第6話 セクハラ辞めても良くないか?
魔王を討伐した。
この異世界で何百年と続いていた魔族との戦争。
その元凶であり、頂点に君臨していた魔王を――勇者パーティーが討ち取ったのだ。
魔物を倒したのとは話のベクトルが違う。
その盛り上がりは……今を見れば分かる。
街中にあふれる歓声が、人が、そのとてつもない快挙を物語っていた。
「うおおおおお! 勇者パーティー!! お前らスゲェーよ!!」
「遂にやりやがったのか!!」
「ありがとうーー! これで平和に大きく近づいたぞぉぉぉぉ!!」
「きゃー! 勇者さまーっ。こっち向いてーー!」
「バンザーイ!! この5人の英雄様にバンザーイ!!」
ガッツポーズをして叫ぶ人や涙を浮かべている人、満面の笑みで声を掛ける人……通り道はどこも人で埋め尽くしていた。
大量の人々の視線の先にいるのが……。
馬に引かれながらゆっくりと進む、華やかなフロートの上には、5人の男女混合パーティーがこちらへと手を振っていた。
そう、あれが勇者パーティーだ。
今じゃ、世界に名を轟かす存在だろうな。
魔王軍の残党や魔物の脅威はあるとはいえ……魔王を倒したことは平和への大きな進歩だ。
しかし……俺の心が汚れているからかな?
勇者パーティーって、まともに魔王をやっつけるんだと思ってしまった。
大体がその前に追放ざまぁされていて……。
こんな時にいかんいかん!
あれはあくまで創作物の話だよなっ。
うん! 彼らこそが本物の勇者パーティーだ!
そんな勇者パーティーのパレードに俺とメンバーたちも当然、見に来ていた。
ちらりと隣を見れば……マルテさん、セフィアさん、ジーナさんが涙ぐんで喜んでいた。
他の人とはまた違った感情もあるのだろう。
そりゃそうだよな。
勇者パーティー5人のうち、3人はそれぞれ自分の子供なんだから。
◆◆
その日の夜も更けた頃。
いつもなら静かに各々の時間を過ごしているところだが……今日はにぎやかな声が響いていた。
お客さんが来ていたからだ。
誰かと言えば、もちろん……。
「お帰りなさいみんな! え? 手紙ずっと読んでいたよ? ふふっ。少し恥ずかしいですね」
「3人とも無事で良かったわ〜。わたしの方も楽しそうで良かった? 理由を聞かせてもらうから? もう〜♪」
「アタシの武器も役に立って良かったぜ。武器のこと以外にも今日は聞かせてもらうって? ばっ! お前なぁ〜」
訪問者は、勇者パーティーの3人だ。
そしてマルテさん、セフィアさん、ジーナさんは自分の子供と話していた。
でも、マルテさんたち3人の頬が妙に赤くなっているのは……先ほどまでお酒を飲んでいたからかな?
しかしながら、まさに感動の再会。
自分の子供が魔王討伐に成功した以前に……無事に帰還したことは、この上なく嬉しいだろう。
そんな温かい雰囲気の中……勇者パーティーの1人である青年がこちらへ近寄ってきて。
「ユーガ。僕たちがいない間、母さんたちを守ってくれてありがとう。代表して礼を言うよ」
マルテさんの息子であり、騎士団長の金髪イケメンが朗らかに笑う。
笑顔が爽やかすぎて直視できなし、勇者パーティーのリーダーでもあるから恐れ多いよな。
「いえいえ! 俺は大したことはしてませんよっ。それより、皆さんが無事で本当に良かったです! 改めて魔王討伐、おめでとうございますっ!」
俺がそう言えば、彼だけではなくて他の女子2人も「ありがとう」と笑って返してくれた。
さて……この母親属性しかいないパーティーを抜けたいなら、自分で「辞めたい」と言えば良くね? と思うかもしれない。
だが、俺はそれができなかったのだ。
何故なら、ここにいる勇者パーティーの3人に「母さんのことは任せた」と言われたから。
そんなの……断れる訳ないじゃん?
俺は「もちろんっ」と笑顔で返しちゃったのだ。
だからこそ、嫌われてパーティーを追い出されれば、それは仕方ないこととして3人も納得してくれたはずだった。
でもまさか、魔王討伐がこんなに早いとは思わなかったけど。
思考を戻せば、母親たちと子供たちは楽しそうに話していた。
せっかくの親子の時間なんだ。
俺は一旦、席を外そうかな。
「積もる話もあるでしょうから俺、買い出しに行ってきますね! おつまみとか、お菓子やジュースやお酒とか! じゃあ行ってきますー!」
「あっ、ユーガ君、待っ――」
俺はすぐにリビングを出た。
マルテさんの声がした気がするけど、帰ってきた時に聞けばいいよな。
街へ出れば、夜遅いというのにすごい賑わいだった。
こりゃ、朝までこのままだな。
今日は街中が魔王討伐お祝いムードなので、色々と特売がやっているよなー。
それに、勇者パーティーには国王様から直々に報酬を聞かれて、それを与えてもらえて……。
そんな時、俺にはある考えがよぎった。
勇者パーティーの3人と母親との関係は、見ての通り良好だった。
ならば、親孝行として何か、母親たちにするのではないか?
それこそ、冒険者なんて危ないことをさせずに、ゆっくり過ごしてほしい。
とはなれば、このパーティーのメンバーは自然と俺1人になって……。
「あれ? これ……俺、セクハラ辞めても良くないか?」
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