裏・カードゲーム世界
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赤単怒号速攻←強い!早い!かっこいい!
カードゲームにおいて、害悪デッキというのはいつ何時でも付きまとう問題だ。
土地、マナ、パワーポイントを破壊するランデスに始まり、相手にターンを返さずカードの効果を何回も流用して特殊勝利するループデッキ、速攻で相手の手札を全て無くさせるデッキに先行1ターンで全てを終わらせてしまうデッキも存在する。
これらは強さや害悪さの観点から多くのカードプレイヤーに嫌われ、ヘイトを集め、そして基本的に制限が掛けられ儚く散っていく。そして単純に強いデッキ達が環境へと戻っていくのだ。
数年後にはこんなヤバいデッキがあったのだという解説動画か、過去の規制カードの上位互換が登場してしまうという旨の動画が配信サイトに現れるかのどちらかだ。
で、俺、遊馬ノラもとあるカードゲームを愛し、様々なデッキを組んで店舗大会や
無論、普通の環境デッキは好きだったが、それ以上に害悪デッキを愛用していた。理由は単純、気持ち良いから。ただ害悪な戦法で相手を圧倒しているのがものすごく楽しいのだ。規制されて新しい害悪デッキを組み、またまた規制されて…この繰り返しだった。
そんな俺がその愛するカードゲームの世界へと転生した。憑依転生?かはわからないが15歳の子供の体になったのだ。そしてなんの因果かかつて俺が使っていたカードが数百種類、手元にあった。
元の世界では数千、数万とカードの種類があり、俺も数多くのカードを集めていたので少し残念だったが、それはそれ、これはこれだと割り切り、俺はデッキを組んだ。
組んだのはもちろん害悪デッキ。幸か不幸か、俺の転生先の場所がギャングに殺人鬼に人の命を狙うモンスターと治安が終わりに終わっていたためか、仕様に規制がかかっているはずのカードを当たり前のように扱うことができた。
もうみなさんお分かりですね?無制限な環境でかつての規制カードを四投出来るとどうなるか、はい、終了。世はまさに大害悪デッキ時代と化すわけだ。
これはそんな魔法世界での俺の生活の記憶である。害悪デッキもあるよ!
薄汚れた暗い街、フロン。右も左も浮浪者に死体と治安が終わり散らかしている街である。変わっていること?カードが武器になっていることだよ。剣も銃も何もかも、カードから出現する。この世界の必需品と言っても問題ない。ホームレスや浮浪者でもカードは何かしら持っているし、闇市では大して強くもない高レアカード、通称ハズレアが高価格で取引されている。あいつらカードのレア度だけで物を見てやがる。
因みに俺の持っているいらないカードを売り捌けば余裕で生活できるだろうが、それをしないのは周りから目をつけられないためだ。どんなに強いデッキだろうと、確実絶対100%勝てるわけではない。
自分の手札運、相手の手札運、さらに言えばシールドを破ることでトリガーするモンスターや呪文に自分がゲームに負けることを一時的に回避する特殊なカードなど、デッキ一つ、いやカード一つで状況が一変することが多い。害悪デッキ、環境デッキにも限りがある。ガンメタカードを出されて詰むことも、限りなく起こり得る。
故に、面倒ごとはなるべく起こしたくなかった。そう、起こしたくなかったのである。即ち、起きてしまった。
たまたま、カードの整理をしているところを通りすがりの浮浪者に見られてしまったのだ。ギラついた目で俺も目の前に現れ、勝負を仕掛けてきた。ふざけんな。
「デュエル!」
「…デュエルぅ…」
心底やりたくない。いや別にこのデュエルが楽しくないわけじゃないが、考えていた俺のカードを奪われないためのプランが完全崩壊してしまった。もう、旅に出よう。そうだ、このカードゲームの世界に来たんだったらきっと主人公とかいるはず。そいつを探しに行こう。
…と、現実逃避をしつつ俺は自分のカードを眺める。
ノラ
手札5枚
ボーリング・ドリル 1コスト 赤
凶鬼デイニークロー 1コスト 赤
レッドホット・肉チキン 6コスト 赤
怒号のイラヴィトン 7コスト 赤
疾走のファイアバニー 1コスト 赤
手札は及第点。速攻デッキなので切り札が既に手札にあるのは高得点だ。流石にこの手札でワンターンキルなんかはできないがそれでも戦える。
