第18話 更なる進化②

(オルフィーの進化先が確定しました)


頭に直接声が響くと、急速な眠気に耐えられず意識を手放しました。

そして眩しさに目を覚ますと、傷口は無事に塞がっていて痛みも無くなったので安心しました。

身長は…伸びてないっぽい。目線の高さが変わってないもん。

羽はどうかなーと後ろを振り返ってみると、その異様にぎょっとしてしまいました。

なんか、私の体のサイズに合ってないような…。

羽の上部が天井につきそうなんだけど。それにキラキラ光ってるけど、これ目立ちすぎじゃ無い?

とりあえず小さくしておこう…。


「さすが、王の名を冠する存在だな。魔王となる日も近いのかもしれん。」

ダルクさんが私の羽を見た感想を感慨深げに語りますが、別に魔王になりたい訳じゃないんだよね。

そのとき、階段の上から女性の声が響きました。


「ななななっ!何が起こったんだ!?」

『な』が多いなぁと思いながら、犬人族のお姉さんを置いてきちゃったことを思い出しました。

「お姉さん、驚かせちゃってごめんね。あと、魔法使いを倒してくれてありがとう。」

私が丁寧にお礼を言って頭を下げると、お姉さんも頭を下げました。

「いや、こちらこそ犬人族を救ってくださり感謝いたします。」

「ちょっと先にやることがあるから、その後に説明するね。」


私たちは執務室に戻り、杖の先の黒い水晶を進化後のキラキラ鱗粉で破壊しました。

前より少しの量で簡単に破壊できたので、またまた効果が強くなってそうです。

お姉さんには今までのことをダルクさんが説明をしてくれています。

私より上手に説明できるので黙って聞いていたけど、私のことを『次代の魔王』とか『魔界の救世主』とか持ち上げすぎなのが困ってしまいます。


「初代魔王様の生まれ変わりかもしれませんね。この度受けた恩は、犬人族一同、一生をかけてお返しいたします。」

お姉さんが四つん這いになって私を見つめてきます。

なんのことかわからず動揺していると、ダルクさんが教えてくれました。

「お嬢ちゃん、これは犬人族が忠誠を示す際の姿勢だ。頭を撫でてやってくれ。」

頭を撫でるの!?なんかペットを可愛がっているみたいで気が引けるんだけど…。

でも、こういうのは受けないのも失礼だと思うから覚悟を決めて撫でました。

あ、フワフワで気持ちいい。お耳も触ってみたい…。ちょっとだけ触らせてね。

するとお姉さんはピクっとしたので、触っちゃダメだったのかもと思い謝ろうと目を合わせると、トロンとした目で気持ちよさそうでした…。


なんか発情してそうで怖くなり、私は慌てて話を振りました。

「あの、お姉さんの名前を教えてください。」

お姉さんは、ハっとして立ちあがりました。

「申し遅れました。バオーの町の町長の娘、フィズと申します。父は人間に殺されたため、現在暫定的に犬人族のリーダー役を担っております。」


名前を聞いて、やっぱりと思いました。

「よろしくね、フィズさん。それでね、実はフィズさんも進化できちゃうんだ。たぶん魔法使いを殺した功績が大きいのかも。」

「私も、先ほどのような奇跡にあやかれるのですか!?」

フィズさんは驚いて、尻尾をピーンと立たせました。凜々しくて格好いいのに、ちょいちょい可愛いんだよね…。

「うん、犬人族の統率者と牙狼族を選べるよ。」

フィズさんは、口をぽかんと開けて固まっちゃいました。

「統率者とは何代かに一度生まれ落ちては、犬人族を率いて戦った英雄の称号ですね。牙狼族にいたっては、我々の始祖たる種族で現在では生存が確認されていません。」

「どっちも凄そうだね。どっちがいい?」

「どっちがいいと言われましても、どっちがいいでしょうか?」

質問に質問で返され困っていたら、ダルクさんが助け船を出してくれました。


「犬人族全体の戦力の底上げなら統率者だろうが、個としての戦力なら牙狼族だろうな。」

「なるほどー。これから犬人族のみんなが強力してくれるなら統率者がいいのかなぁ。それに、牙狼族だと種族が変わっちゃうのが嫌じゃない?」

「いえ、牙狼族に生まれ変わるなら誉れ高いことです。それにオルフィー様に選んでいただいたなら、どちらでも本望です!」

様づけになってる…。もっとフレンドリーに接してほしいのにぃ。

「お嬢ちゃん、一つ提案したいのだが、今後は個の戦力が必要かもしれん。俺が差し違えた人間が、『タレント』なるものをもって生まれたと言っていたが、尋常ではない武力を有していた。ああいった輩に対抗できる仲間を増やしていくのも重要だろう。」


そっか、あのダルクさんでも死ぬ寸前まで追い詰められたんだもんね。

少し犬人族が強くなっても対抗できないのかも。

「じゃあ、牙狼族にしてもいい?」

「勿論です!よろしくお願いします。」

どういう姿になるかわからないのに勇気があるなぁ。

「じゃぁいくよ。フィズさんは牙狼族になります。」


(フィズの進化先が確定しました)

頭に直接声が響くと、フィズさんが繭に包まれ、そして繭が強い光を放ち消え去りました。


進化を済ませたフィズさんは、前より筋肉質になり、顔は凜々しさが増して大人っぽくなったかも。

そして、毛並みは前よりモフモフ感が増してしまい、私は撫で撫でしたい気持ちを抑えるが大変でした…。

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