第16話

 葛藤しながら屋根裏の自分の部屋へ向かうと、狭く急な角度の階段の下にタリアーナが待っていた。


「お嬢様も夜会に行かれるのでしょう? 御準備のお手伝いに参りました」

「……でも」

 手にしたずたぼろのドレスを手に、セレスティーンはうつむく。


「とにかくお部屋へ」

 促され、階段を上って部屋に入る。

 と、その目が驚くべきものをとらえた。


「嘘……」

 部屋の中にはトルソーがあり、そこに華麗なドレスが着せられていた。


 ローズピンクに繊細なレースがあちこちに施され、そばに置かれたケースにはパールのイヤリングとネックレスが準備されている。


「素敵なドレス! あの奥様がこんななドレスを用意してくださるなんて!」

 絶対に違う、彼が用意してくれたんだ、とセレスティーンは思ったが、言葉にすることはできなかった。彼のことは誰にも言わない約束だったし、言っても信じてもらえないだろう。


「早く着替えましょう!」

 タリアーナに促され、急いで着替えた。

 ドレスは体にぴったりで、セレスティーンのためにあつらえたかのようだった。


 ほっとして玄関に向かうと、エマニーズとティアリスはあっけにとられてセレスティーンを見た。

 が、すぐに我に返って彼女をにらみつける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る