第八話 第15師団地区防衛 やくそくの日まで…

自分が何を話しているのかわからない…。

 喉が、焼けるように痛む。

 触れている感覚は鮮明だ。腕の中では軽い…とても軽い少女の体が力なく横たわっている。

 生温かい血液のドロッとした感触が、弱まっていく少女の拍動とともに掌いっぱいに伝わってくる。

 視界の鮮明さは自分を呪い殺したくなるほどで、少女が貫かれた右目の惨状が否も応もなく脳へ絶え間なく送り付けられる。

 ―どうしてこんなことになっている。

 目の前の現実を、分析できない。

 ぐちゃぐちゃの思考の中、雪焔はようやく自分が救護班!救護班!!と叫び続けているのが分かった。

 どうやら教員の誰かが救護班を連れてきてくれたらしい。頑なに少女を抱きしめ続ける雪焔の腕から無理やり引きはがす形で、彼らは少女―唯花の応急処置を始めた。

 「雪焔さま…だいじょうぶ?」

 14人の子供たちの一人が呼びかけてくる。

 「あ、ああ…だいじょうぶ、だよ…」

 笑顔が作れない。心配させるべきではない。自分がしっかりしなければならない。この子たちを守りたい。泣いてほしくない…。なのに、精神の動揺は全くおさまってはくれない。

