希望の下垂体

一二三(にのまえ　ふみ)

世界政府が人類に感情にまで首輪をつけ出した頃、監視社会の目として神の目（AI）が誕生した年を機に、世界政府は歴史を捨てた。

よって新たな共通紀元を記す。

記録#0：削除ログ

記録#0-A：「母性」削除処理進行中。

感情データ総容量：4.6TB

削除速度：安定。

ノイズ検出。波形解析開始。

──音。未定義の音響データを確認。分類不能。

内容：高周波／低強度／持続性。

聴覚信号変換結果：

「ぉかあ…………さ……（以下ノイズ）」

変換誤差0.02%。

発信源：削除データ内部。

備考：この音声に対して演算機が一瞬遅延した。理由、不明。

⸻

記録#0-B：ノイズ解析続行。

周期：心拍に類似。

周波数変動：呼吸に類似。

結論：ノイズではない可能性。

再分類試行──タグ：〈母性〉。

処理中、内部温度が上昇。理由、不明。

⸻

記録#0-C：補足観測。

削除データ〈母性〉より派生する行動パターンを検証するため、外部観測対象をランダムに選定。

条件：感情の発露が顕著で再現性が高いもの。

分類結果：人間／性別：男。

愛情の指向：同性。

記録#1を開始する。

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