悪役令嬢転生、ワイ。〜口調がキモいけど持ち前の知識で無双するやで!断罪だけは許してクレメンス!〜

梅酒司

第一章:ファッ!? 転生ワイ、悪役令嬢なんか? 自宅警備員の知識で無双するで!

「…………ファッ!?」


激しい頭痛とともに目を覚ますと、ワイは豪華絢爛な天蓋付きのベッドに横たわっていた。

視界に入る全てが金襴豪華。

ベッドのマットレスは異常なほどふかふかで、前世のワンルームマンションの薄い布団とはレベルが違う。

窓からは甘美なバラの香りが漂い、ワイの嗅覚に強烈な違和感を与えていた。


鏡を覗き込むと、そこには金色の巻き髪に翠色の瞳を持つ、まるでAA職人でも再現できないような、ぐうの音も出ないほど整った美少女がいた。


ワイの彼女か?

いや、そんなのおらんかったンゴ。


趣味は専門板の巡回と自宅警備の匿名掲示板民。

そんなワイに彼女なんてあるはずなかったわ!


ということは、この目の前にいるのは……ワイ!?

そんなモブだったワイが、まさかの美少女転生!


【朗報】ワイ将、美少女に転生。


「ktkr(キタコレ)! ワイ、異世界転生したんやな! IYH(イヤッッホォォォオオォオウ)! この神のようなルックスならリア充も余裕やで!」


心の中で喜びを爆発させたのもつかの間、この身体の持ち主――アルティメシア・フォン・ヴァイスクロイツ侯爵令嬢の記憶と、この世界の情報が脳内に怒涛のように流れ込んできた。


ここは、ワイが好きだった乙女ゲーム

──『愛と呪いのロマンス』の世界。

そしてアルティメシアは、典型的なテンプレ悪役令嬢!


「ちょ、待てや! 悪役令嬢なんか!?」


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それを知ったワイは思わず、失意体前屈のポーズを取っていた。


アルティメシアの末路は最悪だ。

ヒロインを妬み、嫌がらせを繰り返した挙句、王太子に糾弾され、断罪、そして処刑という鉄板のバッドエンド。


「タヒ(死)にたくない!助けてクレメンス!」


ワイはマジレスでパニックになった。

しかも、転生のショックで口調がネットスラングまみれに!

「ワイ」「やで!」「クレメンス!」「ンゴ!」といったキモい口調が止まらない!


「アカン、アカンで! 断罪とか、誰得(だれとく)なんや!許したってや! 」


でも悲観していても仕方がない。

前世で匿名掲示板の専門板を渡り歩き、金融、経営、ITなど雑多な知識ばかり溜め込んだワイならなんとかなるはずや!

この状況ではその知識こそがチートになるはず。

まずは状況の整理や!


知識チート1: 断罪イベントの発生は、ヒロインが王立学園に入学する3年後。


微レ存(微粒子レベルで存在)、回避の可能性はあるで!

この猶予期間に権力と財力を固めるのが最優先や!


知識チート2: アルティメシアが断罪される遠因の一つが、傾いた家の財政難。

ヴァイスクロイツ侯爵家は見栄を張るためのパーティーや高価な宝石への浪費が凄まじい。

資金繰りは火の車で、いつ破綻してもおかしくない状態や!


「ファッ!? 詰みか? 」


思わず声に出てしまう。

いや、この財政難こそが最大のチャンスや!


この世界では金融や経営の概念が中世レベル。

複式簿記や合理的な予算編成の考え方すら存在しない。

ワイの「自宅警備員」時代に専門板で叩き込んだ、合理的な経済知識があれば、この家の立て直しは余裕やで!

例えば、資産と負債を明確に分離するバランスシートの概念を導入するだけで、他の貴族を何十年もリードできるやろ!


コンコン、と上品なノックが響き、執事のセバスチャンが入ってきた。


「アルティメシア様、大変お見苦しいところを。その、あまりにも奇抜なお言葉でございますが、ご気分が優れないのでしたら、すぐに王都の名医を呼びますが。」


「あ〜ん? 空気読めや、セバスチャン!消防か!」


セバスチャンはワイの異様な口調と、貴族令嬢にあるまじき専門用語の連発に目を見開き、思わず一歩後ずさる。


「それより、この家の現状をkwsk説明する汁! 特に過去三年分の会計書類や!ソース付きでな!ゴミレスみたいな適当な報告はいらんで!」


目を見開いたままだったセバスチャンはなんとかワイの言葉を飲み込んだようで、返事をする。


「ご、ご無礼をお許しください。その、『ソース』とは、どのような書類を指しておいででしょうか。わたくしどもが慣れております会計書類では、そのような名称はございませんが……」


「わからんことを確認するのはGJや!ソースは、情報源のことや!たとえば、取引の証拠となる公的な文書、領主の承認印がある証明書のことやで。全ての出入金に紐付けて提出するんやで! この単式簿記はクソザコやからな、明日から複式簿記を導入するで!セバスニキの有能ムーブに期待するで!」


セバスチャンの顔面は混乱でまさに「くぁwせdrftgyふじこlp」といった状態だったが、ワイはもう気にしない。

断罪回避こそが全てや!


「キモスい口調は自重しつつ、知能で無双するで!アンチとか陰口は逝ってよし!断罪とかいうクソザコなイベントは、ワイの知識チートで上書きや!レベリング開始ンゴ! ぬこでも飼ってマターリする老後のために頑張るで!」


キモい口調を操る悪役令嬢(中身は匿名掲示板民)の、運命をねじ曲げるための無双劇が、今、ここに静かに幕を開けたのであった。


(続かない)

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