第13話 父親に似て俺使いが荒ぇんだよ
泣き疲れて眠ってしまったユウ少年を車に乗せて、
ユウ少年を保護した後、
原因であるアラクネは退治したので、しばらくすれば目を覚ますはずだ。しかし体に残った邪気は祓った方がいいと、彼らは一旦
ユウ少年以外の人間を神社へ運んでくれたのは、
前に
「今回も悪いね、シゲっち」
「ったく、マサよぉ。俺はテメェの雑用係じゃねぇぞ、コラ」
「今度パティスリーアビーシュの
「
警官らしからぬ口調の悪さだが人情に厚く、強面なのに大の甘党だという斎藤を、
「それで? 公園で保護した奴らは大丈夫なのか?」
「元凶は
「警察を足に使うのはお前くらいだぞ」
「本当、シゲっちは優しいよね」
「……チッ。極楽団子も追加だ」
「了解」
「じゃ、少し待ってて」と言い残すと、
拝殿にはユウ少年の母親も呼ばれていた。
「ユウ!」
「泣き疲れて眠っているだけなので安心して下さい。ユウ君は無事です」
「あぁ……ありがとうございます。本当に……ありがとう……!」
アルトリウスから母親の腕の中へ少年を戻し、
ガリバーが言っていたように聖剣の力をうまく制御できるようになれば、霊力をバランスよく使えるということだろうか。
「おぅ、
「警官のくせに言動がヤクザ!」
拝殿から戻った
「シゲおじさん。皆を連れてきてくれてありがとう。私の車だと乗せられなかったから」
「父親に似て俺使いが荒ぇんだよ」
「感謝してるってば」
「お前……何かやべぇことに首突っ込んでるんじゃないだろうな?」
「え?」
「今までもお前ら親子に散々使われてきたが……」
「言い方」
「今回は何つーか……いつもと感じが違った気がしてな。気色悪ぃ臭いがするぜ」
昔から
ただ
「確かにいつもの除霊とはちょっと違う感じなんだけど……でも大丈夫だよ。強力な助っ人もいるしね」
「助っ人……。あの妙ちくりんなコスプレ野郎のことか?」
「妙ちくりんって……」
斎藤の視線の先には、アルトリウスとヘイちゃんがいた。確かに斎藤の目から見れば、胡散臭い銀髪神父と時代錯誤な狩衣男に見えるだろう。ここにガリバーがいれば更にカオスな状況になるところだった。
「一応、
「ひょろっちい野郎が何の役に立つんだか」
「そんなことないよ。アルトリウスはああ見えて腕力もあるし、空も飛べ……る、ほど……えぇーと……そう! 身体能力高いし!」
「何だ? えらく推すじゃねぇか。もしかしてあいつ、お前の婿候補か?」
「ぶっ! ななな何言って……! そんなんじゃないからっ」
「まぁ、どっちでもいいが……嫁入り前にあんまり無茶するんじゃねぇぞ」
「……本当、シゲおじさんってば優しいよね」
「親子共々、牢にぶち込むぞ」
「おじさんって、本当に警官なの?」
はじめは
それは
そんな
あの時から斎藤は何も変わらない。口が悪くて顔も怖くて、でも心はとても優しい不器用な警官だ。今回だって森林公園に残るアラクネの気配の残滓を感じて
だから、
「ちょっといろいろやることができて大変だけど、私は大丈夫。だから心配しないで」
「心配はするさ。お前はマサの子供だし、俺は警官だからな」
「そっか。……ありがと」
流れる時間がやわらかい。あの時、川の土手で感じた空気と同じだ。
「
不意に、斎藤がぽつりと言った。何か思うところでもあるのか、少し難しい顔をしている。
「何? どうしたの?」
「いや……
さすがは斎藤。
「不可解な事件?」
「やっぱ、そこに食いつくか」
「まぁ、除霊関連は私の仕事だし。何かあったの?」
「不審者の目撃情報が同時にあったり、数人の男女が踏切の前で歌を歌ってたり……あとはメリーさんから電話がかかってくるっつーのもあったな」
「メリーさんって、あのメリーさん?」
「同僚から聞いた話だ。子供たちの間で噂になってるらしい。一発目から自分の背後にいるんだってよ」
「確かに昨夜から一気に変なことが起こってるみたいだけど、それがこっちに関わってるかどうかは……まだはっきり分からないかも」
そう言ったものの、完全に無関係ではないことを
「関係ないならそれでいいんだよ。パトロール回数も増やしたし、踏切で保護した奴らは今はもう正気に戻ってる。何をしてたか、記憶は曖昧だがな」
「シゲおじさん。除霊関連の仕事が必要だったら連絡してね」
「もちろんタダでやってくれるんだろうな?」
「友人価格で」
「ちゃっかりしてんな、オイ」
ちょうどその時、拝殿の方から
少年を乗せた車と斎藤のパトカーが角を曲がるまで見送ると、途端に疲れがどっと押し寄せてきた。視界が霞み、体がふらつく。倒れるほどではないが、神社までの階段を上がるのはちょっと苦痛だ。
そう思っていると、さも当然のようにアルトリウスが
「きゃ! な、何?」
「慣れない戦闘と聖剣の使用で疲弊しているだろう? 少し休め」
「この状況だと逆に休めないんですけど!? 大丈夫だって! 一人で歩けるから」
「遠慮するな。俺は聖剣の護り手であると同時に、お前の守護者だ」
「その顔で殺し文句は卑怯」
平然と胸キュンなセリフを吐いたアルトリウスを軽く睨んでみたが、どうしても頬が緩んで変顔になりそうだったので、
きっと加代がまた物凄い勢いでスマホのシャッターを押すのだろう。恥ずかしいと思う反面、せっかくなので憧れのお姫様抱っこをもう少し堪能していたい気もする。
顔を覆った指の隙間からちらりと覗き見たアルトリウスの顔は、やっぱり綺麗だった。
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