第16話 追い詰められた黒幕



 夜の校舎は静寂を纏い、蛍光灯のちらつきが影を揺らす。

 凌、真帆、瑠奈は、颯馬の目を見据えて立っていた。

 その瞳には冷たく計算された光が宿り、まるで凌たちの心理まで読み取ろうとしているかのようだった。


「……君たち、よくここまで来たな」

 颯馬の声は低く、部屋に張り詰めた緊張と混ざり合い、空気が震える。

 その表情は穏やかだが、まるで獲物を狙う捕食者のそれだった。


「……あなたが、学校の計画の全てを裏で操作していたのか」

 凌の声は震えながらも力強く、拳を握りしめていた。

 副会長は微かに笑い、机に手を置き、ゆっくりと歩み寄る。


「計画の維持は、秩序を守るためだ。だが、彩音の行動が全てを狂わせた。

 君たちがここまで迫るとは、予想外だった」

 その言葉の裏には、挑発と計算された揺さぶりが含まれている。


 凌は心を落ち着け、資料を広げる。

 封印テープ、監視カメラのログ、出席簿――全ての証拠を手に、副会長の策略の矛盾を見つけ出そうとする。

 しかし、副会長は一歩も譲らない。心理戦が始まったのだ。


「……あなたは、逃げ道を作っている。

 誰かが私たちを止めると、計画を正当化するために犠牲者を増やすつもりだろう」

 真帆の指摘に、颯馬は微かに眉をひそめる。

 だが、口元に微笑を残し、冷静に答えた。

「その通りだ。だが、君たちも無傷では済まない。選択は君たち次第だ」


 瑠奈は震える声で言った。

「……でも、彩音さんを守らないと……」


 颯馬の目が鋭く光る。

「守りたいなら、ここで戦う覚悟を持て。逃げることは許されない」

 その言葉に、部屋の空気がさらに重く張り詰める。


 凌は深呼吸をし、拳を机に打ちつけた。

「……わかった。逃げはしない。真実を明らかにするために、どんなことがあっても立ち向かう!」


 颯馬はその言葉を聞き、静かに頷く。

「……よかろう。ならば、次は証拠と心理で君たちを追い詰めてやろう」


 夜の校舎に、二つの意志がぶつかる緊張が満ちる。

 封印テープと崩れ落ちた資料を胸に、凌たちは颯馬の策略に挑む覚悟を固める。

 しかし、颯馬もまた、想像以上に巧妙な心理戦で三人を翻弄しようとしていた。


 窓の外で冷たい風が吹き抜け、廊下の影が揺れる。

 夜の生徒会室は、心理戦の舞台として完璧に整っていた――。


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