 自分の荒い息遣いがだんだんと大きく聞こえてくる。

 教員に連れられ、子供たちと処置を終えたらしい救護班はこの場所を出ていくのを、雪焔は捨て去りたくなる意識の端でとらえた。

 「―様。―雪焔様!」

 急に視界が右に揺れ、遠のいた意識が戻る。どうやら左の頬を張られたらしいということを、遅れて感じ取った痛みで理解した。

 「雪焔様!しっかりしてください!!」

 誰もいないはず、みんな自分を残して出て行ったはずだと思っていたが、どうやら違ったらしい。

 校長が一人、雪焔をまっすぐに見つめて立っていた。

 「あぁ、校長先生。私は、取り返しのつかないことを…」

 「何のことを言っているんだい。まだ何も終わっちゃいないだろう!」

 かろうじて絞り出した雪焔の言をかき消すかのような校長の言葉が響く。

 「雪焔様。あなたはよくやってくれている。あなたがいなければ、今頃私たちはここで蜂の巣にされていただろうさ」

 「でも、私は結局―」

 口を挟もうとする雪焔を、校長は手を前に出して制す。いいからお聞き、と校長は言を続ける。

 「いいかい。唯花のことであなたがひどく傷ついているのはわかるよ。でもね。唯花だってまだ死んじゃいない。私たちだって誰一人欠けちゃいない」

 雪焔の肩をつかみ、目を合わせて彼女は語る。

 「まだ、未来はつながってる。今は皆泣いているけど、明日笑えるように必死で生き延びようとしている」

 肩をつかむその手に力が入る。自分も目の前で起きた悲しみに押しつぶされないよう、必死で、食いしばって今こうしているのだと伝わる。

 「目の前の笑顔を守ることはもちろん大事さ。けどね。あの子らが生きる未来を笑顔でいっぱいにしてやるために、今は私らが必死で乗り越えなきゃいけない時だよ」

 本当は、齢15の女の子に言うことではないのかもしれない、背負わせるべきではないかもしれない。

 「だから、お願いだよ、雪焔様―」

 しかし、この子は―雪焔は強いから、きっとこれも糧に変えてくれる。彼女の口調が、力強いものから、最後は優しく希うものへと変わる。

 「唯花が目を覚ました時のため、友人を、家族を、この地区を、そして何よりあなた自身を―守ってくれないかい?」

 あぁ、やはりこの人は強い、と雪焔は目の前で涙一つ流さずに立つ女性を見つめる。

 この人は、私たちで乗り越える、と言った。横に立って一緒に守ろうと言ってくれた。ものがよく見えるとか、よく切れるとか、そんなことはどうでもいいのだ。

 魔軍を前にして自分が丸腰であっても、後ろに守るものがあるのなら、きっとこの人は仁王立ちで退かぬだろう。つい今まで、現実を投げ出そうとしていた自分とは雲泥の差だ。

 「雪焔様。あなたはまだ立てる。戦う力もある。その溢れんばかりの優しさを、どうか自分の枷にしないで」

 優しさの枷…。思えば雪焔は任務だから、役目だから、という理由で行動したことはなかった。目の前の人の、目の前の苦しみを取り除こうとやってきた。

 ―何と言う甘い、超がつくほどのお人好しだ、と雪焔は自虐する。自分の前でだけ笑顔ならば問題がないと。そのために心血を注ぐと。

 苦しみを分かち合い、共に乗り越えようなんて考えたこともなかった。自分は守る者。皆は守られる者だと…。なんて浅はかなのだろう…。

 

 ガラッと天井が軋む。見上げると巨大な屋根の一部が二人の頭上目掛けて落ちてくる。

 キンッという甲高い音が部屋に反響した。咄嗟に頭を隠していた校長がの両脇に石の塊が恐ろしい音とともに落下する。

 両断するために頭上に振り上げた刀を鞘に戻し、雪焔は校長と向き合う。

 「ありがとう。校長先生。私、目が覚めました。皆のこと、守ります。だからいっしょに、この危機を乗り越えてください」

 光が戻り、その奥に揺らめく決意の火を宿す瞳を見て、校長は柔らかく微笑み、深々と頭を下げた。

 「ええ。雪焔様。我々をどうかお守りください」

 「あのー。校長先生」

 ばつが悪そうに、雪焔は呼びかける。

 「その…。雪焔様っていうのは、やめていただけないかなぁと」

 「それはどうして…」

 「私は、あなたから大切なことをたくさん教わり、たくさん気付かされました。私にとってあなたは心の師です。様などとつけられたくはありません。雪焔で構いませんので…」

 この申し出に、校長は驚いて目を丸くしたが、意を察したのち柔らかな表情で答える。

 「わかりました。雪焔。気を付けて、行ってらっしゃい。みんなで待ってますね。」

 「はい!行って参ります」

 そう言い残すと、雪焔は陽光が差し込む壁の穴から光の向こうへと駆けだしていった。


 雪焔の前方には、およそ100体の魔軍の群れ。

 雪焔の後方には、無骨だが美しい街並みとそこに暮らす人々の“宝の山”。

 その狭間に立つ彼女は、己の職責の重さを再認識していた。

 (教員らは子供たちを守っている。救護班は唯花や、傷ついた人たちを治療している。皆、必死なんだ。自分の役割の中で、必死に未来をつないでいる…)

 では、自分の役割はなんだ。

 “防衛部隊長補佐”としての未来のつなぎ方は…。

 刀身を鞘に納めたまま、雪焔は身をかがめ、構える。

 体の回転に合わせて、抜刀された刀身はまるで、目に見えぬ何かを断ち切るかのように空を裂いた。

 「正直、今まではバカにしてたけど…」

 わが父に比べ、全く洗練されていない己の抜刀を見ながら、

 「今は少しだけ、肩書に縛られる気持ちも理解できるよ…父上」

 雪焔は今度は本来の己の構えを取る。

 刀身を下げ、脱力から始まる彼女の剣は、その意識の大半を脚へ持っていく。

 最高速で敵陣へ突撃し、「刃の道」で見極め「刃の目」で切る。

 高速で優雅とさえ称される雪焔の剣はまた一つ、高みへと昇った。

 「第15師団地区“防衛部隊長補佐”雪焔。この任、今、完璧に果たしてご覧に入れましょう…!」

 1VS100の防戦に、しかし、一切の迷いなく彼女は戦場へと駆けるていく―。


 「――ん…」

 雪焔が目覚めたのは清潔に囲まれた寝台の上だった。

 上半身だけ起こす。なぜ自分がここにいるのか、朧げな記憶の断片が浮かんでくる。

 60体…いや、70体ほど切り伏せたところで力尽きた。

 倒れそうなところを支えられて…そのとき詰めてきた10体が一瞬で真っ二つになって…。

 そのあとから記憶がない。おそらく気を失ったのだと思う。

 地区のみんなはどうなったのだろうか。私を助けてくれた顎鬚隊長はどこに―。

 ダメだ、とぼんやりとする思考をまとめられず、もう一度寝台へ寝ころんだ。

 

