25曲目 俺の寝覚めは”イェッタイガー”
なんとも温かい布団の中。
温度どうこうを言っているのではない。
気持ちが満たされていく。
あの雪さんが、今は俺の彼女さんの柚季さんだ。
昨晩、柚季さんの”柚季さん”には大変お世話になった。
充分な準備をしていなかった俺と柚季さんは「最後まで」することはなかった。
それどころか、俺が
初彼女だ。
少しくらいそんな気分もわかるだろう?
もちろん見たことない柚季さんの顔を見てみたいという気持ちはあるのだが。
直ぐに「致して」しまうことは簡単だけど、それよりも彼女を抱いて眠りにつくことが、今の俺にはかけがえのない瞬間だったのだ。
下手したら下手くそで、苦悶に歪んでしまう顔なんかより、安心した顔を眺めておきたかった。
俺たちは、朝日が顔を出して部屋が薄明るくなるまでスースー眠っていたようだ。
目を覚ますと、横で寝顔まで美しく、安らかに眠る絶世の美女は柚季さん。
小さな身体が寝息を立てて、まるで笑っているかのような顔で、穏やかに息を繰り返す。
横目ではそう見える。
俺は思いのほか寝つきが良かった。
一日、驚天動地の変化があったからだろうか。
身体は休息を必要としていたらしい。
寝込みを襲ってしまうほど、まだお互いの事は何も知らない。
けど、寝床を共にできたことはアイドルヲタクからすれば大きな一歩?
そんなことを思った。
ここまで、真面目過ぎたな。
すまん。
本音は、めっちゃ、めちゃくちゃにしたい、悪戯したい……。
イントロが流れ始めたヲタクのように、Mixを打つこの衝動は止めることはできない。
俺は柚季さんに気が付かれないように――身体を柚季さんと向かい合わせにする。
人形のように整った顔をいつまでも眺めていたい。
なぜか抱き枕にされている右腕は柚季さんにガッツリホールドされている。
体勢を整えるのが難しいが、俺のケツを彼女から遠ざけるように……。
右腕の位置を変えないように……布団の中で移動する。
起こさないように。
慎重に……慎重に――
どうしても初彼女の寝顔を眺めて過ごしたい俺。
それは……それは……時間をかけて体勢変更に成功した。
目の前で無防備に眠る柚季さん。
この方は地元でアイドルをするほど容姿が整っているのだから、少しくらい気を抜いて不細工な寝相をしていることに期待をしていたのだが。
美しいものは美しいし、多分可愛いものが可愛くなくたって可愛い。
俺は可愛いに絶対服従のアイドルヲタクなのだからどんな顔でも許せる、推せる。
目の前の血色のいい瑞々しさ溢れる唇は一晩経ったとて艶やかで、触れたくなる魔力がある。
昨晩、このお方とキスまで済ませた。
これから何度かは触れ合うこともあるだろうと思うと、妙に恥ずかしい気持ちがぶり返してくる。
そんな弱気を一旦捨てて、俺は次の任務へと進む――
左腕を彼女の身体に回してきて、どうしても柚季さんの頬を触りたい。
このくらいなら怒られないはずだ。
昨日は恥を忍んで、柚季さんの”柚季さん”に埋まった俺だ。
今更、ほっぺたをツンツンして遊ぶことくらい許してくれるはず――
そっと、起こさないように彼女の頬に軽く触れてみた。
昨日。俺の右腕を食べた頬。
流石、指で触れるとなると、腕の皮膚なんかより何十倍も鋭敏に感触が伝わってくる。
はっきり言おう。
柔らかさは胸には敵わない!!!!
だが、いつでもどこでも手出しできるとなると、ほっぺたでもいい気がした。
ハリ、艶、弾力。だけど綿菓子のようなふわふわとした感触、触りごこち。
ぷにぷにともまた違う。
そこに頬が在って、そこに頬は無いのかもしれない。
それほどまでに、現実を受け入れがたい代物だということを伝えたかった。
彼女を起こさないように、軽くつまんでみる。
女性の顔だ。
傷を入れてはならぬ。
そのくらいの教養や良心は俺にだってある。
つまむと確かにそこに肉、「頬」が在る。
同時に白く透き通っていた肌に血色が出て、赤みが落ちてくる。
彼女の眉間がピクリと動いた。
「んん……んんっ……」
柚季さんは喉元から曇った音を出す。
瞼が意志を持たないまま、微かに開いた――
「いたずら……しないで……」
もぞもぞと布団の中で動く小さな身体。
首をおもむろに動かし、悪戯していた左手が彼女の唇に捕まる。
はっ!?えっ!!!????
俺は我が目を疑った。
眠気なんてぶっ飛んでいった。
爆レス貰ったヲタクの撃ち抜かれたと表現すべきあの瞬間――
彼女の唇が俺の左手に軽く口付けした後、元のように枕元に帰っていく。
なんだこの可愛い生物は!!
駄目よ?と言わんばかりの彼女の制止のキスの方が悪戯過ぎて、果てる数秒前。
「嫌よ、嫌よは好き」と習ってきた俺。
暗に彼女の許しに、舞い上がってしまう。
次は彼女の頬を、人差し指の側面で撫でてみる。
スベスベとした肌は自分のものとは大違い。いつまでも撫でていたくなる。
「きもちぃ……もっとそうして」
柚季さんは言ってくる。
こうなれば、失うものは何もない。
彼女の
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