コイントス
結果 先行 浮浪者A
「ワシの先行ォォォォォ!緑マナを埋めて1コストォォォォォ!悪戯のフェアリーを召喚んんんん!!」
浮浪者A
マナ
0→1
ラティア・バード 3コスト 緑 使用
バトルゾーン
悪戯のフェアリー 1コスト 緑 召喚酔い
手札
5枚→3枚
うるさ。素晴らしい獲物を見つけたのか馬鹿みたいなテンションでカードをプレイしてくる。
フェアリーがいるって事はマナ加速デッキか。択が多すぎて絞れんな。
「ターンエンドォォォォォ!」
「…俺のターン、ドロー」
ノラ
手札5枚→6枚
不快のイラヴィトン 6コスト 赤 new
ボーリング・ドリル 1コスト 赤
凶鬼デイニークロー 1コスト 赤
レッドホット・肉チキン 6コスト 赤
怒号のイラヴィトン 7コスト 赤
疾走のファイアバニー 1コスト 赤
「不快のイラヴィトンをマナに埋め、赤マナの1コスト、呪文、ボーリング・ドリルを唱えます。効果で各プレイヤーは自分のマナにあるカードを一枚墓地に送ってください。ターンエンドです」
マナ
0→1
不快のイラヴィトン 使用
使用
ボーリング・ドリル
▲各プレイヤーは自分のマナゾーンから一枚を選びそれを墓地に置く。
マナ
ノラ
1→0
浮浪者A
1→0
墓地
ノラ
0枚→2枚
ボーリング・ドリル
不快のイラヴィトン
手札6枚→4枚
浮浪者A
0枚→1枚
ラティア・バード
「…自分で自分のマナを破壊した…?しかもマナに高レアカードを埋めて…コイツもしかしてカード持ってるくせにド初心者か…?」
そう言ってニヤつく浮浪者A。おもわず効果もデッキ内容も楽に確認しないまま勝手にビギナーと判断したお前の方がにわかだよと口に出そうになったが、なんとかその言葉を飲み込んだ。
どうせ次のターンにはほぼほぼ勝負か決まるような状況になるのだ。そう思い、相手の呟きを無視する。
「ドロォォォォ!!」
だからうるさいって。普通にプレイ妨害だろこれ。
浮浪者
手札3枚→4枚
「ワシのターン!緑マナをチャージ!1コストで更にフェアリーを出すぞォォォォォォ!」
マナ
0→1
流動する自然の讃良 5コスト 緑 使用
バトルゾーン
悪戯のフェアリー 召喚酔い
悪戯のフェアリー
「ターンエンドォォォォォ!」
フェアリーの強みはマナ加速。妖精の呼び声や絆の上位妖精を場に出すことで場にいるフェアリーの数だけマナ加速を可能にする。まあ要するに1、2ターンで小型フェアリーを展開し、3ターン目には5か6マナとなり、あとは大型のフィニッシャーを出して終わらせる感じだ。昔からある種族であり、現代でもなかなかの強化をもらっている(絆の上位妖精を含む)コイツらは、環境でもティア2の座に居座ったこともある強デッキだ。
「ドロー」
ノラ
手札4枚→5枚
凶鬼デイニークロー 1コスト 赤 new
凶鬼デイニークロー 1コスト 赤
レッドホット・肉チキン 6コスト 赤
怒号のイラヴィトン 7コスト 赤
疾走のファイアバニー 1コスト 赤
対してこっちの赤単速攻。怒号のイラヴィトンを主軸とした速攻デッキであり、最速1ターン、遅くても3ターン目には大体怒号のイラヴィトンが場に着地している。
「凶鬼デイニークローをマナに埋めて1コスト、凶鬼デイニークローを出します」
マナ
凶鬼デイニークロー 使用
バトルゾーン
凶鬼デイニークロー 召喚酔い
▲このモンスターは可能なら毎ターンアタックする。
手札5枚→3枚
レッドホット・肉チキン 6コスト 赤
怒号のイラヴィトン 7コスト 赤
疾走のファイアバニー 1コスト 赤
怒号のイラヴィトンは手札が怒号のイラヴィトン1枚しかなかった場合、場にコストを支払わずに召喚できる効果を持つ。
このTCGの性質上、マナを支払ってカードを使うと持っているカードが少なくなるため、1コストのカードで固めれば簡単にこの条件を達成できるのだ。
「レッドホット・肉チキンの効果を発動します。自分の場のモンスター、手札、シールド、山札をそれぞれ一枚ずつ墓地に置き、コストを支払わずに召喚します」
墓地
ノラ
2枚→6枚
ボーリング・ドリル
不快のイラヴィトン
凶鬼デイニークロー
正義のアンピティア 1コスト 赤
煙殺!モスキートスプレー 1コスト 赤
煙殺!モスキートスプレー 1コスト 赤
バトルゾーン
1→0→1
