あの復讐をもう一度

@sink2525

第1話 宣戦布告


 永遠なんてないし絶対なんて無いとは思っていたし分かってる。だけどこんなに早く無くなるなんて思うわけないだろ。


 目の前にあった友情が崩れていく。そこには確かにあったんだよ。


 目の前に広がっている情報の海は薫の脳を殴る。スマホに映し出されたグループトークに視線を移す。


 (美咲) ――――薫という人は私たち2人を貶しています。私たち2人に暴言を吐くことが当たり前になっています。

 私――花山美咲と私の親友である真司と一緒に薫を地獄に落とします。皆様も協力をお願いします。


 告白とも言えるような内容はクラスグループに送信されていた。既に送られてから1時間は経過している。遊びや冗談で送るような内容ではない。れっきとした告白なのだろう。そんな理解できない内容を目にした薫は呆然とした。


 なんなんだよ、これ。意味わかんねーよ。暴言? いったいどういうことなんだよ。


 涙なんて出る暇もない。今の状況を理解するのに脳が追いつけないんだ。

 だから今は悲しいとか怒りとかそんなのないんだよ。


 納得なんてできるはずがない、この状況下で薫は立ち尽くすことしかできなかった。否定をするにも証拠なんてない。


 この世は不平等だよ。言ったもん勝ちだろこんなの。ぎゅっとスマホに力を入れる。

 

 朦朧とする中で薫は椅子に腰を下ろした。夏を知らせるかのような光が放課後の教室を埋め尽くす。陽光が薫を照らす。


 舞台中央に立っている――主人公を照らすかのような光。決して他のものを照らそうとはしない。炙り出そうとするかのように照らし続ける。



 あの日を思い出す。小さい公園で楽しく3人で遊んだあの日。馬鹿みたいに夢を語って馬鹿みたいに遊んだあの日。


 ずっと続いて欲しくて沈んでいく時間が本当に悲しかった。こうやって毎日が終わってくのならどんなに幸せなんだって、思う時もあった。

 永遠なんてない。絶対なんてない。


 友情が終わる。いや――もう終わってるんだな。



 何をしているんだか。


 別に――知ってたさ。美咲と真司が付き合ってることくらい。知ってるよ。

 うん――知ってる。

 薫はゆっくりと窓に視線を向けた。淡く光る陽光は傷を癒してはくれない。まるで懺悔を迫るかのような光になっていく。

 視線を戻し上を向く。


 漫画の主人公かよ。考えがまとまらない。結局俺はなんだっんだろうな。

 こうやって現実から目を背けて悲劇を気取って悲しさで自分を癒す。

 漫画の主人公とか小説の主人公とか、そうやって自分を特別な存在だと思い込ましては落ち込んだりする。


 今の俺は何を思っているのかと考えてみる。悲しいのか、怒っているのか。

 それとも楽しんでいるのか。


 手で顔を覆い深いため息を吐く。









 あれから、どれくらいの時間を過ごしたのだろう。薫はいまだに動けないでいた。

 手を動かしスマホ取る。

 グループトークを開く。



(美咲)―――薫という人は私たち2人を貶しています。私たち2人に暴言を吐くことが当たり前になっています。

 私――花山美咲と親友である真司と一緒に薫を地獄に落とします。皆様も協力をお願いします。


        薫が退会しました



 

 


 

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