獅子凰 I
Roko
第1話
プロローグ
雨の匂いがする。
静かなはずの夜に、鉄の響きと叫び声が混じる。
ひとりの小さな少女が、泣いていた。
そして顔の見えない“誰か”が、私の名前を呼ぶ。
――泣くな。
冷たさを含んだその声の奥には、
不思議と心地の良い優しさが滲んでいた。
あぁ、そうだ
触れたときの手の温かさも、あの低音の声も、
心の奥にまだ残っている。
けれど、その顔だけが――もう霞んで見えない。
小さな私の指先に、ぽたりと落ちた血の雫。
それだけが、今も鮮明に焼きついていた。
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