セクハラ辞めたらパーティーメンバー全員病んだ。なんで?

悠/陽波ゆうい

第1話 パーティーメンバーって普通、多種多様じゃん?

 パーティーメンバーとは、冒険者として活動するうえで最重要事項の1つだ。


 「力こそ正義!」とばかりに敵をぶっ倒す脳筋全振りタイプでいくのもよし。


 逆に、盾役とヒーラーを組み込んで安定重視にするのもよし。


 気の合う仲間とのんびりしながら時々、魔物退治に出かけるゆる~い旅スタイルも悪くない。


 飯が美味けりゃそれで良しみたいなスローライフパーティーもいいよな。


 だが……男女混合パーティー。


 こいつには、注意が必要だ。


 なぜって? 

 

 恋愛沙汰だよ、恋愛沙汰。


 いやね、最初はみんな「仲良し! 冒険! 青春ファンタジー♡」みたいな感じだけど……。

 

 恋愛沙汰でいざこざ起きるわ、やれ三角関係だの浮気だの、寝取りだの……。


 最悪、追放ざまぁコース一直線だ。


 まあ、みんなそれぞれに性格があるし、種族も別々。得意不得意もあり……多種多様だ。


 パーティーメンバーは重要だが、結局のところ、どうなるのかは予測できない。

 

 『ご縁』ってやつでしかない。


 ──と、偉そうに語ってる俺だけど、実はこの異世界の人間じゃない。


 そう、俺は転生者側だ。

 

 前世は、ごく普通の高校生だった。


 いや……ある意味、普通じゃないな。


 両親は早くに亡くなり、食うのがやっとのバイト生活を送っていた。


 過労死まっしぐらの人生だったが、ある日、視界が真っ黒になり……。


 目が覚めたら、辺り一帯が真っ白な空間。

 身体には力が入らなくてフワフワとしているけど、どこか心地よくて、目の前には……。


「うわああああっ! 本当にごめんなさいぃぃぃ! うっかり死なせてしまいましたあああ!!」


 女神様がいた。


 艶やかな金髪の美人で、綺麗で、包容力があって、慈愛に満ちていて、おっぱい大きくて……。


 やらかし体質も兼ね備えていた。


「異世界転移の前に、せめてものお詫びとして貴方にはお好きな能力を差し上げます!」


 女神様にそう言われ……俺が選んだのは【無限の魔力】

 

 王道のチート能力だが、結局これが1番強い。

 

 剣も魔法も召喚も全部あれこれやりたい!

 そんなワガママを可能にするべく、その元になる魔力を無限にしてもらうことで実質、なんでもできるってわけ!


 女神様はとてもいい人だった。 


 俺のことを間違って殺してしまったと涙目になりながらペコペコ謝ってきたけど……。


 正直、俺としてはこれで良かった。


 どっちみち過労死で死んでたのだから、それが女神様の手によって痛い思いをすることなく、しかもチート能力までくれて異世界に転移させてくれる。


 第二の人生、最高じゃねーか! 


 無自覚、無双、ハーレム全部やるぞおおおおおお!!


 この時の俺は、完全に浮かれていた。

 

 人間、浮かれている時というのはついぽろっとが出てしまうもので……。


「しかし、女神様みたいな綺麗で母性溢れる女性ともう会えないなんて寂しいですね。パーティーとか組んで一緒に冒険できたら、楽しかっただろうになぁー」


 俺がぽつりと呟けば……女神様は目をぱちくりとさせた後、にっこり微笑んで。


「そんな風に思っていただけるなんて嬉しいです。そういえば、貴方は早くにお母様を亡くされていましたね……。では、貴方には素敵ながありますよう、お祈りしておきますね!」

「ありがとうございますー!」


 俺は元気良くお礼を言った。


 何も深くは考えず、今後にさほど影響はないと思っていた。


 思えば……この時がいけなかった。


 異世界転移してから無事にパーティーを組めた俺だったが……で今、猛烈にパーティーを抜けたい。

 

 いや、ここは追放されるべきだ。

 

 しかしながら、俺が追放されるのも、時間の問題だろう。


 なんたって俺は……パーティーメンバーにしてきたから。

 

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