レッドホット・肉チキン 6コスト 赤
▲ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
コストを支払う代わりにバトルゾーン、シールド、手札、山札から1枚ずつカードを墓地に置いて召喚しても良い。
「手札が1枚になったので手札の怒号のイラヴィトンのキーワード能力、
「…は?」
バトルゾーン
1→2
レッドホット・肉チキン 発動済み
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
コストを支払う代わりにバトルゾーン、シールド、手札、山札から1枚ずつカードを墓地に置いて召喚しても良い。
怒号のイラヴィトン 7コスト 赤
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
カードを一枚引く。その後自分の手札を1枚捨てても良い。そうしたら相手のモンスター1体のパワーを−7,000する。
怒号のイラヴィトンは出た時にカードを一枚ドローする。そのため、そのドローから再び怒号のイラヴィトンを引けば…
「…効果で一枚ドロー。…では再び自分の手札が一枚になったのでE・B・Gを発動しノーコストで先ほど山札から引いた怒号のイラヴィトンをバトルゾーンに出します」
バトルゾーン
2→3
レッドホット・肉チキン 発動済み
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
コストを支払う代わりにバトルゾーン、シールド、手札、山札から1枚ずつカードを墓地に置いて召喚しても良い。
怒号のイラヴィトン 発動済み
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
カードを一枚引く。その後自分の手札を1枚捨てても良い。そうしたら相手のモンスター1体のパワーを−7,000する。
ダブル・バースト:このモンスターはシールドを2枚ブレイクする。
怒号のイラヴィトン
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
ダブル・バースト:このモンスターはシールドを2枚ブレイクする。
カードを一枚引く。その後自分の手札を1枚捨てても良い。そうしたら相手のモンスター1体のパワーを−7,000する。
「効果で一枚ドロー…ではメインフェーズ終了。アタックに入ります」
これが僅か2ターン目に、運が良ければ1ターン目に起こりうるのだ。ここで問題。
Qここから入れる保険はありますk
Aいいえありません。
たとえ盾から何かしらトリガーを踏んだところでそこそこ高いアタッカー3体を除去するのは厳しいし、なんとか耐えたとして次のターン、相手は2、良くても3マナからこの盤面を処理する必要がある。
Qこの盤面を処理できるカードはありますk
Aあるわけねえだろ
強すぎる?何か制限があるんだろ?いいえ、だから一枚しかデッキに入れられない制限が設けられました。
数多なるデッキを早さという強み一点だけで薙ぎ倒してきたデッキだ。面構えが違う。
「怒号のイラヴィトンでシールド2点」
バトルゾーン
3
レッドホット・肉チキン 発動済み
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
コストを支払う代わりにバトルゾーン、シールド、手札、山札から1枚ずつカードを墓地に置いて召喚しても良い。
怒号のイラヴィトン 発動済み アタック
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
カードを一枚引く。その後自分の手札を1枚捨てても良い。そうしたら相手のモンスター1体のパワーを−7,000する。
ダブル・バースト:このモンスターはシールドを2枚ブレイクする。
怒号のイラヴィトン 発動済み
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
ダブル・バースト:このモンスターはシールドを2枚ブレイクする。
カードを一枚引く。その後自分の手札を1枚捨てても良い。そうしたら相手のモンスター1体のパワーを−7,000する。
浮浪者A
シールド5→3
