第11話 帰ったら2人っきりに

 最後の魔物の大量依頼も無事に終わらせて、俺たちはようやく一息ついていた。


「これで全部の依頼が終わったなぁー! 結局、美味しいところは全部、マルテに持っていかれたが……まあいいや! アタシの武器の切れ味は今回もバッチリだったしな! いやー、自分の武器たちが活躍しているところを見るのはやっぱりいいなぁー!」


 ジーナさんが大斧を肩に担ぎながら満足げに笑う。


「わたしも色んな魔法の組み合わせを試せて良かったよ〜。まあ、強い魔物はほとんどマーちゃんが瞬殺してたけどねぇ。でも楽しかったからいいかなー」

 

 セフィアさんもぽわぽわ楽しげな微笑みを浮かべていた。


「俺も結構、倒せて良かったです! でも、1番倒したのはマルテさんで強い魔物も瞬殺していましたからね。今日のマルテさんはなんというか、迫力がありましたね!」


 そうして俺たちはマルテさんに一斉に視線を集めた。


「す、すみません皆さんっ。今日はつい、力が入ってしまって……」


 マルテさんは申し訳なさそうに俯き気味になった。


「別に怒っているわけじゃねーよ。ただ、普段は冷静に周りを見ながら動くマルテが、あんなに率先して前に出てくるのは珍しいなーって、そう思っただけだ」

「そうそう! マーちゃんって、わたしとジーナちゃんが前線でガンガン攻めるのに対して、その後ろで冷静にかつ確実に敵を倒すスタイルだったし〜」


 確かに、今日のマルテさんはいつもと戦い方が少し違っていた。

  

 ゴブリンキングのように強くて厄介な魔物が現れた次の瞬間には、その鮮やかな剣捌きでほぼ一撃で倒していた。


 でも、その後のマルテさんは達成感や喜んだ様子とかはなく……。


 でもまあ、結果的にはマルテさんは強かった。


 とまあ察すると思うが……このパーティー、結構強い。

 

 いや、結構強いどころじゃないな。

 

 圧倒的に強い。

 

 俺は女神様から貰ったチート能力【無限の魔力】があるから、ある程度の強さはあるとして……他のメンバーだ。


 勇者パーティーの母親ばかりが集まっている時点で普通じゃないのに……。


 全員が実力者で、冒険者としても普通ではなかった。


 子どもたちが強いと、母親たちもやっぱり強いのか?

 いや、逆か。

 母親が強いからこそ、子供たちも強くなった。

 

 母は強しというやつかな?

 でもまあ、いくら強いって言っても、あの魔王を倒した子供たちよりも強いなんてことは……はは、まさかな?


 俺も俺で3人が強いからそんなに目立って活躍できていないけど、無事に追放されたら無双するぞー!

 

 それから依頼を受けていた村へと戻り、完了報告を済ませる。


 最初会った時は不安が漂っていた村の人たちも、今では表情が明るいものになって……。


「いやー、あんたら本当に強いな!」

「助かったよ! 本当にありがとう!」

「これで魔物たちに怯えることなく、仕事ができるわ!」


 日常を脅かす魔物たちがいなくなって安堵と喜びで顔が緩んでいる人たちが半分。


「よければ、うちで食事していかないか?」

「ぜひ、詳しくお話を……」

「休日とか、何をされてるんですか? 良ければ、今度はプライベートで……」


 もう半分は……別の意味で顔が緩んでいそうだ。


 てか、全員男だな。

 村の男たちが口々に3人に言い寄っていた。


 これがもし、美少女パーティーだったら、そのままの意味かもしれない。


 魔物討伐のお礼として食事を振る舞いたくて。

 冒険者としての話を聞きたくて。

 休日は何をしているのか、興味本位で気になって。

 

 そんな、ただの純粋な気持ち。


 でも、母親たちのパーティーとなれば……。


「や、やべぇな……」

「デカすぎるだろ……」

「うちの妻も綺麗だと思ってたけど、あの3人は次元が違うな……」


 男たちの視線はあからさまに胸元ばかりに集中している。

 柔らかそうでもっちりとしていて、弾力があって……そんな両胸から目を離せないでいる。


 口角も上がりっぱなしで分かりやすい。

 あと、後ろの女性陣が妙に怖い顔をしているし。


 3人は誰もが釘付けになる絶世の美女だ。

 年齢を重ねた大人の色気や包容力があり、ひとつひとつの仕草も魅力的。


 そして、言わずもがな抜群のスタイル。

 

 視線を集めたり、口説かれるのは、もはや必然とはいえ……。


「あー、そういうのは全部お断りだ。それに、アタシらは冒険者として当然の仕事をやっただけだからな」

「ですので、頂くのは感謝の言葉だけで十分ですよ」


 ジーナさんとセフィアさんはあまり表情を変えることなく、淡々とした口調で男たちの誘いをバッサリ断った。


 ちなみに、前の2つの依頼元の村でもこんな感じだった。

 モテるっていうのも大変そうだよなー。


「なぁ、兄ちゃん。アンタ、同じパーティーなんだろ? 良かった彼女たちを……」

「俺にはどうすることもできませんよ」


 俺も俺でキッパリ断るのだった。

 

 そうして、帰っている時。

 

「ったく……どこ見てんのかバレバレだっつーの」

「ほんと、男の人ってすーぐ胸見るんだから〜」

 

 ジーナさんとセフィアさんからそんな言葉が漏れた。


 さっきは大人の対応をしていたけれど、毎回こうだとさすがに不満が溜まるよな。


 そして俺としては……肩身が狭い思い。

 

 だって、俺はそれより以上のことを。 セクハラをしてきたのだ。

   

 内心では男たちよりも嫌がられているに違いない。


 なのに……未だに追放されていない。

 なんでだろう?

 

「ねえ、ユーガ君」

「あ、はいっ。……どうしましたか、マルテさん?」


 隣を歩くマルテさんが小声で耳打ちして、俺も小声で聞き返す。

 

「……あの約束覚えていますか?」


『依頼が全部終わったら、その後……2人っきりになれませんか?』


 マルテさんにそう言われて俺はすぐに思い出す。

 

 そっか。もう依頼は全部終わったから……。


「もちろんですよ」

「それなら良かったです。では、帰ったら……」


 俺が大きく頷けば、マルテさんは少し垂れ目で優しげな目を細め、微笑んだ。

 

 それにしても、マルテさんは俺と2人っきりで何をするのかな?

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