バイト2

その日の放課後、バイトの面接があるため直ぐ帰らなければならなかった。

「面接がんば!」

小鳥遊は、ウキウキした様子で言うと佐久間先生の所へスキップで行ってしまった。

「はあ・・怠い・・」

項垂れながら昇降口に向かう。

思えば、今までアレのせいで色んなことを諦めてきたように思う。

幼少期はいつも一人だったし、外に出かけるのもあまり好きではなかった。

今回もそうだ。何で俺がバイトをしなきゃいけないんだよ

・・・と思ったが、もし今後何かあった時、あいつの力は必要だ。

人間以外のナニかが見えるのは、この先ずっと続くのだから・・


あれ以来、家に帰り階段を上る時いつも緊張する。

また部屋の前にアレがいるかもしれないと思うからだ。

「はあ・・いつまでこんな風に怯えなければいけないんだ」

肩を落としながら下駄箱から靴を取り出した時

「それは、お前が怯えなくなるまでだろうね」

後ろから唐糸の声がして振り返った。

「急に話しかけるなよ」

相変わらず薄い唇は口角が上がり、にやけた顔を浮かべている。

「っていうか、怖いものは怖いんだよ」

睨みながら言ってやった。

「それは、お前が知ろうとしないからだよ」

フンっと鼻で小さく笑いながら自分の靴を下駄箱から取り出した。

それを横目に見ながら靴を履き歩き出すと唐糸も後ろを付いてくる。

「だって、あんな分けわからないのが見えるなんて誰にも言えないだろ?教えてくれる奴もいない」

チラっと後ろを見ながら言った。

「俺が教えてやるよ」

そう言って、また鼻で笑う。

「タダじゃないんだろ?俺金ないもん・・だから今からコンビニバイトの面接だ」

「コンビニのバイトって時給安くない?」

「安くても、家の近くが良いんだよ」

夜を歩くのは、苦手だ。バイトで遅くなるなら早く帰れるところが良い。

ふ~ん・・と小さく鼻を鳴らすと、ヒョイっと俺の前に回り込んだ。

「なっ・・なに?」

「もっと時給の良いバイト紹介できるぞ?」

ニコッと笑みを浮かべて言った。

「お前が紹介する?なに?神社の仕事?」

「お?」

方眉を上げて俺を見た

「なに?」

「鈍感だと思ったけど、案外鋭いな」

「はい?」

「とりあえず、面接キャンセルの電話しろよ」

「いや、まだやるとは言っていないし!」

慌てて首を振った。

「怯えなくてすむ生活がしたいんじゃないの?」

目を細め、俺の心境を探るように顔をジッと見てくる。

「お前のバイトって・・どんな仕事?」

恐る恐る聞くと

「俺の仕事のお手伝い」

ニコッと笑い前を向いて歩き出した。

今度は俺が後ろを追いかける。

「それ、アレが関係してるんじゃないよね?」

「フフ・・アレが関係しているに決まってるだろ」

首を竦めて言った。

「いやだよ!」

俺の声に、立ち止まった。

「でも、知りたいんだろ?」

低い声で言うと振り返り、俺の顔を見た。

「うっ・・・」

断りたいのに、その黒い瞳に言葉が詰まる。

薄い唇には笑みを浮かべているが、目は笑っていなかった。

「早速、今日もお仕事があるんだよね」

神社の仕事という事だろうか?

いや、まずはこれを確認しなければいけない



「えっと・・それ、時給いくら?」


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