第14話






 その日は夜会の準備で朝から大騒動だった。

 セレスティーンは自分の準備どころではなく、ティアリスとエマニーズに振り回された。


 前からドレスを準備していたにも関わらず、やっぱりこれにする、やっぱりあっちがいい、と何着も着て、あげくに決められないことに癇癪を起したティアリスはセレスティーンに怒鳴り散らした。


 ようやくドレスが決まったのはお昼で、昼食後は湯あみをして香油を念入りに髪にすりこんでいく。

 ドレスを着て髪を結い上げ、メイクを施してアクセサリーをつける。ようやく準備が終わった頃にはセレスティーンはくたくたになっていた。


「ティアリス、準備はできた?」

「はい、お母様」

 ティアリスの部屋にやってきたエマニーズは、ティアリスを見て満足そうに頷いた。


 タフィーピンクの新しいドレスに昨日買って来た模造宝石の大きなイヤリング。新しい化粧品でメイクをしたティアリスはどこから見ても美しい令嬢だった。


 セレスティーンは彼女のその胸に輝くガーランド様式のネックレスに悔しく床を見つめた。


 植物が帯状にデザインされた金の台座の先端には大粒の紫水晶が垂れ下がっている。多面的にカットされたそれは、どういう仕組みなのか発光するようにきらきらと輝いていた。


 あれはセレスティーンが夢の中の彼から贈られたものだ。ティアリスはセレスティーンが母の形見を隠し持っていたのだと思ったようだが、どちらにしても奪ったことに変わりはない。


「あんた、まだ準備してなかったの!?」

 セレスティーンを見とがめ、エマニーズが言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る