3.


英語の単文の小テストが散々な結果だったのは、あのような光景を見たせいだろう。


他責し、同じように嘆いている友達のことを苦笑気味で見ていると、クラスメートに自分のことを呼んでいる人がいると言われた。


「ほら、あそこ」


指差した方向を辿っていくと、見たことがない人だった。

しかし、一部オレンジ色のような色に染めた髪を見た時、あっ、と声を上げた。

あれは恐らく、保健室でキスしていた人だ。

見られているとは思わなかった。どことなく気まずい。

それに恨めしそうにこっちを見てくる。


「あ、あれ、4組の明星あけぼしじゃね?」

「明星⋯⋯?」

「あんな見た目だし、オラオラしているから皆に怖がられているんだよ。中学の頃、肩パンしてきた先輩を片っ端からったとかなんとか」

「ええ⋯⋯」

「なんであんなヤツに目を付けられているのさ」

「あ、いや、その⋯⋯」

「オラッ! 人がわざわざ来てやってんのになんでこねーんだよ!」


日向の声が遮るほどの怒声に、びっくりするぐらい肩が上がり、あれほど賑わっていたクラスが一瞬にして静まり返る。

そして一斉に日向の方に視線が向いたことで、命を差し出される羊のように震わせながらも明星のところへ行った。


わざわざ来てやったなんて、こっちは呼んでもいないし、友達に言われるまで名前も知らなかったんですけど。


「二時間目の時、保健室に来ていただろ」


苛立ちが隠せないと言った様子に、されどこちらもその物言いにさすがにムッとした。

だが、言い返したら、先ほど言っていたように殴られたりするかもしれないと思った日向は、「はい、来てましたけど⋯⋯」とか細い声で答えた。

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