 ぷに―っと、何か冷たいものが頬に押し当てられる感覚で雪焔は再び目を覚ました。

 目を開けてみても、どうやら横向きで寝ている自分の後ろから押されているようで、その主犯が分からない。

 どういう状況だ…?と訝しく思いながら、ゆっくりと体を反対へ回す。

 そこには、用途は不明だが細い棒状で金属製の医療器具を持つ少年が立っていた。たしか、学校にいた子たちの一人…。

 雪焔と目が合うと、初めこそ、その少年は驚いた様子でじっと彼女を見つめていたが、徐々に嬉しいやら泣きそうやらよくわからない顔をしながら、部屋を飛び出していった。

 次に聞こえてきたのは廊下の奥で「雪焔様が目を覚ましたぁぁぁ!」という大声と、それからドタドタと近づいてくる無数の足音だ。

 なんだなんだと戸惑っている間に、雪焔の病室はたくさんの子供で埋め尽くされる。

 「雪焔様ぁ~。目が覚めてよかったぁ~」

 一人の子供が雪焔へ飛びついた。他の子らも口々によかったよかったと言ってくれている。

 「あの、私はどのくらい眠っていたのでしょうか…」

 奥でこの様子をにこにこと見ている校長へ、雪焔は問いかける。

 「4日かねぇ。あんなことがあったんだ。心身ともに疲労のピークって感じだったんだろう。この子ら、雪焔が目を覚ますまで代わる代わる様子を見に来てたんだよ。まぁ、その器具はよくわからんけど…」

