本から光溢れてくよー

@manao93

第1話

タイトル。

            l25030 曽根 真渚人

 二千三十年二月四日、二人の男の死体が見つかった。

 眩しい、太陽が。暖かい、日差しが。聞こえる、僕を呼ぶ声が。

「ねぇ遊ぼうよー」

「鬼ごっこ以外ならいいぞ」

「嫌だ鬼ごっこがいい!」

「いつも同じじゃないかたまにはかくれんぼでもしようぜ」

「ここ最近それしかしてないじゃないか」

俺は無視してそいつから全力で逃げる。僕は叫んだ。

「今日は見つけてくれよ!」

いつまでもこの日々が続けばいいのに。

 臭い、煙が。熱い、炎が、白い、雪が。痛い、体が。叫ぶ、声が出ない。あぁ、死ぬのか、どこで間違えた。小学校、中学校、高校、大学……深く考えるふりをしているだけだ。原因など既にわかっている。でも、そうでもしないと、自分の現状を理解してしまう。信じてしまう。そうならないように分からないふりをする。次は何を考えよう、そうだあのことについて考えよう。あの日々について。 

 この時期になるといつも雪が降る。部屋の壁に並ぶ膨大の量の本は少しばかりの冷たさを帯びていて手に取るのを躊躇ってしまう。そうして動きが止まっていると弟がこういうのだ、「お誕生日おめでとう」と、僕はありがとうと答えて本を受け取る。それは暖かくて、とても心地のよいもので、僕の冷たい手が勝手に動いて、少しずつ熱を帯びて、気づけば本の世界を冒険しているのだ、そうして気づけば夜になっていて月の光が僕を照らし、冷たい空気が僕にまとわりつく。でも寒いとは感じなかった。弟が僕を暖めてくれるから。毎年恒例のことだった。

 三年ぶりに地元北海道に帰省した俺は真っ先に実家に帰った。

「ただいま」

 返事が返ってこない、誰もいないのか。脱ぎ方を忘れたブーツを放り投げるように脱ぎ、中へと足を踏み入れる。そのまま奥の書庫部屋へと移動すると一冊の、新しい本を見つけた、迷わずその本を手に取る。冷たかった。しかしタイトルがとても気になるものだったので表紙をめくる。すると本から光が溢れた。

「気になるものはありましたか?」

弟が電気をつけただけだった。

「新しい本が一冊しかないくせによく聞くぜ。俺は読んだことがある本は読まないの知ってるだろ、てかなんで敬語なんだよ」

「距離感を忘れちゃって」

「まぁ三年だもんな」

沈黙。まぁそれも当然だ。

「そういや今日は俺の誕生日だぜ、今年はねえのかよ」

「もちろんあるよ、テーブルに置いてある箱が誕生日プレゼントだよ」

 俺はすぐに手に取った。そして開ける。

「こういうこと言っちゃいけないってわかってるけど、あんまり趣味じゃないかも」

「三年ぶりに地元、北海道に帰省した俺は真っ先に実家に帰った。

「ただいま」

 返事が返ってこない。誰もいないのか。脱ぎ方を忘れたブーツを適当に外し中へと足を踏み入れる。その足で奥の書庫部屋へと移動すると一冊の、新しい本を見つけた、迷わずその本を手に取る。冷たかった。しかしタイトルがとても気になるものだったので表紙をめくる。すると本から光が溢れた。

「気になるものはありましたか?」

弟が電気をつけただけだった。

「新しい本が一冊しかないくせによく聞くぜ。俺は読んだことがある本は読まないの知ってるだろ、てかなんで敬語なんだよ」

「距離感を忘れちゃって」

「まぁ三年だもんな」

沈黙。まぁそれも当然だ。

「そういや俺は今日誕生日だぜ、今年はねえのかよ」

「もちろんあるよ、テーブルに置いてある箱が誕生日プレゼントだよ」

 俺はすぐに手に取った。そして開ける。

「あんまり面白そうじゃないかもごめん」

「それもきっと面白いと思うよ」

「まぁ読んでみるよ」

表紙をめくる、すると本から光が溢れた。

 

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