第一章『“選ばれし者“』と“そうでないもの“

ハンターズギルド

 この一週間、本当に色々なことが起こった。

東京壊滅。ダンジョン出現。海外通信不可。能力者出現。新組織発足。はぐれ魔物の出現。物流の停滞。突然変異した動物や植物。

 正直いえば実感が湧かない。

だが、問題は確実に発生している。


「うぅーん。味気ないねぇ」

「だね」


 私と永夜は、変な種を口に一粒口に放り込んで呟く。

 これも起こった問題の一つと言えるだろう。

この一粒がなければ、飢え死にしていたかもしれないのだから。


 ハンターズギルド。

この組織が及ぼした影響は計り知れない。

その一つがこの種。

無味無臭。ダンジョンからとれたという果実の種を加工したやつ。

なんとこれだけで一日分の栄養が取れる完全食だ。


無料タダでもらえるだけありがたいと思いなさい」

「そうだけどさぁ。なんというかぁ。はあ、トーストが恋しい」

「わかるけどさ……不老不死って食事をする必要はあるの?」

「別に不老不死でもお腹は減るよぉ! これ一つじゃひもじいよ!」


“うーん明日の分も食べちゃおっかなぁー“と言ってる永夜に、

お腹ゆるくなるよと忠告しておく。

 ……こんな感じでうちは呑気なものだが、本当に今、日本は危機的状況らしい。


「……何が起こっているのやら」


街でもらった新聞を手に取り、つぶやく。

そこには大きく「日本……いや、世界の危機? 何が起こってるの?」と書かれている。

ここ数週間はこんな話題しか聞いていない。


「うん。やっぱりボクがこっちにきたのにも関係してるんだろうねぇ」

「気になる?」

「うん。調べないと気が済まないね。大きなことでも、どんなどうでもいいことでも。前みたいなこともあるしね」


 “魂を分ける術式を開発した研究者“、だったか。

永夜の目的は“知ること“。そんな小さな思い出しでも確実な一歩だ。


 と言ってもこれに関しては調べる方法は……


「やっぱ行くしかないねぇ」

「え? どこに?」

「決まってるでしょ」


 永夜は悪戯っぽく笑い、私の両肩を掴む。


「ハンターズギルドぉ!」



 隣町。

よく、どこの隣町と聞かれるが違う。この町の名前が隣町だ。

隣にある町は隣町なのだ。


「このコンビニが支部なのかい? なんというかしょぼいねぇ」

「当然でしょ。この街にはダンジョンがないんだから。ここはただの物資の中継地点よ」

「え。登録はできるよねぇ?」

「一応。本部に移動とならないといいけどね」


 建物の中に入る。

どうやら留守のようだ。


(……配給の日じゃないからかな? だとしても一人くらい置いておいて欲しい)


 仕方ない。今日は諦めるかと永夜に言おうとした矢先、ドアの開く音がした。


「おや? どうしたんだい? 配給は今日じゃなかったはずだけど」

「えっと? ここの職員の方ですか?」

「ええ。私の名前は鳴楼なろうロイドと言います」


 キラキラネームというやつだろう。

そのオーラと顔面と頭髪も同じようにキラキラしている。


「あ。ハンターズギルドに登録したいんですけど」

「……超能力はお持ちで?」

「あーこっちの黒い方……永夜は持っているんですけど、私はまだわかんないです」


 ロイドとやらは考える素振りを見せる。


「自覚している変化は?」

「身体能力が向上しました。5m跳躍してゾン……魔物を両断できるくらい」

「ほう……確かに覚醒者に見られる兆候ですね……そちらの方は?」

「不老『言わない方がいいって!』んっ影を操る能力だよぉ」


 どこからか取り出した紙に、メモしていくロイド。

華麗にペン回しを決め、“決めたっ“とばかりに顔を上げる。


「お名前は?」

「神室深紅です」

「神室永夜だよぉ」

「よし、試験をしましょう」


 まあ、そうかと思った。ハンターズギルドは超能力者、または魔法使い限定の組織だ。

超能力を持っているかなんて見ただけじゃわからない。

試験といっても能力を使えるか見るだけみたいだ。


「じゃあまず、これに触れてください」

「……これは?」

「これは最近、迷宮で出現したものです。超能力者の波長に反応して発光するとか」


 迷宮では、今まで考えられないような品々が出土しているらしい。

これもその一つ。超能力者の他にダンジョンにも反応するみたいだ。

 手で触れてみる。

白く淡い光が石の中から溢れ出した。


「うん超能力が発現していますね」

「うへぇ〜ご都合展開な石だねぇ。結構利用できるんじゃないかい?」

「現在研究が進んでいるようだね。超能力者のみが使える装置とか」

「なんというかねぇ」

「まあ、格差は生まれるでしょうね。ある程度は仕方がないことです。外行きましょう」


 永夜の石も確認し終え、次は外に出る。

コンビニの駐車場にコーンを適切な大きさで置いたロイド。

 あのコーンに超能力を使えってことだろうか。


「このコーンに向かって超能力を使ってください。別に当てなくても大丈夫ですよ」

「“影浪“」


 説明を聞き終えるや否や、剣を生成しコーンを刺し貫いた。


「……ちょっとは待ちなさいよ」

「てへぺろ⭐︎」


 まあ、永夜に関してはいい。

問題は私だ。

……やってみるしかない。か……


「ふー」


 手を突き出し頭の中で、超能力、超能力と念じる。


「はああああああああああああああ!」


 力んで叫ぶも、何もでず。

ただ口から気迫のこもった声が出ただけ。


「プッ。ダサッ。見た目だけにしとけよぉ」

(こいつ嫌いだぁぁぁぁぁ。そして恥ずぅぅぅぅぅ)