「…トリガー無しなので更に怒号のイラヴィトンでシールド2点」
バトルゾーン
3
レッドホット・肉チキン 発動済み
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
コストを支払う代わりにバトルゾーン、シールド、手札、山札から1枚ずつカードを墓地に置いて召喚しても良い。
怒号のイラヴィトン 発動済み タップ
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
カードを一枚引く。その後自分の手札を1枚捨てても良い。そうしたら相手のモンスター1体のパワーを−7,000する。
ダブル・バースト:このモンスターはシールドを2枚ブレイクする。
怒号のイラヴィトン 発動済み アタック
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
ダブル・バースト:このモンスターはシールドを2枚ブレイクする。
カードを一枚引く。その後自分の手札を1枚捨てても良い。そうしたら相手のモンスター1体のパワーを−7,000する。
浮浪者A
シールド3→1
「ッ!!トリガー発動!輪廻の魔術!効果でアンタップ状態のレッドホット・肉チキンをデッキの一番下に!」
トリガー1
輪廻の魔術 7コスト 緑
▲
トリガー:シールドから手札に加えられる時にこのカードを実行しても良い。
相手のモンスター一体を選んでそのモンスターを相手の山札の一番下に送る。
バトルゾーン
3→2
怒号のイラヴィトン 発動済み タップ
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
カードを一枚引く。その後自分の手札を1枚捨てても良い。そうしたら相手のモンスター1体のパワーを−7,000する。
ダブル・バースト:このモンスターはシールドを2枚ブレイクする。
怒号のイラヴィトン 発動済み タップ
▲
ブーストビート(このモンスターは召喚酔いをしない)
ダブル・バースト:このモンスターはシールドを2枚ブレイクする。
カードを一枚引く。その後自分の手札を1枚捨てても良い。そうしたら相手のモンスター1体のパワーを−7,000する。
「はい、ではターンエンドです」
浮浪者は顔を青ざめさせていた。それもそうだろう。たった2ターンで大型のモンスターが3体出てきてシールドを残り一枚まで削った挙句、相手側には1マナしかないのだ。文字通りの詰みであった。
「…投了するぅ…」
相手はサレンダーを宣言するとしょんぼりと立ち去っていった。
毎度思うのだが勝負を仕掛けられた側は逃げられないのにボコボコにされそうになるとサレンダーしてダメージを最小限に抑える戦法取るの本当に意味がわからないと思う。
ともかく、この街にはいられないと考えた俺はさっさとカード整理を終わらせ旅に出る準備に取り掛かった。
◇
こんにちは。暇つぶしにカードゲーム世界の物語を書いてみることにしました。えー、お察しの方もいると思いますがデュエマのシステムをほぼ丸パクリ、なんなら実際に存在していたデッキもほぼ丸パクリしております。オリジナルのカードゲームを考案するほどの知能は私にはありませんでしたごめんなさい。
と、いうわけで作者の一言では各回に出てきたデッキ、カードの元ネタを解説します。
赤単怒号速攻。元ネタは赤単轟轟轟。
デッキの回し方はこの回でも出た通り、先行なら1コスクリーチャーを場に出し、ニクジール・ブッシャーで手札を轟轟轟一枚にし先行ワンターン着地。
後攻ならワンドローが入るので一コスの呪文などを使い手札を減らしつつ、2ターン目には先行1ターン目と同じ手札枚数になるので以下同文。
歴代のデュエマの即効デッキの中でも最も早く、先行一ターンキルも可能だったヤバすぎるデッキです。
とにかく、早過ぎた結果無事、規制がかかり今では轟轟轟ブランドは一枚、ドリル・スコールも一枚という制限が課せられています。
これは余談なのですが、私がデュエマを始めたのが、ちょうどこの時期でした。
個人的に始めた時の思い出もあり、ジョニーに並んで好きなカードでしたね。
裏・カードゲーム世界 ■■■ @woto
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