硝子の告解

紅葉台 澪

プロローグ 白い朝、硝子の音

 十月の朝、校舎の中庭に硝子の割れる音が響いた。

 誰かが叫び、駆け寄る足音。

 白い制服が風に揺れ、黒い靴が地面を叩く。


 ――その中心で、少女が倒れていた。

 血は、驚くほど静かに広がっていた。

 まるで、朝露のように。


 通報が入ったのは午前七時三十分。

 県立東ヶ丘高校の放送部室前で、

 二年生・佐伯 彩音(さえき あやね)が死亡しているのが発見された。


 現場には割れた窓ガラス、そして血のついたマイク。

 警察は事故と自殺の両面で捜査を進めるが、

 クラスメイトの神谷凌は、その報せを聞いた瞬間に確信していた。


 ――これは、誰かが意図的に仕組んだ死だ。


 彼はまだ知らなかった。

 この事件を追うことが、

 自分自身の過去と、学校全体に隠された「真実」を暴くことになることを。


 風が止み、鈴虫の声が消えた。

 硝子のかけらが陽にきらめく。

 誰かの嘘を映すように。

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