 まじで、洒落にならないほど恥ずかしい。

今、顔は真っ赤に染まってるだろう。


「超能力も魔法もぉ、魔力を巡らせないとできないよぉ?」


 永夜はそんな気持ちも知らず、手を包んで握る。

もちろん、永夜の口から「ごめん。言いすぎた」はでない。


「ほら、ボクの中を感じてみて」


 中を感じるとはどう言うことか?

そんな疑問を目線で向けるも答えてはくれない。


 中。中。内側。内側。


「ん? この血みたいなの……いや? 血……じゃない?」

「そう、あってる。それを自分の中を巡らせるんだぁ。腹に力を込めるとやりやすいよぉ」


 腹に力を込め、自分に流れる血ではない何かを血のように巡らせる。

難しい。

 ん? 永夜と違って脈が二つあるような気がする。

これ、どっちを使えばいいんだろう?


 その時、私のIQが唸り出す!

“両方使えばいい“


「うおっ」


 永夜が驚いて手を離す。体が発光している?

体が軽い。どこまでも飛べそうだ。


「ふッ! オラッ! ハアッ!」

「おーすごー」


 ジャンプ力は二倍ほどに跳ね上がり、拳は風を切り、蹴りは大蛇のように唸る。


「身体能力が異常なほど増加している?」

「まだなんかいける!」


 あたたかいものを巡らせながら手を突き出す。

すると光の玉が出て、コーンに着弾した。

 コーンは倒れる様子もない。

ただ、光沢がさっきよりも出ているような気がする。


「ただ光沢を出す能力?」

「試してみようか。“影浪“」


 永夜が影の銃を生み出し、発砲。

放たれた影の銃弾はコーンで跳ね返り、永夜のほおをかすめた。


「イテッ。やっぱ反射したねぇ」

「ふむ。反射能力を付与する能力か。効果は一回きり……。

うん。二人とも初めて確認される能力だ」


ロイドは懐から冊子を取り出し、確認し始める。

私(永夜含め)とロイドの間に緊張が走った。


「どう?」

「……うん。文句なしに合格。だね。ようこそ、ハンターズギルドに」


 ヨシ。

自然な流れで、永夜とハイタッチする。

息があってきたな。


「しかし、合格といったが、君たちはまだ学生のようだね。 

風の噂程度だが、再開するようだぞ?」

「はへぇ。この状況でね」

「若者は宝だ。それにこの件にハンターズギルドも一枚噛もうとしてるからね」


 再開するのか。

少し、複雑な気分だ。

まあ、喜ばしいことだろう。


「そういうことで、本部への移動はなし。できる範囲でいいから力なき人たちを守る。それだけでいいよ。学校を優先してくれ」

「わかりました」


 ロイドは強く頷き、何かに気づいたように一冊の本を差し出した。

その本をみて、永夜がニヤつく。


「へぇ。よくわかったねぇ」

「ふふふ。これが俺の能力、“超勘“。俺の勘はよく当たるのさ」


 なんというか、便利な能力だ。

雨が降ると思ったら雨が降るんだろうし、敵が転ぶと思ったら転ぶんだろう。


「その認識で相違無いよ」

「!?」

「ふふふ。勘さ」


 ……恐ろしすぎる能力だ。


「しかし、いいのかい? 私たちがなんらかの組織のスパイかもしれないよ?」

「それも……」

「“勘“ってわけねぇ」

「ああ」


 永夜は本をパラパラとめくり、パタンと閉じる。


「ま、この本はありがたく受け取っておくよぉ」

「ああ。そうしてくれ」

「えっと、色々ありがとうございます」

「礼などいらないよ。これが役目だからね」


 ……非の打ち所がない素晴らしい人だ。

全く、永夜も見習ってほしいものだ。

まあ、何を比べてるのかっていう話だけど。


「じゃあ、また会う日まで。君たちとは学校で会えそうな気がするね」

「うえぇ。怖いねぇ」

「あはは。じゃあまた」


 学校か。

そういえば、あの校舎は治すのだろうか?

まあ、直さないな。交通を考えるとメリットがない。


「今気づいたけど、車ももうすぐ使えなくなるのか」

「使わないでしょ」

「私たちはね」


これからどうなるのか。

そんな不安を胸に残し、学校が始まる憂鬱さに沈むのであった。

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