 棒状の器具を見ながら校長はクスクスと笑う。ほんの悪戯のつもりだったのかもしれないが、子供のすることは無邪気で怖い…。

 それでも、みんなが自分のことでこんなに喜んでくれるなんて、という喜びの中、一つの気がかりを校長へ尋ねる。

 「あの…唯花は、どうしていますか」

 場の空気が凍るのを感じた。子供たちの顔も暗くなっている。

 「まぁ、生きてはいるよ。危なかったみたいだけどね」

 生きてはいる、ということに雪焔は安堵するが、この場の雰囲気は彼女にそれ以上の不安を煽った。

 「生きてはいる…だけど、良くないんですか?」

 「まぁ、立てるようになったら会ってやってくれるかい。大丈夫。唯花はあなたを恨んでやしない。あの子もあなたのこと心配していたからね…」

 校長の言葉を信じて、早く回復して会いに行こう、と雪焔は決意した。


 それから3日が立ち、雪焔は今、とある病室の扉の前に校長と二人で立っている。

 『唯花』と書かれた名札がかけられた病室の中からは、母親と子供らしい二人の会話が断続的に聞こえてくる。

 「どうしたんだい。早くお入りよ」

 「い、いや…。やっぱりちょっと緊張してしまって…」

 急かすように背中をぐいぐいと押してくる校長とあと一歩が全く出ない雪焔。

 このやり取りだけでどれほどここにいることか、と校長は雪焔には見えないように呆れ顔を出す。

 「まったく、情けない子だねぇ。もういいや。行って来な!」

 そう言うや否や、校長はガララッと病室の扉を開けた。

 ノックもなく突然扉が開けられ、唯花と母親が驚いた表情で雪焔を見る。

 やってくれたな校長先生…と自分の背後に隠れる彼女に目線だけで恨み節を送ると、腹を括って雪焔は病室へと足を踏み入れた。

 「あ!せつえんさま~。もう元気になったの?」

 前と変わらない…ように見える唯花の様子に、雪焔は少したどたどしく頷く。

 「うん。元気だよ、唯花も元気かな?」

 明るい口調で話せた気がするが、自信はなかった。

 唯花の顔の右半分は包帯が巻かれている。その包帯の下、右目があるはずの場所には痛々しく大きな眼帯がつけられているのだろう。

 「わたし?とっても元気!もうすこしで退院できるんだって!そうしたらまたみんなと遊べるんだぁ」

 そう言って手を叩いてはしゃいで見せる唯花の様子を見て、雪焔は僅かながら違和感を抱いた。

 「あの…お母様。もしよろしければ、唯花と二人で、お話しさせてはいただけませんか」

 ふと湧いた願望を、雪焔はそのまま口に出す。きっと、この申し出は間違っていないはずだ。

 「え、えぇ…。それがいいと思います。校長先生も、一緒に出ましょう」

 あいよ、といいながら、校長も母親と一緒に出て行った。唯花の様子に、母親も違和感を抱いていた、ということなのだろう。

 バタン、と扉が閉まったことを確認し、雪焔は寝台の脇にある椅子へ腰を下ろした。

 「ねぇ、唯花…」

 ニコニコとした顔を自分へ向けてくる少女に、一瞬のためらいを覚えながらも問いかける。

 「あなた、―何を無理しているの?」

 ニコニコとした表情を貼り付けたまま、少女の顔は凍ったように見えた。

 長い沈黙が続く中で唯花は雪焔から視線を外し、目の前に置かれた机と、その上にある湯呑み茶碗を残った左目でじっと見ている。  

 雪焔は、この沈黙を唯花と一緒に待つことにした。

 多分、この子は話したくないのではない。この沈黙は、必死に言葉を探しているんだ。だから、私は唯花の言葉を待つ。唯花と並んで壁を乗り越えるために。

 「…お茶碗がね……」

 ぽつりと唯花が話し出した。

 「お茶碗がね、うまく取れないの。指の先で滑っちゃったり、奥に押し込んで落としちゃったり。ずっとできてたのにね…」

 齢7つの少女が直面する重すぎる現実に、しかし雪焔は無言で耳を傾ける。まだ、続きがあるはずだから、と。

 「それにね。右側が見えなくなっちゃったから、よく何かにぶつかっちゃうんだ。この前廊下を歩いてたらお医者さんの台にぶつかちゃって注射とか全部落としちゃった…」

 えへへ…と笑うその表情は、とても7歳には見えない、深い諦観の念を含む笑顔だった。

 「羨ましい…」

 ふと、唯花が独り言のようにつぶやく。

 「みんなと同じことができなくなちゃった。半分見えなくなっちゃった。お母さんのお手伝いもできない。せつえんさまにお弁当を届けるのだって、危ないって言われた…。もう、何もできなくなっちゃった」

 わなわなと、布団を掴む手が震えている。大の大人でさえ辛い現実だ。それをこの子は、必死に受け止めようとして、身に降りかかった事実を一つ一つ確かめているんだ…。

 でも、今はそれのせいで自分の存在そのものに疑問がついてしまっているのかもしれない。

 気づけば雪焔は唯花に顔を近づけ、抱きしめていた。少女の息遣いが右の耳に入り込んでくる。

 この子は、本当に強い子だと思う。おそらく泣き崩れたい気持ちをぐっとこらえて、必死で自分にできることを探したのだろう。できない、できない…その連続で。目が覚めてからここまで、そればかり突きつけられて。

 それでも、必死で、必死で…。


 「…泣いていいよ」


 雪焔は耳元で優しく囁く。

 そう、何もかも止めて、ただひたすらに泣くことがあってもよいのだ。泣くことにも飽きて、ちょっとだけ顔を上げた先に見える未来。それが少しだけ明るく見えていればいいのだ。

