるサファスがおかしくてピアニーはくくく、と笑ってしまう。一方、隣にいるライラックはそんなサファスの腕をぎゅっと引っ張った。

「そんな言い方したら、いつも一緒にいるみたいじゃない!だめっ!」

「…だって、昨日も2人でメシ食ったじゃん。ここで」


「あら。仲のよろしい事。親友が行方不明だって言うのに、やるわね」

ピアニーのニヤニヤ笑いと、そんな物言いがサファスには何の事か理解できない。ライラックはうつむいたまま、もう何も言い返せなかった。

が、はたで聞いていたユーリウェンは、何の事かぴんと来たらしくピアニーと同じようにニッと笑った。

「あー。そうなんだ。知らなかったぁー。やっぱりそうなの?うまく行きそう?」

「だから何が。お前ら訳わからんぞ…」

注文を取りにきたウェイターにいつもの特注サイズヨーグルトドリンクを注文すると、サファスは不審な顔で向い側の2人を見た。


「そうかー…いやいや、どうなのこれ。おもしろくなりそうな感じ?」

ユーリウェンはフフフと笑って、ピアニーにそう言ってみる。ピアニーはうんうんとうなずいて、こう答えた。

「ばっちりじゃない?あっちもこっちも、面白くなるわよ。きっと」

午後のカフェで、ニヤニヤ笑いつづけるピアニーと、にこやかに笑うユーリウェン。そんな2人の態度にサファスは首を傾げ、ライラックは真っ赤になってうつむくだけ。



「おお?」

カフェの外の廊下で、アッシュは立ち止まってその光景を眺める。

はずかしそうにうつむいているライラックとその隣でヨーグルトをすするサファス。そして笑いあってるピアニーとユーリウェンを見て、アッシュは悲しい気分になってきた。


「…おいおい…。あっちもこっちもかよ?俺だけひとりぼっちかい」

追試の勉強に読めと命じられた本の山を抱えて、アッシュははーっとため息をつく。遠目に見ているアッシュには、サファスの憮然とした表情も、ピアニーのニヤニヤ笑いも見えてはいない。



「まーったく…。俺も呪われてる気がしてきたぜ…。別の意味で…」

肩を落としてため息をつくと、アッシュはとぼとぼと歩き出した。

 


la lumie're de la lune.

fin.

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