38.

それを和らいで欲しくて、あんなことをしてみせた。

本当に伝染るとは思わなかったが、少しでも先輩が良くなれば。




「いやぁ、お前が熱を出すなんてな。マジ頭良くなった影響じゃん」

「でも一日で治ったから、そこまでな気がするけど」


あれほど高かったはずなのに、出してからものの数時間で下がっていった。

伝染ったからどうのこうのじゃなくて、あのようなことをしたことに対する考え過ぎた結果の知恵熱のようなものだったのだろうか。

そんな小さい子どもではなかろうに。


「それにしても、HR始まる前に飛び出して行ったから、何事かと思ったわ」

「はは、まぁ⋯⋯」

「クソッたれ日向はいるかっ!!」


突然つんざくような怒声が教室に響いた。

一瞬にして静かになった教室内にいた同級生達は、一斉に日向を見る。

この場面、既視感があるなと思いつつ、「お前またやらかしたんか?」と既視感が確信に変わりつつ、「オイッ! 早く来いや!」と苛立ちを隠しきれない陽輝に、あの時よりも幾分か背筋を伸ばして立ち向かった。


「何か用──」

「兄貴が入院した」

「⋯⋯⋯え?」


急に頭の理解が出来なくなったようで、今陽輝の口から何を言ったのか分からなかった。


「一昨日、大雨のせいで熱を出していたが、それが悪化した。お前のせいで」

「なんで僕が」

「兄貴が朝早くに俺が来たのかと訊いてきた。けど、俺は寝坊して遅刻ギリギリだったから、その時は会ってなかった。兄貴に会う人間は他にお前しかいないということだ」


朝早かろうが、いると思われていた陽輝はそんな理由でいない時もあるのかと今の状況ではどうでもいいことに納得していた。

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