 ―その未来は、私が必ず作って見せる。

 首筋を伝う温かな感覚と腕の中の小さな震えを、雪焔は決して忘れまい、と誓った。


 ひとしきり泣いたあと、目の周りと鼻の頭を赤くしながら、唯花は不機嫌そうに雪焔を見る。

 「むー。泣かないって自分で決めてたのに!」

 「ごめん。ごめんね」

 何とか機嫌を直してもらおうと、雪焔は全力で謝り倒している。

 「私はもう、せつえんさまみたいにはなれないのかな…。髪の毛は短く切られちゃったし、こんな顔じゃあ、綺麗なんて言ってもらえないだろうし…。いつかこの場所を守りたいって思ってたけど、もう弓も使えなくなっちゃった…」

 少女の表情がまた暗いものへと変わる。

 「前はさ。せつえんさまみたいになるぞって頑張ってた自分が結構好きだったんだ。でも、今はそんな自分もいなくなっちゃった。いいなーって思うだけの自分しか、今はいなくなっちゃったよ…」

 寂しそうに語る少女を雪焔はまっすぐに見つめる。

 自分が伝えたいことを、ゆっくりと目の前の少女に語り掛ける。

 「唯花…。私は、あなたを守り切ることができなかった。それで、あなたは世界の半分が見えなくなってしまった…。本当にごめんなさい」

 雪焔の謝罪を、唯花は静かに、受け入れるかのように聞いている。

 でも―、と雪焔は続けた。

 「私はあなたに約束する。片目を失い見える世界が半分になったあなたが、今よりもずっと笑える未来のため、私はこの世界を幾億倍もの希望で溢れるものにしてみせる。あなたがこの先、悲しむことがないように、私、本気で頑張るわ」

 自分の手を握りながら語り掛けてくる雪焔は心から本気で自分に語り掛けている。握りしめた手から伝わってくる熱い感覚だけで、自分の気持ちが前向きにさせられていくのを唯花は感じていた。

 「だから、唯花。羨ましさに閉じこもらないで。私じゃなくてもいい。なりたい自分を追い求めて。あなたは強い子だもの、きっとそれが見つかるはずだよ、だから―」

 言葉を詰まらせながら、目の周りを赤くさせながら―

 「強く、強く生きてね、唯花」

 目の前にいる自分の“憧れ”は、自分のために一筋の涙を流してくれた。


 

 

 「――とまぁ、こんなことがあって、なんやかんや今に至る、っと」

 「そのなんやかんやも気になるんだが…」

 静焔が無理やり話を締めたところで、馬順がすかさず突っ込む。

 悲しい出来事だと思う。そんな場面に当事者として向き合わざるを得なかった雪焔の心中はいかがなものだったか…。同い年の自分がもし同じ場面に出くわしたら、と霆華は想像する。

 「なに、あの出来事のあといきなり俺もところに雪焔がやってきて、『自分を前線へ行かせろ!』なんて言うもんでよ。一度は却下したんだが豪角の奴が異常に雪焔の肩を持つもんだからよ…。渋々認めてやったわけ。そぉしたら、これよ」

 おそらく豪角の旦那も思うところはあったんだろうが、こんなことになるとは思ってなかったんだろうなぁ、と霆華は予測する。精々、敵を前線で食い止めて奥まで来させないため、程度に理解したんだろう。

 「じゃあ何か―」

 と、馬順がここまでの情報から彼なりの結論を示す。

 「雪焔は、唯花っつーガキが安心して暮らせるように、単騎で魔軍を滅ぼすために飛び出したってのか」

 まぁ、恐らくそうなんだろうな、と静焔と霆華は頷く。

 かーっ、と馬順は天を仰ぐ。

 「ほんと、超がつくほどのお人好しだ…」

 呆れたようにつぶやく馬順の声は、焚火の煙とともに夜空へ舞い上がり、消えて行った。

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